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四十九話

連続にしました

 


「うわ〜熱気すごいね」

「おれも見に来るのは久しぶりだな……」


 本当の大会を見に来たような会話だが実際はただのバスケ部見学でしかない。まあ、そういうテンションというわけだ。


 三光高校の体育館は2つあって今いるのはバスケ部が使っている方だ。バレーとバドがもう一つの方でこの3部活が毎日入れ替わりで活動している。

 二階があってスペースは広くないが観戦できるようになっている上に、体育祭の時とかはそこに座ってクラスごとに親睦を深められるいい場所だ。


 今日は特別な日でもなんでもないので、二階から見てる人はいない。

 よって特等席である位置に座って眺めることにしよう。


「天鳳ここでいいか?」

「うん」


 2人で女バスと男バスの両方が見えやすいところに座った。

 それでもだれか気づいた様子はない。


「人数多いね」

「おれらの数十倍だな」

「あはは!」


 天鳳は笑い飛ばすけど、ちょっと悲しい……

 一年の時はテニス部も結構人数いたわけだし、部活の練習も楽しかったのになあ。

 今は無くてありがたいけど来年くらいに再開してもらいたい。


 その点、バスケ部にガラの悪い人は見当たらない。

 女子は言わずもがな、男子にも部活停止にさせるような奴はいなそうだ。


 そこで知っている顔を見つけた。


「奈々先輩いるね」

「ん、ああ。あいつから最近試合形式で練習してるって聞いてたから見所あると思うぞ」


 奈々が出るかはわからないけど上手いってのは知ってるから多分見れるはず。


「……揺れてるなあ」

「……女でも目がいくんだな」


 何に、とは敢えて言う必要もないだろう。


「おっぱいって感じ」


 どうせこいつが言うから。


「…でも特別でかいわけじゃないだろ?」

「意志を受け継いでると思うよ」

「それ以上はいい」


 あとで会った時に意識しないとも言い切れない。

 実際にそのサイズなわけでもないだろうけどな。


 てか、意志を受け継いでる民は揺れるんだろうか。ぜひともジャンプしてもらいたいものだ。


「天鳳もスタイルはいいだろ」

「そうだよ〜奈々先輩なんてすぐ追い越しちゃうから」


 そう言ってぐーっと伸びをする。


「えっち」

「いやそういう流れじゃん!」


 自然と引き寄せられるうえにフリがあったろ。


「あたしは155センチの金髪社長令嬢。スタイルも良いし可愛い」

「お、おう」


 急に自己紹介と自画自賛始まったんだけど。

 おれにその有り難みを知れとでも?


「奈々先輩は160くらいかな。ちょっと茶髪?でスタイル良くて可愛いし、なんでもできる」

「まあ異論はない」


 なんでもできる。勉強もスポーツも。なのに愛想の良さから大体の女子とは仲がいいから頭が上がらない。

 でも、


「あたしはそんなに話さないけどね」

「らしいな」


 天鳳とは仲良くない。まあ嫌ってるとかじゃないはずだが、今はそれで居てくれるとやりやすいな。


「そんな2人と、あとは前の可愛い人もかな、仲良くしてるなんて先輩すごいね〜。男子から刺されちゃわない?」

「縁起でもないこと言うなよ……」


 結局有り難みを知れということらしい。


 刺される、ねぇ………。この学校、良識あるやつが多いのは確かだからな。ないと信じたい。


「あ、奈々先輩試合やるみたいだよ」

「早いな。大会が近いわけでもないのに」

「おっぱいばいんばいんなるかな……」

「お前今日の目的それかよ………あとさすがになんないから」


 コートの真ん中に集まりだした女バスの面々。


 ……天鳳が胸のことしか言わないからおれもそれしか気になんなくなってきた…。


「えっち」

「心理を読むな。あとお前のせいだから」


 こいつ一分野だけの人心掌握に長けてそうだ。大学は心理学部だろうか。

 勝手に心理学者っぽい格好を想像してみると結構似合った。


 ともあれ、ついに試合のホイッスルが鳴るというところでスマホを一回だけ確認しておく。


「お」


 だれかからメッセージが来てたらしい。

 始まった試合から目をそらしてスマホを取り出す。


 誰からだろう、愛咲からきてたりして––––––


「–––––っ、これは……!!」


 愛咲でも知り合いでもない匿名の相手から送られてきたことに、そしてその画像に一瞬顔が強張る。


「先輩どうしたの?」

「いや………天音からめちゃくちゃ可愛いメッセージが来た」

「…………シスコン」

「もうそれでいい。ちょっと電話してくるな」

「うんいいよ〜」


 断りを入れて少し離れた場所から天音にかける。


「天音か?おつかれさん––––––」







 数分して電話を終えてもまだ天鳳のところには戻らない。


 急に切られたのはびっくりしたな。あの流れだと………いや全くわかんねえ……

 すぐ家に戻った方がいいかもしれない。

 家に行くことを即決して天鳳に声をかける。


「ごめん天鳳!!どうしても天音にすぐ帰ってこいって言われてさバスケ観戦できなくなった!!」

「…そっかぁ。残念」


 薄く笑うその表情が少しいつもよりぎこちなくて申し訳なくなる。


「でも先輩ならしょうがないか」

「本当にごめん。今度はおれから誘うから!!毎日空けといてくれ!」

「うん。楽しみにしてる」


 いつも通りに笑ってくれると少しは機嫌を直せたかな、なんて思ってしまう。


「先輩」


 軽く別れを告げて外に出ようとすると声をかけられた。


「ん?」


「いつでもはむはむしてあげるよ?」


 耳を触りながら言ってくるその仕草に思わず笑みがこぼれる。


「そのうち頼む」


 そう言っておれはすぐに走りだした。









 あと数分で家につく。タクシーの料金なんて惜しむ暇も理由もない。


 この間にできた数分で思考を巡らせよう。


 匿名アカウントから送られてきたのはおれと愛咲の写真。

 セカンドビルを出た瞬間のため仕事終わりなのは一目瞭然だ。週刊誌に載せられてもマネージャーであるし、軽く話して帰るなんてザラにあるため大したことにもならない。


 ただ、それを今送ってきた意味。そして今送ることができた意味が重要だ。


 前者はもしかしたら、おれたちを尾けている、ほかの写真をこれからも狙っていくという意思表示かもしれない。いくらマネージャーでもカフェや家に頻繁に同行してたら違和感があるからな。


 そして後者は、この写真が日曜日のものだということ。よって愛咲の新たなデビューを放送より前に知っていたMOX関係者の可能性が高い。

 原と繋がりがあるのか、はたまた全くの無関係か。確定しようもないがこの相手がおれたち、正確には人気の出始めるだろう愛咲を狙ってるのは間違いない。


 ………いや、おれと片山さんの関係、おれの異質さを嗅ぎ取ってきたやつがいるのか………?


「もしそうだとしたら……相当おれにご執心だな」


 まだおれたちをゆすることなんてできないが、相手が前者でも後者でもない変態の場合、気分はさながらクイーンをとった、というところか。


 だけど甘い。


 そんな簡単におれの計画は崩させない。



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