二十八話
たのしんでくれると嬉しいです!
さすがのおれも目が点になった。
泊まる…?どこに…?ここに…?
「なんか疲れたし、このまま帰るのも嫌だし」
「いやいやいや…何言ってんだ、おかしいだろ」
「いいじゃんべつに」
「良くないから!そもそもベッド一つだぞ…?」
「……しゃ、しゃわー浴びてくるから…」
照れるなら言うなよ。
「しかもまだ昼過ぎだぞ……」
そんな言葉も虚しく、愛咲はシャワールームに入っていった。
いま、向こうでアイドルがシャワー浴びてるだと?
そんでおれはマネージャーだ。……なんだこの状況
もちろん女子と泊まったことなんてないし、彼女がいたこ
ともない。よってこんな状況は人生初だ。けど、なんだろうか。このダメなことをしているのに湧き上がってくる感情は……
ブルルルッ–––––
「っ!!……奈々から……?まあ、学校サボってるから……」
さすがに無視も悪いと思い、でることにした。シャワーの音は聞こえないだろうしな。
「もしもし?」
『慎!!学校抜けてどこ行ってるの?もう終わっちゃうよ?』
「悪いな!ちょっとお腹痛くて保健室行ってたんだ。もう今は家だよ」
『……さっき保健室にいったら慎来てないっていわれたよ?』
「え………」
『……やっぱりなんか隠してるでしょ!言わないと家押し掛けるよ!』
「いやいやほんとだって!先生が忘れてんじゃ––––」
「さ、さいはらぁーー……私のカバンから洗顔剤とってくれないー……?」
『……え…』
おれは一瞬でスマホを布団で包むが、
『……今の女の人だよね?』
バッチリ聞かれていた。
「……妹の天音だよ。あいつ今日早くてさ」
『妹が才原なんて呼ぶ訳ないじゃん!!慎なにやってるの!?洗顔剤とか言ってなかった!?』
「いやたまにそう呼ぶんだって!!あいつがシャワー浴びてるだけだ!鷹宮にでも聞いてみろよ!?」
そう言いつつ、おれは高速で鷹宮にメッセージを送る。
頼む、策士。おれを救ってくれ……!!
『これスピーカーでみんなで聞いてるの』
「……ん?」
『さっき海斗がそんな風に呼ばないって言ってたよ』
『あ、しかもなにこれ……「天音は才原ってよんでる」かぁ。本当ならわざわざ送る必要ないよね……?』
あいつ、スマホ取られてんのかよ!?
『ねえ慎!本当は何してるの!?どこいるか教え––––』
「ねえ才原聞こえてないのー?私は取り行きたくないんだけどー」
シャワールームから少し顔を出した愛咲は続ける。
「ほら、聞こえてるわよね!?急に泊まるって言ったのは悪かったけど.無視しなくてもいいじゃん!!」
かなり大きい声で。
『と、泊まるってどういうこと!!??…わ、私だってまだ………じゃなくて!!その人と話させてよ!!』
「いやいや、全然誤解だから!!明日ちゃんと話すから!!」
『そんなこと言って、またこの前みたいにはぐらかすんでしょ!?こ、これから……その人とお、大人になっちゃうつもりなんだよね!!??』
「いや、なんないから!!そんなんじゃないよ!」
おれは愛咲に布団からスマホを見せて理解させる。
開いた口が塞がらない状態に突入のようだ。
『絶対そういうつもりだよ!!違うなら場所教えて!みんなで行くから!』
「たから…………」
やばい。どうすればいい。何を言っても助かる気がしない。
せめて鷹宮がなんとかしてくれれば……
『何も言えないってことはそういうことなんだ……も、もしかして…もう大人になっちゃった…とかな、無いよね??』
「あるかっ!!学校サボってそんなことしねえよ!」
『でも、なにも教えてくれないじゃん…』
「そ、それは––––」
おれが言い淀んでいると、いつのまにか隣に来た愛咲にスマホを取られる。
「なっ、」
「もしもし、才原の友達よね?」
こ、こいつ……話しかけやがった……!!
『な、そ、そうですけど、あなたはどういう関係何ですか?学校サボってまでこっそり会って、何してるんですか!!』
「勉強教えてるのよ。学校のよりずっと分かり易いわよ?」
『は、はあ!?そんなわけないでしょ!!わざわざ慎があなたに-––––』
「なんか勘違いしてるみたいだけど」
「––––大人の勉強よ?」
おれを含め、スピーカーの向こう側の全員が凍ったのを感じた。
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