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二十二話

綾瀬 真姫 (あやせ まき)です。


今回、硬いです笑笑


でも楽しんでくれると嬉しいです!

 



 才原はバイトしてる友達の家に泊まる、と言って違う電車で帰っていった。

 クラスの面々が次はいつ遊ぶか話しているのを傍目におれは橘に声をかける。


「なんで、そんな微妙な顔してんだよ!」

「えっ!…い、いやそんなつもりはないけど…」


 やっぱり少し様子が変だな。


「才原とのデュエット、恥ずかしくて出ていったこと気にしてんのか?」

「うっ………別にいいでしょ。海斗は気回してくれたみたいだけどあんなの歌えないよ」

「そんなことないと思ったんだけどな。お前意外とやる時はやるタイプだし!」

「無理な時もあるよ!……まあでも一応ありがと」

「お礼なんていいって!」


 結局、カラオケ部屋から出て行った橘が戻ってきたのは30分後。どんだけ恥ずかしかったんだか…

 おれは直接橘に聞いたわけじゃないけど、橘は多分才原のことが好きだ。今の会話なんてもう認めたも同然だろ。才原が橘と仲が良くて、しかも前に一番可愛いって言ってたのも知ってるからなにかとくっ付けようとしてるわけだ。

 もちろん、この考えに天音ちゃんは関係ないといえば嘘になるけどな……



「それにしても、結局才原が変だった理由はわかんなかったなー。今日はいつもみたいに楽しんでたよ」

「……そうだね。バイトが怪しそうだけど友達のことだからって教えてくれないし」

「あいつがよく話してるやつなんて限られてくるけど、それが本当かもわかんないしな」

「うん」


 あいつのことだから割とハードなことやってるんだろうけど……

 まあいきなり話せってのも無理があるか。少しずつだな


「ま、でもさ今日楽しかっただろ?おれ綾瀬と勉強以外であんなに話したの初めてだったんだぜ!」

「真姫学校だと男子とあんまり話してないからね。そうなるのもわかるかなあ」

「橘も何人か連絡先交換してたじゃん!話したことなかったのか?」

「えっと……3…じゃなくて2人だけかな。みんな話したことはあったけど持ってなかったんだよ。2年になってまだ2ヶ月だからね〜」

「確かに。……このまますぐ三年になって卒業なんだろうなあ」

「一年生も思えばあっという間だったしね」




 橘との話はそんなテンプレなパターンで幕を閉じ、次の遊びはどこにするかという会話に混ざっていくのだった。








  ––––––––––––––––––––––––––––––––––––









「ん…………、いま何時だ……」


 スマホの表示は5時37分。

 クラスの打ち上げの後、ホテルに戻ってすぐ寝てしまったため早く起きたみたいだ。

 ちょうど3分前にメッセージも来ていた。


「………アイドル兼毒舌……ふっ」


 自分でつけた愛咲の名前に笑う。

 センスしかないな。


『私メイクやる時間変わったからお昼過ぎにいくわよ』


「本番夜だろ……?早えな……」


 それを見ておれもメッセージを返す。


「わかった。おれは3時くらいから行くからそれから楽屋に挨拶とかいこう」


 今回の収録の内容は昨日何度もシュミレーションしたから最初よりも楽だろう。


 おれは顔を洗って机に座り、カバンからペンを取り出した。


「最後の休みかもしれないからな。……もう一回まとめるぞ」


 ノートは誰かに見つかる可能性を考えて使わない。

 ペンを持つのは書くためじゃなくて、癖というか持つと集中できる気がするからだ。




 3日前おれの両親が10億の借金をした。

 あの時はとりあえず目先の金を稼ぐこと、生きることを考えて行動したけど今ならさらに冷静に考えれるはずだ。



 まず、10億という額から推測して法律の届かないような連中と関わっていたとしよう。そんな金を返すあてがうちにはないから貸してくれるはずがない。一家全員死んで終わりだ。さらに言うなら父がデータ上の財産をいじって借りることができたとしてもそんなことをする理由は絶対にない。

 おれの両親は借金を作るような人たちでは無かったし、あの時予想した投資で借金をしてもこんな増やすアホでもない。ドッキリ、というかサプライズで「嘘でした〜!!」と言うにしても、あまりに度がすぎている。


 つまり10億もの借金は本当にあるが、どうやってそれができたのかは全く想像のしようもないわけだ。


 よってここからはどんな理由であれ借金とそれを貸してくれた相手がいる前提で考える。


 つぎはなぜおれに頼ってきたか、だ。


 おれを頼る、天音と家を守れ、と言ったことにも嘘はないだろう。

 ただ、父はかなり能力が評価されていて年間2.3千万稼ぐ超高収入だ。それでも10億まで金を貸すはずは無いが、おれなんかよりずっと返せる可能性があるだろう。

 そんな父(話していたのは母だが)がおれを頼ると言ってきた。

 その理由はなんなのか。


 ①両親の借金をおれ達子供が引き取らない方法がある。つまり、私達親は返す気力・方法が無いから死ぬけど、親を切り捨ててお前たちだけで生きろという遠回しのメッセージだったパターン。

 そんな方法を貸してきた相手が知らないわけがないし、許すはずもない。なんとしてでも返させるためにおれ(表の世界)へのコンタクトは取らせないし、働かせるだろう。


 ②貸してくれた相手が薬とかでイカれまくってて「借金10億を息子に返させろ」と言ってきたパターン。

 まじでイカれ過ぎてて意図が読めないが「いわないと天音を殺す」なんて言われていたのなら砂漠の砂つぶくらいの可能性はある。

 でも絶対ない。


 ③おれに10億を返すだけの方法があると本当に信じているパターン。現にいまアイドルマネージャー、執事をやっているわけだが、こういう潜在的なセンス、可能性をすでに見出していてなんとかなると思っているということだ。




 1個目は無理だな。動画で「返せたら一年後に帰ってくる」的なことも言ってるから切り捨てろというメッセージではない。

 2個目はまじでイカれている。絶対ない。


 つまり、必然的に3個目。おれが返せると思ってるんだろう。


 目先の数百万稼ぐのにいっぱいいっぱいなのにな……


 まあ、数百万だけでも高校生にしてはイカれているが。


 家族が生きることを最も重要な軸に考えれば、おれはこれからも働き続けるしかないんだ。

 一縷の望みにかけるだけじゃダメだし、何かに助けを求める訳にもいかない。おれ自身に10億返すだけの有能さがあることを示さないとどうなるかわからないからな。


 働き続けてなんとか生きるしかないんだ。





「……きっついなぁ…」




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