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四十八話

ちょっと時間前後します

 

 先輩からの説教と授業が終わって放課後。


 あれから愛咲とは話してないが、そろそろ仕事の話、主に平日にもやりたい旨を伝えたくなってきた。


 スマホでメッセージアプリを開くとトーク履歴の一番上に「天鳳」の2文字が表示される。


 こうして見るとやっぱいかつい名前だよなあ。

 天と鳳ってどんなやつがくっつけたんだろ……


 意外とその辺のニワトリがもとになったりしてるパターンだったりして。


 そんなどうでもいいことを思いつつ、メッセージを見る。


『部室いるよ』


「1週間ぶりだし………いくか」


「わかった」と打ち込んで部室に向かった。









  ––––––––––––––––––––––––––––––––––––








「おつかれ〜」


 普通に「おう」とかでもいいのに部室に入る時だけ言っちゃうよな。

 おれの場合にはそれに対する返事がないのが流行りだ。


 正確には天鳳ただ1人の流行りだが。


「…あれ、まじでいないの?」


 今回はドアの後ろから忍び寄ってくるわけでもなく、単純に姿が見えなかった。


 ………これは………


「ピコンッ」


 メッセージアプリを開くと


『あたしはどこにいるのかな〜』


 天鳳じゃなければめちゃくちゃうざいメッセージが届いた。

 こいつはこういう性格だからもう違和感も感じない。


「………そう来たか」


 ヒントとかくれるんだろうか。


『間違えた回数だけお願いきかないとだめだよ』


「まためちゃくちゃなことを……」


 ただ、天鳳は基本言い出したらこっちが従うまで言い続けるタイプなので、大人しく「ヒントくれ」と送る。


『最初にあたしを見つけた場所!』


 見つけた………?


「あっそういうことな」


 たしか天鳳は最初ロッカーから出てきたんだ。


 意味不明かもしれないが、事実そうなんだからしょうがない。

 開けたらいた。これだけだ。


「地味に難しい……」


 三光高校は結構金のある私立なわけで、(まあそれはおれの親が数千万稼いでることから明らかだが)施設もかなり整っている。

 学生の校舎が学年毎だったり、特別棟なんてものまであるくらいだ。


 そして今いる部室。テニス部も休止中とはいえ施設は同じなのでロッカーは20を優に超える。


 人が入れるサイズのものは………16個だな。


 天鳳が最初出てきたのは入り口から見て左。これは間違いない。あと端じゃなかったのも覚えてるな。


 となると左右対称なこの部室では、可能性のあるロッカーは6つ。


 ここからはメッセージで交渉しよう。


「もっとヒントくれ。あとおれが三回いないに見つけたら1回お願いきけよな」

『いいよ〜。5回以内でお願いきいてあげる。匂いとかわかるかもね』



 相当自信があるらしい。だけど5回なら確率は相当高いぞ。


 どんどん湧いてくる感情をおさえて、匂いに集中する。


 くんくん。


「わ、わかんねぇ………」


 しかもこんな変態みたいなことやるのは恥ずかしい。

 それでも数分間嗅ぎ続ける。


 …………やっぱり何にもわからん。

 そもそも匂いなんかでわかったら楽勝すぎるだろ。5回やっても当たらない自信の源はなんだ?


 とりあえず当てずっぽうで3つくらいいくか。


 メッセージで宣言してから行う。

 ここは正々堂々じゃないといけないだろう。


 かぎを開けてからバンッ!という音が三回響いた。


「適当じゃダメか………ん?」


 それぞれのロッカーの中には見たことのある容器が一つずつ。


 天鳳からしてみれば人工の耳たぶが沈んでいる、まさにそんな状態なんだろうか。

 いや違うな。


 自分の思考と意味不明な状況に戸惑っていると『10回以内でもいいよ〜』というメッセージが。


 脳裏にチラつく疑念を払いのけて次は四つあける。

 結果、


「同じのしかねえ……」


 というか多分……


 連続で十数回開錠音とドアの開く音がする。


「部室にいないのかよ!!」


 それって反則じゃね…と思いつつ、元からロッカーに指定されていたわけじゃないことを思い出した。

 部室にいるメッセージを送った後すぐどっかいったな。


 最初に見つけた場所、か。


「あ、わかった……」


 おれはすぐに部室を飛びだした。




 さすが社長令嬢、少しでもおれを考えさせたのは誇っていい、とかなんとか頭の中で言いながら出した答えは…


「やっぱりここだったか」

「入学式、目合ったよね」


 バスケ部とバド部が活動している施設の前で座っている天鳳をみつける。

 つまり、体育館だ。


「そりゃ金髪なんてほぼいないからな」

「あと可愛かったから?」


 上目遣いで楽しそうに見つめてくる顔も可愛いとしか言えない。

 こっちが覚えてた理由もお見通しらしい。


「事実だけど自分で言うなよ。まあお前だからいいんだろうけどさ」


 若干の恥ずかしさ、いや決してそんなものじゃないが、気持ちを押し殺してテニス部から持ってきたものを渡す。


「おれが渡したタピオカ飲んでハマったろ?」

「………うん。意外と美味しかった」


 人工の耳たぶ入りドリンク、別名タピオカ。おれは最初だけ似てないこともないかと思ったけど、天鳳いわく全然違うらしい。ただ癖にはなる。


 あんだけ部室にあってただのいたずら、なんてことは無いからな。


「久しぶりに飲んだからさ、いっぱい買っちゃった」


 えへへ、と笑う顔には年相応の幼さがあって少し天音を思わせてしまう。

 身長も意外と近いし。


「先輩何個ロッカー開けたの?」

「全部」

「え…………あはは!!全部あけたの!?じゃあ16回お願い聞いてね」

「……そうなるのか……」


 わかってはいたことだが、天鳳にお願いとは名ばかりの命令権が16回分用意されてしまった。


「じゃあ、早速ひとつね」

「はいはい」

「もう一個タピオカ持ってるよね?」

「……よくわかったな」


 おれはカバンの中からタピオカを取り出してみせる。


「一緒にタピオカ飲みながらバスケ観戦」

「そんなことでいいのか?」

「あたしこういうことのために頑張ったんだよ。いやなの?」


 いくらお願いできる権利ができて、あの性格の天鳳でもこういう確認を取ってくるあたり胸が痛くなる。


 断るわけにはいかないだろう。


「そういや試合形式って言ってたか。……でもあんまり知らないからな?」


 説明できる自信はない、と暗に伝えるが天鳳は笑顔で頷く。



 ここに急遽、バスケ部観戦withタピが結成されたのだった。



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