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十二話

すいません!


回想まだ終わりませんでした


でも評価ありがとうございます。

 


「い、いや…ちょっと何言ってるかわかんないんですけど…」


 脇腹を抑えながら必死で頭を動かす。

 …執事?しつじってあのしつじだよな?…?


「お兄ちゃんこの人絶対やばいよ!クレープで釣ってどっか連れてくつもりなんだよ!」


 天音がこそこそと話しかけてくるが声が大きすぎて全部筒抜けている。

 てか、さっきの謝れよ…


「そういうつもりではないですよ!…えっと…ほら!これを見てください!」


 そう言って先輩から渡されたのは一枚の名刺のようなものと学生証だった。


「やっぱり高校は三光の2年なんですね…。それでこっちは…なんか凄いこと書いてあるんですけど?」

「桜楽家が、というか私の父がものすごくお金を持ってることはわかりましたよね?私いわゆるお嬢様なんです。」

「「うっそぉ……」」


 思わず天音と引いてしまった。


「そ、そんな引かなくてもいいじゃないですか!?私だって少し気にしてるんですから…」


 どうやらお嬢様はお嬢様でいろいろ悩みがあるようだ。

 一般人のおれにはまったくわからないことだけど、天音は可愛いから通じるとこもあったりしてな。


「すいません…。流石に驚いてしまって…。でも、なんでおれが執事なんて話に?」

「はい!そこが重要ですよね!」


 一息ついて先輩は話し始める。


「お金があると当然それを狙う人がいますから、父だけでなくその娘の私も誘拐されたりするかもしれません。そういうわけで私にはボディーガード兼サポートとして執事、それかメイドがいつも付いているんです。」

「ありえない話じゃないですよね。…もしかして右後ろに座ってるひとがそうだったりします?」

「……!! よくわかりましたね…!一応この方も高い倍率と面接をくぐり抜けて雇われているんですが…」

「ははっ!ほんとにそうなんですね!なんとなく執事なら近くにいるんだろうなーと思って…。2個目のクレープもその人の分ですよね?」

「その通りです。勘もきくみたいで、ますます執事になってもらいたい…。」

「でも、おれ武術とかやってたわけじゃないですし…」


 本気で誘拐犯が襲ってきたら負ける気しかしない…。

 だって刃物とかもしかしたら銃も持ってるかもだろ?一般人じゃなくて警察とかでも厳しいはず…おれにできるはずもないな。

 そんなおれの思考を読んだのか魅力的な提案がだされた。


「家や外出中は問題ありませんが、学校となると話は別です。さすがに執事たちを連れて行けませんから。」

「そういうことですか…。おれなら学校も同じだし、学校内なら先輩目当ての相手も忍び込めない。」

「はい。ですからそこまで大きなことは起こらないはずですよ。ただ、もしかしたら生徒を買収して……なんてこともあるかもしれないので念のためあなたに執事をしてもらいたいんです!執事というよりボディーガードに近いですかね」

「クラスも学年も違うのにおれで役に立ちますか?」

「はい!いるといないとでは大違いなんですよ。実際、今の1年生には1人いますし。」

「え…ほんとですか?」


 本当にそんなことあるんだな…。なんかこの人に会ってから非現実な話しか聞かされてない気が。

 そもそもこの人の存在自体非現実かもだけどさ。


「私が1年生の時は父の申し出を断り続けていたんですけど、今年は私が折れてしまって1人執事が三光にいるんです。でも」


「今日、あなたをみて、自分から初めて執事になってもらいたいと思いました。その勘の良さや頭の回転は些細なことです。」

「じゃあ、何がお眼鏡に叶ったんでしょうか…?」


 その二つですらたまたま運が良かっただけなんだし…。

 もしかしたら顔とか言われたりして、とか1ミリも可能性のないことを考えてみる。

 いや言われたらめっちゃ面白いな。


「心遣いですよ。」

「え?」


 突然の心遣い発言に今日何度目かの戸惑いを覚えた。

 まさかそんかことを言われるとは。

 おれがいつだれにしたっけ?あ、あの男の彼女にたいして?


「店員にしたあの心遣い、素敵でした。あんなに自然に、相手に気づかせることもなくしてあげられる人は見たことがありません。」

「あ、店員に、ですか。でもあれは心遣いっていうかそんなたいそうなものじゃないですよ。おれも気になってしまっただけです。」

「いいえ、素晴らしいことですよ。執事やメイドは様々な技能を身につけていますが、その中でも一朝一夕では身につかないものがあります。それが主人を思いやる心遣いなんです。」


 さっきとは打って変わって真剣な表情の彼女におれの目は奪われた。この目を見れば本気で言っていることが嫌でもわかってしまう。


「もちろん私は自分が主人なんて思ったことは一度もありませんよ。ただ父がお金持ちなだけで私は普通の女子高生なんです。だから上からあの執事はダメだ、あのメイドは私に気遣いが足りない、なんてこの先も永遠に思うことはありえません。」


「でもそんな私でも約17年生きてきて心遣いの素晴らしさを、その人の心の底から溢れ出る優しさの大切さを知りました。」


「私は今日あなたを見て思ったんです。会ったばかりの店員にあんなに自然に心遣いができるなんて、と。そして同時にもしこの人が私の近くにいたなら、私にもその心を向けてくれるんじゃないかとも思いました。」


 それはまるで告白のワンシーンのようで


「私はあなたにもっと近づきたい。あなたの優しさ、ぬくもり、そして心を感じたい。」


 彼女はもう一度、おれに告げた。


「私の執事になってください」





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