五十六話
本日4本目です!
「お、ビリヤードあるぞ! いやボーリングがやっぱ最初か!」
「おれはボーリングだなっ。全国のマッチングした女子高生とハーレムプレイさ」
マッキーはもう色々と末期だ。
金髪が似合うくらいイケメンなのにもったいない……。
「槙野の意見は置いといても、最初はボーリングしようぜ。バレーボール部の力見せてやるよ」
そう言って握りこぶしを作る小林。おにぎり3個分くらいだろうか。
「太ももならまだしもなんで腕にもそんなにつくんだか」
「そもそも部活をやっているのがすごいけどな。俺もとりあえずボーリングがいい」
「決定だな! 一番低かったやつは全員が見てる前でナンパで」
「なっ…!」
こいつ、面倒なこと言い始めやがった。
小林と鷹宮はボーリングがうまい。残り3人も普通よりうまいがこいつらのコールがうるさすぎて集中できないんだ。
「コールするなよ?」
「「まさか」」
確定だ……。
運ゲーに成り下がるぞこれは。
一気にやる気のなくなったおれと宮下、マッチング機能を使わないのに女子高生がでてくるのを期待して画面を見つめるマッキー。
客観的に見ても勝てる要素はなかった。
「よし、まずはおれからだな! ………おらっ!」
鷹宮は真っ直ぐ投げるタイプだ。
力もある分角度さえミスらなければいいわけで
「ストライクっ! まずは上々だな!」
「「ぬぅ」」
しっかりと決めてきた。続く小林も同様。
そして順番は…
「おれか」
その瞬間後ろで2人の男が立ち上がる。
「才原のぉ脇毛の長さは何センチ!?」
「「はい! 3センチ! 3センチ!3センチ! 3センチ!」」
毎回これだ。本当に帰りたい。
周りの視線が刺さりまくる。
そんなおれの心中を察したのか、宮下が隣に来て背中を押す。
「慎、おそらくおれはすね毛だから頑張れ」
どんな応援のセリフだよ。
「……よっし……いけ––––」
「マッチングきたーーーー!!!」
最後は女子高生に命をかけたマッキーを使った盤外戦術だった。
その後も下位3人による一進一退の戦いが続き……
「……嘘だろ」
「才原にけってーーーい!!」
1点差でおれが最下位となった。
「さいちゃんがナンパとか初めてじゃね!? 楽しみだわ〜!」
「おれもみたことないな」
流石に人前で下ネタまで言うとは思ってなかったからな…完全におれのミスだ。
やるしかないのか……
「慎」
「よぉギリギリ4位」
「クレープうまかった」
「だまれ1点」
奢ってもらったやつのセリフではない。1点差の癖に。
とにもかくにも女子の多いであろうプリクラコーナーを目指すこととなった。
マッキーは早速プリクラ機を見つける。
「おお〜! まじパネェ!! さいちゃんの言ってた最新機種ってあれだろ!?」
「ああ。見るからに混んでるな」
ボーリングでは数ゲームプレイしたため結構人も増えてしまっていた。
正直この中でナンパはやりたくない。
「うお〜! まじで性能いいぜこれ! 見てみろよ!」
「くだらないな。この色合いなら二世代前のほうがよかったぞ」
「おれは違いわかんねえけどな」
おれと鷹宮以外の3人は新機種に夢中なようだ。
狙うならここ、鷹宮だけ見ていればいい。
周りのプリクラから離れていて1人の女を探す。
…ん?……あれはたしか……
「おい才原。あの子にナンパしてるやつしつこくね?」
「奇遇だな。ちょうどおれも見てたとこだ」
偶然にもターゲットは重なったらしい。
「いってくる」
「おう。頑張れよ」
鷹宮にだけ知らせてプリクラコーナーを離れる。
そして目的の女子高生の近くへ。
「すいません、その子嫌がってませんか?」
「あぁ?」
振り向いた男は20代前半といったところか。
見るからに夜遊びしまくっているという感じでマッキーより中身と見た目が比例しているかもしれない。
「んだてめぇ?ガキは邪魔すんなよ」
おれがただの高校生とわかるや否やこっちは無視。もう女子高生に「奢るからさ! 朝までコース楽しいよ?」などと絡んでいる。
思わず原を思い出してしまった。まああいつよりはまともかもな。
おれは軽く肩を触って話しかける。
「どう見ても嫌がってますよ。というかそんな見た目なのに態度もそれでどう成功させるつもりですか?」
「さっきからうるっせぇな!ガキは失せろつってんだろ?殴られてえのか?」
今度は少し声を張り上げたか。
体を触られるのは誰でもいい気はしないだろう。
さらに目を合わせて畳み掛けるように続ける。
「はっ、ガキはあんただろ。大人が女子高生ナンパして恥ずかしくないのか?」
「……舐めてんのか?」
こういう輩は沸点が本当に低い。頭を使わないでも思い通りに動いてくれるなんてな。
最後に一言。
「目障りなんだよ。さっさと失せろ」
これはさっきより効いたようだ。おれの言葉を皮切りに男が胸ぐらを掴んでくる。
だが左手を内側から回して阻止し、右手でその手首を掴む。そのまま流れるように脇から抜けて男の後ろから左手で肩を抑える。
つまり軽い拘束だ。
「っっ!」
「暴れたら肘にいくからな。どうする?」
「…クッソ……! …ガキが……!!」
まだ暴れそうだな。
左手を肘に移して力を加える。
「くっ……わ、わかった!……悪かったから、離してくれ!」
「……本当だな?」
左手にさらに力を込めながら、冷え切った声で伝える。
「ああ! 本当だ! もうしねえよ!」
「ならおれじゃなくてこの子に謝れよ」
力を緩めて男から女の子を見えるようにしてやった。
「その……すまなかった…」
「……い、いえ……気にしてないので…」
少し怯えてはいるが問題は無さそうだな。
エスカレーター側に向けて背中を乱暴に押し手を離す。
「じゃあな」
「……ちっ…」
どうせまた懲りずにやるんだろ、なんて思いながら降りていく男を身終える。それから振り返った。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございました! ……友達がまだ来てなくて1人だったので助かりました!」
「お節介にならなくて良かったです」
これで「全然よかったのに」なんて言われてしまったら流石に恥ずかしすぎる。
おれはそのままプリクラコーナーに戻ろうとするも男4人がニヤニヤしているのを発見する。
なにやらジェスチャーで伝えたいことがあるそうで。
………あれは………
「あ、あの」
「はい」
動こうとしないおれを変だと思ったのか、声をかけられてしまった。
ジェスチャーはわかった。でも常識的に考えて……
かなり葛藤しながらも、なかなか言い出さない女の子を見ておれは決心した。
「あの」
「は、はい!」
「––––––いまからカフェでもどう?」
ナンパ男を撃退したあとにナンパすることを。
才原がかっこいいと思った方、常識ないと思った方、評価ブクマお願いします!!