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五十五話

 


「やっと終わったー!!」


 鷹宮は大きく伸びをすると、すぐさまカバンを取って合図してくる。


「わかってるよ。テンション上がりすぎだろ」

「おれも上がってるぞ」


 すぐ隣に小林もやってきた。

 さっきの授業も寝てたのか顔には赤く跡が残っている。


「準備万端ってとこだな!! よし、校門でマッキーたち待とうぜ!」

「おう」


 軽く奈々たちとも話してから向かった。






「ウィッス! おひさだね〜みんな!」

「健のテンションは意味不明だが……おれも楽しみだな」


 校門に行くとすでに着いていた槙野健まきのけん宮下勇気みやしたゆうきがいた。


「マッキーと宮下、それからおれら3人かー! いいねめちゃくちゃ!!」

「海斗もそのテンションか……」

「まあ今日はおれがクレープ奢るから。そしたら宮下もそんな感じになるぞ多分」

「いいねクレープ! おれもほっしい!」


 学年でも2人だけしかいない金髪の1人、マッキーこと槙野健は見るからにチャラ男。着崩した制服に両耳にピアス、テンションで生きてるようなもんだな。


「とりあえず駅行こうぜ?」

「だなー。どこいくよ?」


 小林に先導されて駅へ向かいながら行く場所を決める。

 この流れも恒例だ。


「≪フィリー≫とかどうだ?」

「遠くはないが、遊ぶところは少なくないか?ショッピングモールだろうあそこは」

「いや昨日調べた感じ3階にボーリングからビリヤードまでめちゃくちゃあった」

「おーいいな!! おれまだ行ったことないし、打ち上げしたとこより近いから賛成だわ!」


 鷹宮と…小林もまあ賛成だろ。あとは…


「さいちゃんが調べたってことはもちろん……?」

「最新のプリクラもある」

「さっすが〜! 決定だね!」


 マッキーは相変わらずで良かった。

 去年も撮ったし、やっぱり今年も撮るべきだよな。


 おれは最後の1人にも一言。


「入り口にクレープあったぞ」

「それを先に言え」


 まあ、どこにでもクレープなんて売ってるだろうがここはマッキーからのノリだな。宮下もなんやかんや絡みやすいやつだ。


 ということで行き先は一週間ぶりの≪フィリー≫に決まった。







  ––––––––––––––––––––––––––––––––––––







「おおー! しゃれてんな!!」

「学生もちょっとはいるみたいだぜ」


 学校が終わると同時にきたためまだ学生は少ない。

 社会人もほぼいないように見える。


 おれが宮下のクレープを入り口で買いながら辺りを見渡しているとマッキーが1人動き始めていた。


「やっべ……おいマッキー行ったぞ!」

「あっ、忘れてた! どこに––––––」


「お姉さん、おれとお茶でも………どう?」


 気づいた時にはもう遅い、というやつだろう。


 マッキーは見た目通り。ナンパ魔だ。いきなり手を取るのはどうかと思う。

 加えてあのチャラさ。


「…………」


 うまくいくはずも無い。累計––––


「––––32戦32敗だな」


 呆れた様子の宮下が隣に。


「健が俺たちと会ってからの累計だ」

「今回スルーだったから1番惨敗かもな」

「二人組の社会人に行く勇気は尊敬に値する」


 宮下勇気が言うなら間違いない。


「それより」

「あ、はい。チョコバナナ」

「王道に限るな」

「間違いない」


 チョコバナナクレープを頬張る男子高校生2名。心なしか店員さんに見られている気もするがそんなに珍しいのだろうか。


 あ、客が来なそうとはいえさすがに邪魔か。


「すみません。どきますね」

「い、いえ! そのままで大丈夫です!!」


 片手で宮下を引っ張りながら動くと止められた。


「えっと、じゃあほかのお客さん来るまでいいですか?」

「は、はい! ぜひ!」


 優しい店員さんでよかった。ゆっくり食べていたいからな。


「慎」

「ん?…………ああ了解」


 3倍のスピードで消えたクレープの紙を渡してくる。

 どんな食い方してんだろ……


 これも「ゴミ捨てて」じゃなくて「もう一個くれ」の合図だ。


「同じのもう一つお願いします」

「えっ…あ、はい! 少々お待ちください!」


 店員さんの嬉しそうなこと。いいことしてる気分になる。


「チョコバナナクレープです! どうぞ!」


 ちょっと待つと、さっきよりも大きいクレープがきた。


「おい宮下! さっきより大きいやつだ!」

「やはりこの場所を選んで正解だったな」


 かっこつけながら言ってるけど笑顔を隠しきれてないぞ。


「たくさん買ってくれたのでサービスです! ……えっと、よく来られるんですか?」


 やっぱ、店の質は店員の質に比例するんだなと思いながら一口。うまい。


「うんと……あんまりですかね。おれ以外はみんな初めてだと思います」

「そうなんですか! それって三光高校の制服ですよね?」

「あ、そうです。やっぱ赤と白が入ってるの目立ちますよね」

「はい! すぐわかりました」


 店員さんも納得する通り三光高校の制服は目立つ。

 基本黒だが所々赤と白の模様が入っていてこんな制服はこの辺じゃうちだけだ。


「…お名前はなんて言うんですか?」

「なまえ…ですか?」

「慎、健が戻ってきたから行くぞ」


 2個目も食べ終えた宮下が歩き始める。


「え、まじか………えっとまた来ます。それじゃ」

「あっ…」


 ちょっと申し訳ない気もしたけど、こんなとこから個人情報が漏れたら話にならないからな。


 さっきの社会人には目もくれず、新たにほかの女子高生を探すマッキーを従えて3階へ。


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