十五話
中途半端ですいません
次回も読まないとよくわかんないと思います
なので明日の待っていてください!
「はい。電話番号とかなんの連絡先も伝えないままですいませんでした」
『たしかに私も突然のことで失念していたよ。まさかあんなことをしてくる人がいるとは思ってなかったからね』
「インパクトが大事なんでね。ああいうやり方が一番だと思ったんですよ」
『まあ、結果オーライだったわけだ』
「ええ。」
そこで少し間が空いた。
本題だろうな。
『君の契約書、昨日確かめさせてもらった。』
「はい」
『ははっ!よくそこまで冷静でいられるものだね。……私は今までの人生の中でURLの載った契約書など見たことが無かったよ』
「あははっ!そうでしょうね。おれも初めて見ましたから」
片山さんが笑うのも当然だな。おれも逆の立場ならわけがわからないから。
あの時は向かい合って話していたけど、契約書に細かく記載されている文字を正確に読むことなんて出来なかったはずだ。
そこで唯一、200000000という額とサインの部分だけ強調して話すことで契約書に載っているそこだけに意識を集中させた。
『URLの先に詳細がある、という文を読んだときは久し振りに笑ってしまったさ!ユーモアもあるようで私は嬉しかったね!』
「それは良かったです。その先は見ましたか?」
『もちろん。君が三光高校に通っていて、その証拠となるクラスメートや友人の名前が連なっていた。そしてその中で強調されていたのが桜楽朱華里、資産家のお嬢様のようだね』
おれは黙って続きを待つ。
『彼女のプロフィールから桜楽家のページに飛ぶと、君が高校生であるにもかかわらずその桜楽家の超高難度な執事として雇われていて、周りは一回りも年上なものばかり、つまり特例だということがわかる。さらに注目すべきはその賃金だ。……一日10万は私でも恐れ入ったよ。高校生が稼ぐ額とは到底思えないな』
『1ヶ月で特別な出勤も含めれば平均300万、三年でやく一億だ。…契約の二億には六年かかるわけだが、もし君が急遽二億必要となれば桜楽家がそれを代わりに払ってくれる。なぜなら君はとても優秀で定年まで勤務するであろう桜楽家の執事は何十年も支えてくれるわけだから、給料の先払いと大差ないということだ』
そう、これがおれの用意した契約書だ。いや正確には契約書というよりも
『これは、まるで就活のエントリーシートだよ。君は私に2億払うつもりなんて毛頭ない。だってここまで圧倒的に価値のある人間が昨日のような成果を出せば私が辞めさせる理由もないからね。君は自分をアピールするためにこれを渡したわけだな?』
「その通りです。ただし、昨日の収録が絶対にうまく行くという自信もなかったので、覚悟はしていましたよ」
『はははっ!!こんな高校生は見たことがない!才原くん、君は昨日あの契約書をあたかも私に本物のように見せた。私はもし偽物ならすぐ君を追い出すつもりだったが、あそこまで手の込んだものを見せられて結果を期待しないわけがない。見事なマネージャーへの執念、いや見事な一手だったよ。詐欺師のセンスもあるんじゃないのか?』
……詐欺師。その言葉がすこし頭に引っかかった。
だがすぐにそれを振り払う。
「どちらにせよ結果を出さなければ終わりという状況でもありましたからね。一回でもマネージャーになれれば勝ち、というか一回でも愛咲をサポートできればそれで良かったんです。」
急に名前を出したことで目の前のアイドルが反応した。
「あたしがどうかしたの?」
「ん、まあ片山さんから褒めてもらってるって感じだ」
「そっか。よかった」
そう言って残りすくないデザートを口に運ぶ。
いま褒められたのはおれだが、今はわざわざ言わなくてもいいだろう。
せっかく嬉しそうな顔してるしな。
『ん?もしかしてそこに愛咲春もいるのか?』
「はい。次の収録とか、昨日のことについて話し合ってるんですよ」
『ははっ!!そうか!!ほんとに仲がいいんだな。昨日君を選んで本当に良かったよ」
「いや、そうとも言えませんけど…。あ、そうだ。ちなみに桜楽家のおれのプロフィールも確認してくれましたか?」
『当然だ。君が働いている証拠だからね。』
––––よかった。
おれは心からそう思った。
なぜならそこが今回1番の心配どころだったから。
「良かったです……。えっと、じゃあもうこの時点でおれは一週間のみ、では無くなったんですか?」
『そういうことだ。ただし、これから愛咲春が忙しくなるように君にも相応の労働を課させてもらうさ』
「ははっ!わかりました。見ててくださいよ、これからの愛咲、いやおれたちを」
『ああ。楽しみにしているよ、才原くん。』
第1関門は突破というところか。
『あとまだ言うことがあったんだが………あ、そうだ!君マスターキーを無理やり取っていったな?やり方もまるで昔のギャングみたいじゃないか』
思いがけない伏兵がいた、いややっぱそんなものはいない。
おれがただやらかしただけだった。
「っやばい、返すの忘れてた…!!!!」
なぜか愛咲と目が合う。
「さすがポンコツね」
「ッッ!!!…………こ、今回は言い返せねえ」
ホテルのカバンの中に入れっぱなしだ。
すぐ返しに行かないと!
『ああ、でも焦る必要はない。どうやって君があの階まできたのか考えてあの後すぐに受付に連絡したんだよ』
「……ということは?」
『そこまで大事にはなっていない。まあ受付嬢がだいぶ自分を責めてしまっていたがね』
「っっ!!!」
それはそうだろう。あんな風に犯罪まがいのことをされて平気なはずがない。きっと周りにもすぐ言い出せずにいたんだ…
それなのにおれは…
『だが、私は君が来てくれて良かったと思っている。だから君を責めるつもりもなければ、君にマスターキーを渡してしまった彼女を解雇するなどありはしないよ』
「…っ、、ありがとうございます!!」
『感謝しているならこれからも頑張ってくれよ?マスターキーは次来るときに返してくれればいい。彼女にも会ったら謝っておくんだな』
「はい。忘れませんよ、つぎは」