三十五話
こんかい短めです。
「耳の権利って……」
あたしは奈々ちゃんとの電話を切ってからさっきまでの会話を思い出す。
沙雪ちゃんって女はお兄ちゃんの後輩で社長令嬢らしい。
この前後輩で仲いい子いるの?って聞いたらいないって言ってたのに……嘘ついてなかったけどなあ……
もしかしたらお兄ちゃんは仲が良いとは思ってないのかもしれない。
でも、さっきの会話で一番重要なのは
『タピオカと耳の柔らかさ』をお兄ちゃんと話してて『耳の権利』を買おうとしたことがある……
お、お兄ちゃんの耳を狙ってるの………?
ほ、本当にそんなことあるかな……。
あたしもお兄ちゃんの体、というか抱きつくのは好きだし、匂いもずっと嗅いでられる。
けど…耳なんて……
………どうやって使うのか、き、気になる!!!!
あたしはすぐに奈々ちゃんにメッセージを送る。
「今度沙雪ちゃんと遊ぶ約束でもして。あたしもそれに偶然混ざって仲良くなる」
どういう人なのかは結局のところ直接会ってみないとわかんない。お兄ちゃんのこと、どう思ってるのか見極めないと……
––––––ピコンッ
「お、はやいなあ」
奈々ちゃんの従順さに少し優越感を感じる。
正直いって、お兄ちゃんはキスされそうになったくらいで嫌ったりしない。
奈々ちゃんとは仲がいいんだと思うし、少し気まずくなったりしても縁を切ったりなんて絶対にない。奈々ちゃんが本気で告白したら、こんな写真たいした意味をなさないだろう。
………それに、かなり可愛かった……
お兄ちゃんに1番合うのはあたしだと思ってるけど、膝枕している様子は本当のカップルみたいだった。
嫉妬でスマホでも投げつけてやろうかとも思ったけど、頑張って我慢した甲斐はあった。
奈々ちゃんを脅してほかの女の情報を集めて、お兄ちゃんの悩みもあたしが解決する。
いまのところはあの日、お兄ちゃんがセカンドビルにいたこと、学校をサボってまで女と会っていたこと、かな。
わざわざこんな嘘を作って教えてこないだろうし、奈々ちゃんには頑張ってもらわなきゃ。
そこでメッセージに意識を移す。
『今まで慎抜きで話したことがほとんどないから、難しいよ。あと連絡先知らないし』
「連絡先を知らない……?そんなに話してないんだ……」
お兄ちゃんとだけ話すのかな……。
お兄ちゃんがお金で吊られることは…
『1日5万円、1ヶ月で約100万です』
『クレープ何個買えんだよ……』
な、無いと言い切れない……。
あたしはいつかの執事ナンパ女を思い出してしまった。
結局お兄ちゃんは断ってるからいいけど……やっぱモテるんだなあ……
妹としてじゃなくて女としての立場から見てもお兄ちゃんはカッコいい。
中学くらいまでは恋愛とかに興味なかったみたいだからあたしも心配してなかったけど、高校生になってから話す内容に女がよく登場するようになってきた。
家に遊びにきたのは海斗くんだけだけど。
……そうだ!海斗くんにも聞いてみれば……この前断っちゃったんだ……
とりあえずお兄ちゃんから聞き出してみて、と返してアプリを閉じる。
「あ〜あたしが一個下だったらなぁ」
そんなことを愚痴りながらお兄ちゃんのベッドに飛び込んだ。
「前来た時は間接キスみたいなものだったし……もっと、もっとすごいのしたいな……」
あたしの料理を美味しそうに頬張るお兄ちゃんを思い出す。なにが入ってるかも知らないのに、躊躇わないで食べていた。
「…あ、あれはあれで興奮したなぁ…」
今日もあたしはお兄ちゃんに溺れていくのだった。
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