二十話
できたらすぐ出します!
楽しんでくれたら嬉しいです!!
受付のお姉さんとの話は思いの外簡単におわってしまった 。
まず全力で謝る。その後にこっそりマスターキーを渡す。端的に言えばそれだけだ。
おれの顔を見た瞬間びっくりしてたけど、片山さんが細かく事情を話してくれていたおかげか、すぐ許してくれた。
むしろそのあと話してたら応援までしてくれたからな。
そんなわけで今は大型のアミューズメント施設前にいる。
ここが2年2組のクラスメートとの待ち合わせ場所だ。天音にはさっき場所を伝えたし、鷹宮と奈々にも了承はしてもらった。
ただ集合時間は今から50分後。七花駅からそのまま来たため早くつきすぎたな……
「暇だ……」
けれど体を優しく撫でる風が心地いい。
おれはベンチに身を預け、ゆっくりと目を閉じた。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––
時計の時刻は午後4時20分、40分前は流石に早かったかもしれない。
私は基本こういう遊び関連で遅刻やドタキャンをしたくないから15分前行動は心がけている。ただし、今日はどうしてもさらに早く来る必要があった。
それはもちろん、誰よりも早く天音ちゃんに会うためだ。
慎と海斗いわくめちゃくちゃ可愛い天音ちゃん。
慎たちが一番遅かったら意味はないけど、天音ちゃんと周りより先に仲良くなれれば今後遊んだりできるかもしれない。
そんな期待を胸に集合場所へ行くも、まだだれもいないようだった。ベンチにでも座ろうかと視線を向けると––––
「…え、し、慎……?」
ベンチで気持ちよさそうに寝ている想い人を見つけてしまった。
「な、なんでこんなとこで……」
私の頭は壊れたように回り出す。
え、慎ってこういうタイプだったっけ!?いやいや人前で寝るとか授業ならまだしもここじゃありえない!!……も、もしかしてほんとは体調悪いとか!?……でも気持ちよさそうだし……。
悩んでいても答えが出るわけがなかった。
「お、お〜い。しんー?こんなとこで寝てたら風邪ひくよ〜」
私は優しく話しかけてみる。
「………すぅ………」
返事はない。
……ならば、と頬を軽くつついてみることにする。
「な、なんか緊張するな………」
私は少し震える指を頬めがけて近づけていった。
つんつん。
「………すぅ………すぅ……」
めちゃくちゃ熟睡してるよ!!??め、珍しいこんなの……!!
「お、起きないなら…い、いたずらしちゃうよ…?」
もちろん起きないことを知りながら私は頬に手を添える。
男子高校生にしては柔らかい、すべすべとした肌。
「……う、うわぁ…。……思ったより柔らかいんだ…」
このままずっと触っていたい衝動に駆られるが私はなんとかそれを抑え、立ち上がる。
でも、それは「誰かに見られたら困る」なんていう守りの考えから生まれた行動じゃない。
「こんなチャンスもうあるかわかんないよ……。なら、いけるとこまでいくしかないよね……!!」
クラスメート、または慎本人に気づかれてしまう覚悟を背負った、攻めの気持ちの表れだ。
「ちょっと頭動かすよ………」
私はそっと慎の頭を持ち上げると、ベンチに座り、その隙間に太ももをスライドさせる。
「………う、うわぁぁああ…………!!!」
そう。これは全カップル憧れシチュエーションベスト3にランクインする王道中の王道––––
––––膝枕だ。
「わ、私……今、慎に、膝枕してる……。」
心臓のどきどきが止まんない。
冷や汗なのか体が火照った故の汗なのかわからないけど、頬を伝う何かも止まんない……。
こんなことできる日がくるなんて思ってもなかった。
ほんとに早く来て良かった………!!!
「ん……」
「っ!!!」
お、起きちゃった!!??
「………すぅ」
………っびっくりしたぁ。嬉しすぎて体動かしちゃってたのかと思っ–––
「あっ」
寝返りをうったことで慎の顔が私の方に向いていた。
「さっきは向こうだったけど………や、やばい…これ心臓止まっちゃうよ………」
そう言いつつも、私は慎を見ることをやめられない。
––––ああ、やっぱり好きだなぁ。
かっこいい顔も、いっつも話しかけてくれる笑顔も、寝てるかわいい顔も……
全部が愛おしく思えてしまう。
「………さすがに、まずいかな……」
口にした言葉が全くの本音じゃないことに自分でも気づいていた。
「……だって、寝てるんだよ………いくらなんでも非常識……だよ」
それでも私の口から出てくる言葉は止まらない。
「…………ねえ慎……」
なんとしてでも、この行為を正当化したいから。
「…………嫌なら断ってよね……」
なんとしてでも、彼を独占したいから。
私は答えるはずのないその唇に自分の唇を近づけていった。
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