五十四話
ここからどんどん盛り上がっていくと思います!
波はありますが笑
時は放課後。
「今日はいちごみるくな」
「ほら」と部室から取ってきたタピオカを渡す。
残りの部室のロッカーに入っていたタピオカは全部バレーボール部の冷蔵庫の中に入れさせてもらった。
昨日は一晩そのままにしてしまったわけだが、そこまで炎天下でもなかったのでやられていないと信じたい。
「ありがと〜。これが今日二個目のお願いだからね」
天鳳は早速ストローをさして美味しそうに飲むと目の前のバレーボール部に目を向ける。
「今日はバレーボール観戦だよ」
「いつからスポーツ好きになったんだよ……」
まあ、お願いと言われればしょうがない。
こっちとしても都合がいいしな。
おれは二人一組で準備運動を始めている中、ボーッとしている男に声をかけた。
「おい宮下ー」
「ん?………」
「上だ上」
あたりをキョロキョロし出す宮下にこっちだと教えてやる。
「おお、慎か」
「驚くはずもないか。聞いたよな?鷹宮の話」
「わかっている。俺も楽しみだ。……ただ」
「クレープは任せとけ。何個でも奢ってやるよ」
「……そういうことだ」
キッチリとした堅物みたいな顔つきに似合わない発言だけど、この辺もおれとこいつが今でも仲の良い理由かもしれない。
「先輩の友達?」
「ああ。去年の文化祭で仲良くなった他クラスのやつだよ」
「なっ………慎、どういうことだ?」
狼狽える宮下の視線の先はもちろんおれじゃない。
「部活の後輩なんだ」
「天鳳沙雪だよ。よろしく〜」
「聞いてないぞ………」
この高校で知らないやつはいないというほどの有名人がいることに驚きを隠せていない。
2年に上がってからも話す回数はあったのにな。
……実際言いづらかった、というのはある。
宮下が打ちひしがれている間に、準備運動をしていた部員に召集がかかったのかどんどん集まり始める。
「慎、その辺のことは明日きっちり話してもらう」
「おれも楽しみにしてるよ。じゃ、がんばれ」
手を振ったおれではなくとなりの天鳳を目に焼き付けるようにして戻っていった。
「……明日遊ぶの?」
「懐かしいメンツでな。だから明日はwithタピできない」
「そっか。でも明後日もお願いするからね」
「これぐらいならお安い御用だ。それに放課後以外で1日1回でもいい」
この後は昨日と違って邪魔が入ることもなく、たまたまあったミニゲームを楽しむことができた。
その夜、おれはスマホでメッセージを送る。
『明日はやっぱり用事入ったから木曜の夜とかどうだ?』
『言われた通り、友達と遊ぶのは明日にずらせたからそれでいいわよ』
『わかった。また服でも買うのか?』
『友達も"ラース"好きだから買うかも。でも私服なら好きなの買っていいでしょ?』
『私服まであれこれ言うつもりはない。身バレ気をつけてな』
『当然』
日曜以来会っていない愛咲も友達と遊ぶのは明日にできたそうだ。
いや、言っても2日しか経ってないのか……最近の生活が濃すぎて感覚がおかしくなってきてるかもしれない。
愛咲は一時期クラスで上手くいってないのかとも思ったけど、あれは女子校に入る前にあったモテすぎるが故の悩みが原因だったわけで心配する必要はなかったな。
周りの友達は愛咲がアイドルをやってることを知ってるわけだし、その辺も気遣ってくれる人達なんだろう。
「………いつかは通る道だからな」
予定をまとめると明日は文化祭メンバー、木曜は愛咲と打ち合わせ、金曜が天音麗花の撮影会に参加。
土日は先週と同じだ。
もう少し、無理にでも入れるべきか……
ここ最近は人生で一番考えていると思う。
ストレスのおかげで朝スッキリ起きられるのは怪我の功名というやつだろうか。
明日の遊びが少しでもいい方向に進めんでくれることを願って、遊ぶ場所の詳細を検索し始めてから小一時間。
おれはパパラッチの掲示板サイトを見ていた。
「やっぱり日曜日のことはないか…」
昨日送られてきた画像。
素人がこういうサイトを情報源にした可能性を考えたが、やはり違うらしい。
週刊誌に送られた情報は、その情報源を秘匿されるためネットで見つけることはできない。よってあの画像はMOX内部からのリークが元と考えてよさそうだ。
ただのリークなら手の打ちようもある。
そう言うわけで最近スマホに登録された電話番号へかけることにした。
先手は取られたがここからはおれの独壇場だ。