二十九話
なんか愛咲の登場率高いですね
ちなみに勉強の話は16話です
「大人の勉強よ?」
こいつはどうやって収拾をつけるつもりなのか。
こんな爆弾発言してうまく収められるか?
『………は?』
明日からクラスに行くのが怖くて仕方ない。
「さっきはね、服脱がされたし」
連続投下。しかもそれおれじゃないやつ。
『う、嘘だよね!?慎もなんか言ってよ!!』
この際関係ない、とスピーカーをオンにして話しかける。
「おれじゃないから!全然こいつの言ってること合ってないから!」
「でも、間接的には関わってるわよ?」
「え……や、それは……」
『慎……?いま説明してくれないとクラスにバラすよ?』
な、奈々が怖すぎるんだけど……
「しかも間接的なのに、ちょっと見たでしょ?」
「いやほとんど脱がされてなかっただろ!?ベッドに押し倒されてたから角度的にもちょっときつかったし…」
『押し倒す…?ベッド…?……なにを入れる角度……?』
絶対誤解されてるこれ!!
さすがに無理だと思い小声で耳打ちする。
「おい!まじでどうすんだよ!」
「大丈夫よ。ちゃんと考えてあるから」
ちゃんと考えてるやつはそんな楽しそうな顔をしないと思います。
「あとはー、あ、そうだ」
『………なに?早く言ってよ』
キレてる。もうなにがあってもこれよりマイナスはない。
「私が一番可愛いって言ってくれたよ?」
いつかのインドの数学者もこんな気持ちだったんだろうな。
『………ほんと?』
「……………はい」
マイナスはありました。
長いため息が向こうから聞こえる。
それとは対照的に愛咲はニマニマしていた。
『とりあえず慎、学校に来るか場所教えるかはっきりして』
有無を言わせないとはこのことか。答えが一つしかないだろ。
しかしおれが答えようとするのを愛咲が遮る。
「ってのは冗談で本当に勉強教えてたのよ。先週化学の構造体見分けるやつやったわよね?そこのコツ」
『…っ…なんで…そ、そんなのいま慎から教えてもらったんでしょ!?』
「あと古文だと先週の物語の助動詞のわかりにくいとことか。数学はまだだけどみんな苦手だった勘違いしやすい部分ね」
『っ–––––ほ、ほんとに知ってるんだ……慎教えてもらったの?』
「ごめんな!ちょっとこいつと悪ノリしすぎた!どうしても今教えてもらいたくて頼んでたんだよ。ほら、夜はバイトで空いてないしさ!」
我ながらうまい。
『……そうなんだ……。でも仲良いんだね?』
「最近知り合ったばっかだけどね」
そこは正直に行くのな……
ま、あんまり関係は知られたくないけど、これはしょうがないか。嘘と本当のバランスが重要って言うしな。
『他校の人かな?こんど一緒に遊ぼうよ!!』
「時間が合えばぜひ、ね」
『うん!じゃあ、慎もまた明日ね!!』
「お、おう!またなー」
通話をきる。
–––––約10分の激戦が今、ここに終結した。
「あー楽しかった!!」
「…………お前やりすぎだろ……もう体力ねえよ…」
「怪しまれるくらいなら話しかけちゃった方がいいわよ。それに勉強って理由も信憑性あったでしょ?」
「………あのまま切れば…いや、結局ダメか」
どうせ明日学校で質問攻めだろうな。
それより、
「なんでおれたちの勉強してる単元知ってたんだ?おれ言ってないよな」
「それは調べたから」
「いつ?さっきはどう考えても時間なかったぞ」
「……い、言ってたじゃん…」
なんか少し顔を逸らしていってきた。
なにが恥ずかしいのか。
「…何を?」
「今度…勉強教えてくれって…」
「……え?」
–––––それって、たしか愛咲のいるとこが栄女だってわかった時に言ったやつか……?
「もしかして、わざわざどこまでやってるか調べてくれてたのか……?」
「そ、そうよ!!あんたのとこも私立の中だと有名だからネットに載ってるし……そっちの方が、上手く教えられるから…」
おれは驚きを隠せなかった。
愛咲がおれのために、本当に頼んでくるかもわからないのに、考えていてくれたわけだ。
そう思うだけで
–––––やばい、なんか顔が熱い。
「そっか……その、ありがとな」
「別に………まだ教えてないし」
お互いにちょっと恥ずかしい感じが出てしまった。
なんか、今日こんな雰囲気ばっかじゃないか?
せっかくさっきの電話で戻った気がしたのに……!!
だからといってナイス奈々!!とは一切ならないが。
ただ、そこで視線を彷徨わせているとあることに気づく。
「え……お前なんでタオルだけなの…?」
「……ん?」
自分の体を見る。
「いや……服は?」
「……あっ……」
愛咲はタオルを巻いてるだけの状態で出てきていた。
徐々に顔が赤くなってくる。
おれは次に来る音属性の攻撃に対策をしつつも、自然と彷徨っていた視線がある一点、いや正確には二点か、そこに吸い寄せられていった。
服の上からじゃわからない、なんというか実際の感触が想像できてしまうレベルのクオリティだった。全くタオルの上からだとは思えない。
だがちょっと長く見過ぎていたみたいで
「い、いつまで見てんのよ!!!!」
予想外の物理属性でKOされた。