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四十五話

 

「奈々おはよ」

「ねえ慎、タクシーに乗ってた人誰だったの?」

「え」


 おれの「おはよう」は完全にスルーされ、挨拶がわりに冷や汗の出るようなことを言ってきた。


「沙雪ちゃんと話してた時のこと。あとタピオカと耳ってどんな内容?」

「めちゃくちゃ知ってるじゃん……」


 天鳳にだけ変装した愛咲を見せたつもりが、奈々も知ってるとは。


「ほら、この前勉強教えてくれた人。バイトいっしょだからさ」

「慎のバイトって友達のお兄ちゃんの仕事手伝ってるんだよね?あの女の人も関係あるの?」

「よく覚えてたな…」


 正直バイトの設定は忘れてくれてるかと思ってた。

 周りに適当に言いふらすのはやめたほうがいいな。


「だってすごく怪しいからね!!誰にも言わないし、学校サボるし、妹ちゃんにも言ってる?」

「天音には言ってあるから大丈夫だよ。それより天鳳と何話したんだ?」

「全然話せなかったよ。沙雪ちゃん私のことあんまり好きじゃなさそうだし。はぁ〜どっかの誰かさんが仲を取り持ってくれないかな〜」


 机に座りながら、チラチラこっちを見てくる。


 大体の女の子とは仲良くできるんじゃなかったのかよ……


「………連絡先も持ってないか?」

「うん。ほとんど慎と一緒にいる時に話すだけ」

「まあ、お前ならばらまいたりしないし–––––」


 そこまで言いかけておれは気づいた。


 そういや、天鳳にホテルに泊まってることはバレてる。

 もし奈々にそのことが伝わったらあの日愛咲といたのがホテル確定コースだ……!!

 天鳳なら面白半分で「先輩ホテルいるんだよ〜」なんて言いかねない。


「やった!!ありがとう!!」

「いや、よく考えたら本人に渡すなって言われてたんだ。ごめんな」

「え、い、今の流れで!?」

「それに、おれと奈々が付き合ってると思ってたらしいから、あんまり変に絡ませたくないかも」

「え………えええ!!??」


 予想以上の驚き。おれもあの時は目が点になったからな…


「わ、私と慎が……っつ、つつ、付き合ってる!?」

「どんだけ衝撃なんだよ」


 まあ、これでタクシーの話は流せたかな。

 天鳳と頻繁に連絡をするようになったとしたら結構まずい。


「とにかく、少しの間……そうだな1ヶ月くらい経てば大丈夫だろ。その時にな」

「………う、うん。わかった」


 やけに素直に頷いた奈々は机から降りるとカクカクした動きで席に戻っていった。


「実際には……あと三週間か」


 借金取りの来るタイミングは正確にはわからない。

 でもあれから親に連絡してもなにも反応が返ってこないから、とりあえず期限はそこで考えるべきだ。


 ピコンッ


 お、今日は何時間目休みかな………


『お昼休みにいつもの場所で会いましょう』


「珍しいな」


 率直にそう思った。

 一月に誘われた時とは違って、今のおれは昼や帰り際に一緒にいることがまずない。

 だいたい少し長い2時間目休みとか、放課後に少しって感じだ。


 ……もしかしたら……


 おれは思いついた考えに頬を緩ませて、授業の開始を待つことにした。








  ––––––––––––––––––––––––––––––––––––







「こんにちわ。お昼に会うのは初めてでしょうか」

「そうですね。ちょっと驚きましたよ」

「慎ならもう気づいてるかもしれませんが……」


 そう言って先輩は体の後ろに組んでいた腕を前に出した。


 手のひらには二つの包み。


「て、手作りですか……?」

「はい!お口に合えばいいんですけど…」

「絶対合いますよ!!えっと……どこで食べますか?」


 今日おれたちが会ってるのは特別棟の三階の廊下だ。隣に空き教室はあるけど鍵がない。


「ん……?」


 少し後ろの方で声が聞こえた気がした。


「だれかいるようですからこのまま教室に入ってしまいましょう」

「でも鍵ないですよ?」

「私がなんとなくこの場所にしたと思っていますか?」


 先輩は迷うことなくドアに手をかけた。


 そして、


「ここ鍵壊れてるんです」


 軽々と開けてしまった。


「まじか……知らなかった……」

「ふふったまたま見つけたんですよ」


 どんなたまたまなのか気になるところだがそれより今はお昼ご飯だ。


 すぐに中に入って扉を閉めるとテーブルにつく。


「ちょっと待っていてくださいね」

「いくらでも待ちますよ!」


 おとといの美味しいお菓子が脳裏に浮かぶ。


「はいっ!」

「お、おおお………!!」


 今日のメニューは


「生姜焼き定食って感じですね……」

「はい!自信作ですよ!」


 ザ家庭の料理代表といったメニューだ。


 特別すごい料理なんかじゃないけど、先輩が作った生姜焼きだぞ……?……めちゃくちゃ気になる……!


「じゃ、じゃあ」


「「いただきます!!」」


 いきなり生姜焼きを一口。


「うっま!!!」

「ふふっ良かったです!」

「これ……妹が作るよりうまい…です!!」

「天音ちゃん、ですよね。料理上手いんですか?」

「天音はめちゃくちゃ美味いですよ。でも、まさかそれより美味しく作るひとがいるなんて……」


 家が金持ちで、美人、性格は良くて料理もできる。


「先輩、めちゃくちゃモテますよね………」

「へ……?」

「今年告白何回されました?」

「こ、告白なんて……そんな」


 一気に顔が赤くなっていく先輩。

 こういう純粋そうなところも人気が出そうだ。


「実際、あんまりそういう話は聞かないですけど。家に禁止されてるとかあるんですか?」


 その途端、先輩の表情が固まった気がした。


「…家、というか彩香さんに見極めるよう言われているので。……そういえば慎」

「……は、はい」


 なんか怖いんだけど……


「彩香さんの水着姿、見たそうですね?」

「な、なんでそれを……」

「彩香さんが言ってましたよ?テストに集中もせず夢中にだった、と」

「いや、あれは一瞬だったし、そのあとは全然」

「谷間も見たとか」


 あ、あの女全部ばらしやがった………!!


「どうなんですか?慎」

「……はい、すみませんでした」



 最高のランチから一気に説教へと急降下。


 昼休みギリギリまで説教は続いた。

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