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二十三話

遅くなりました!


あと最後ちょっと変になりました

 

 あれから時間の許す限り調べものもして、いつものようにセカンドビルへ。


 今日は4階の楽屋で集合だった。


「おつかれ」

「んー」


 意外と小さい楽屋だった。来るときに見た感じ空き部屋しか無かったから本来の用途は違うのかもしれない。

 そんな楽屋の端で、愛咲は椅子に座ってスマホをいじっているみたいだ。


「……お、なんか今日の衣装前のと似てるな…」

「才原の指摘が良かったからじゃないの?今度からはこういう暗めの感じだってよ」

「やっぱ絶対それで正解だよ。クールビューティーが一番合う」

「………そういうあんたは前と同じ服じゃない?それ」

「え……?」


 おれは自分の服装を確認する。


 た、たしかに………!!ホテルにいるから服の種類が少ないとはいえ二回の収録で被るとは……


「高校が制服なら私服が少ないのもわかるけど、こんな早く被るって……どんだけ少ないのよ」

「いや、たまたま被っただけだろ!結構私服はあるほうだし!」

「まあ、ダサい訳じゃないけどさぁ」


 アイドルとしてファッションに対するこだわりがあったりするんだろうか……


「それより、もう挨拶いっとこうぜ。礼儀はしっかりしてたほうがいい」

「わかった」



 いない人もいたが、一通り出演者と挨拶をして戻ってきたところで今日の収録で一番有名な俳優を見つけた。

 壁に背を預けているだけで画になるのはさすがだといえよう。


「あの人が原 涼太 (はらりょうた)だな」

「もちろん知ってるわよ。ほんとにすごい人なんだから」


 この俳優、テレビに出始めてから約1ヶ月で専用番組まで出来てしまっているのだ。内容は原ともう1人の呼ばれた女優が一緒にドライブしたり、デートに行ったりするもので人気が止まることを知らない。

 女性ファンは妄想したりして楽しめるんだろうな。もちろん、逆も然りだ。


「よし、いくぞ」

「は、早いって!」

 おれの一言とともに愛咲がついてくる。

 向こうも気づいたところようだ。愛咲は結構緊張してるけど無理やり前に押す。


「っ………あ、あの、原涼太さんですよね?私––––」

「あ、春ちゃんだよね?よろしく!!」

「え……わ、私のこと知ってるんですか!?」

「そりゃもちろんそうだよ!最近MOXに移ってきたんでしょ?前の事務所いた時の赤い衣装もいいけど今の方が似合ってるよ!」

「あ、ありがとうございます……!!」


 へぇ……。意外と調べてくる人なのか。


「とりあえず、今日もよろしくね!がんばろう!」


 そう言って原は階段を登っていく。


「ね、ねぇ…私…今…」

「流石に出演者だから調べてきたんだろ。おれたちみたいに毎回しっかり考えて取り組む人みたいだな」

「……それはそうかもだけどさ」

「残念がる必要はない。ああいう人が多い分上手く回るから今日もいい収録になるぞ」

「……まぁ、そうよね。司会の人来るまで楽屋でいいわよね?」

「おれはちょっとトイレ行ってくる」

「んー」









 司会との挨拶も終えて、万全の準備をしたまま収録が始まることになった。


「今日が2歩目だ。しっかりな!!」

「もちろんよ!」


 こんなところで躓いてられない。







 最初の数分は前回同様に、キツ目に見せて発言しているだけだった。


 ………チャンスが来ない……。


 インパクトのある発言をまだ出来てない。

 前回は才原が助けてくれたけど今回はそういったことはしてないと思う。

 今日は街行く人のファッションを見てそれぞれ思うことを言っていくだけ。基本は司会の早見さんと原さんが笑いを取っていっている。


「あ、そうだ!!おれ楽屋で春ちゃんのマネージャーと話したんだけどさこれとまったく同じだったんだよ!!」


 その一言でさらに場が盛り上がった。


 え……あいつこんなんじゃ無かったけど……。


「さすがのおれも我慢できなくてアドバイスしてあげたね!!せめて黄色はやめようってさ!!」


 たたみかけるように原さんは毒を吐きまくる。

 周りは才原の服装なんて覚えてないだろうけど、私はしっかり覚えてるから意味がわからなかった。

 なんで嘘まで言って才原をバカにして笑いをとってるんだろ……。


 長く続くそれに私は自分の心が荒んでいくのを感じながらも、チャンスを待つ。


「春ちゃんはどう思ったの??」


 そして、不意に投げられた言葉を


「あんたのネックレスよりはマシじゃない?せめて黄色はやめた方ががいいわよ」


 蹴り返した。


「っっ!!」




 ただ、前回と違ったのはこのあとだった。


「はぁ?あんた何様よ!!涼太くんには似合ってるじゃん!!」


「え?」


「ちょっと可愛くなっからって調子乗りすぎじゃない??」

「そうだなぁ。……まあ、涼太君に謝っとこか!!」


 早見さんまでもが向こうサイドに回っていた。





 え……もしかして、もうミスったの……?

 前回あんなにうまくいったのに……?ここからがスタートなのに?





 ––––いや、違うわよ。あいつだって見てるんだ。こんなとこで引けない……!


「というか、早見さんもそれおなじですね!」






 ––––その瞬間、空気が凍る。






 あまりに異質な光景に私は固まってしまった。





「まあ、そうだよね!!」


「え」


「おれらみんな意外とファッションセンスないのかも!!いやぁ言ってられないなあ」


 しかし、空気を戻してくれたのは原さんだった。 


 その後は何もなかったように進んでいく会話。



 なんでかはわからないが、私はこの後まったく発言することができなかった。




次もありますよ

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