三十二話
ちょっと短いです!
今日で借金デイから一週間が経った。
土日あたりは特に忙しかったが、マネージャーの仕事に関しては愛咲がまだ高校生だからか平日だとあまりない。
執事も学校でたまに話す程度で、休日の日課を経験していないからそれほど大変ではなかった。
ここで問題なのはマネージャーの方だ。
おれがMOXのアイドルマネージャーをやろうと思ったのはあそこだけ完全歩合制だったからだ。その額も先輩の執事ほどまではいかないが十分に大きい。
よってもう少し平日も働かせてもらわないと予想金額には到達しない。
幸い今日は愛咲が服を買うらしく、おれもついて行くことになったため仕事の量についても話し合ってみたいと思う。
いつメンにバイトに行ってくるからと伝えて昇降口に向かう。 もうこの言い訳にも、疑われていることにも慣れたものだ。
そして下校する人が一旦いなくなるまで待ってから、一昨日会った天鳳に連絡を入れる。
数分して、校門の近くで待っていると天鳳が小走りできた。
「どうしたの先輩。先輩からメッセージくるの初めてなんだけど…」
「ほら、これ」
「うわっと……なんでタピオカ…?」
「耳の触感と似てるかなって」
「全然違うよ!先輩のだからいいのに…」
「あ、やっぱそうか〜。ま、それあげたかっただけだから」
「なにそれ……まあいいや。もう帰るならいっしょに帰ろうよ」
「ごめんな!これから友達とバイトでさ、あ、来た」
おれの目線の先を天鳳が見る。
そこには一台のタクシーが止まっていた。
「さいはら〜早くのってよ〜」
遠慮がちにおれの名前を呼ぶのはもちろん愛咲だ。
「え……だれ?」
「えっと、バイトの友達。タクシー代経費で落ちるからって迎えにきてくれたんだよ」
そんなことはあり得ないが。
「てことで、またな」
「ま、まってよ!!」
天鳳の制止を無視してタクシーに乗り込んでいく。
「あの子友達じゃないの?」
「部活…の後輩だな。それより服買いに行くんだろ?」
「そうだけど……なんでわざわざ校門までタクシーで来させたのよ?人はそんないないけどさ…」
「マネージャー感ある気がしてさ」
「絶対違うわよそれ」
おれの冗談は理解されてもらえなかった。
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「あ、あの人めちゃくちゃ可愛かった……」
見たことあるかもしれない…………モデル!?
……あ、あんな人とバイト先一緒なの……?
あたしとは遊んでもくれないのに……。
バイトなんてそんな大事なことじゃないよ…。
何をしても許してくれて、一緒に楽しんでくれる先輩があたしより他の人を優先してる。
あたしのなかで少しずつ嫉妬心が芽生えてくるのを感じた。
「あれ……慎だ……」
私は今バスケシューズを教室に取りに戻っている途中だった。
二年生棟に着くところでたまたま校門の方を見ると慎がタクシーに乗っていく場面が見える。そしてその近くには沙雪ちゃんらしき子もいた。
タクシーを使ってまでバイトに行くわけない。
そんな非効率なこと絶対にしないからやっぱり遠いところに行ってるんだ……。
それになんで沙雪ちゃんもいるんだろ…。
2人が同じ部活でたまに部室で遊んでるのも知ってる。
……いっしょに帰るわけでもないし、なに話してるのかな。
「あ〜〜〜気になる〜〜!!!」
もう今日はバスケサボっちゃお!!
私は立ったまま動かない沙雪ちゃんに話しかけようと歩き出すが、一旦思いとどまる。
私が慎のことを気にしてるっていうのはあんまり知られたくない。特に慎の近くにいる子には。
……なら、このまま黙ってるの??
どうしようか、再び案を練っているとスマホがメッセージの受信を知らせた。
送信者の名前を見て一瞬寒気がする。
しかし動き出さない沙雪ちゃんをみて、私はトークルームを開いてしまった。
––––––才原 天音。慎の妹だ。
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