一話
毎日頑張ります
「ただいまーって誰もいないか」
今日はおれの通ってる高校が急に短縮授業になったためいつもより2時間ほど早く帰ってきていた。
いつも迎えてくれる妹の天音がいないことに若干の寂しさを感じながらリビングのソファに座ってテレビをつける。
「ん、なんだこれ?」
ソファの前のテーブルに乗ってる(正確には貼ってある)紙を発見した。
《ダイニングテーブルの近くのゴミ箱を漁ってね♪》
どういうことだ??この字は間違いなくおれの母親のだけどこんな頭飛んじゃってる系じゃなかったはず、、、
とりあえず指示に従ってゴミ箱を見るとつぎは
《天音ちゃんのクローゼットを開けてね♪》と書いてある。
「これ付き合うしかないのか、、」
そして15分後
「長えよ!!!高校生の息子になにやらしてんだよ!!!」
次で最後らしいがさすがに長すぎた。これでしょうもなくケーキ買っといてね♪とかだったらまじでキレる。
ともあれ最後はまたリビングだった。
「はいはいDVDまであるんですね……ほんとになんなんだろ」
そう言っておれはテレビをつけDVDを再生すると
「最後までよく探してくれました〜!!!愛しの我が息子!!!今日は天音ちゃんより早く帰ってるから一人で見てくれてるよね??もしそうならそのまま一人で聞いてね!!」
いつもよりテンション高めの母親と父親がツーショットで写っていた。
わざわざ何言いたいんだろ。天音に聞かせられないことなのかな。
「私たち借金しちゃったの!! それも10億円!! どうにもなんないから慎ちゃんに頼ります笑笑! 我が家と天音ちゃんを守ってね!! 1年くらいして借金返せたら連絡してね〜。それまで海外に逃げとくから!! そんじゃまったね〜!!」
「は?」
最後に借金の証明書のようなものが写されて終わった。
「はああああああああああ!!!!????」
借金!? そんなことあるか!? たしかになんか投資がどうのこうのとか言ってたけどそれだけで10億もいくか!!?? なんかキリのいい数だしドッキリとか……いやでもそんなことする親じゃない。天音を任せるって言ってるあたり本当なのか……
「テンション高めだったのもある意味わかるなあ」
そんな風に現実を認める自分がいた。
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あと30分で天音が帰ってくる時間になってしまった。だいたい自分のやるべきことは決めたつもりだが、ここ一週間、いや1ヶ月が勝負所になりそうだ。
流石にもうすこし説明を、と思って親に連絡したところ「1ヶ月くらいしたら借金取りとか来ると思うから返す意思と手段があることだけ示しといて(*^◯^*)」という爆弾発言をされた。高校生にそんな意思も手段もあるか!!!
つまりそいつらが来る前に金を稼がないといけないわけだ。家に帰ってくる時間も惜しんで働くしかない。幸い受かるかはわからないけど働き口は見つけたからあとは全力でアピールしかないな。
「ただいまー!!」
天音が帰ってきたらしい。せめて最後に会っとかないとな。
「おかえり、早かったな」
「お兄ちゃんが早く帰ってるって知ってたからね!! ねえまた昨日のゲームしよ!!」
中学の制服に身を包み、髪はミディアムで少しパーマのかかった可愛い系。子供と思えないような小悪魔さを生み出すぱっちり二重と唇でアイドル顔負けのかわいさである。
こんな可愛い妹が懐いていてくれてお兄ちゃん死ぬほど嬉ちい!!!抱きちめたい!!
いかん、いかん。これから働くことへのプレッシャーで頭がおかしくなってしまった。気を取り直して
「ごめんな! 急に大事な用事が出来ちゃってさ、これから1ヶ月くらい家に帰ってこれなそうなんだ」
「へ??」
天音の目が点になってる……まあそうだよな。おれでもそうなるわ。
「ほんっとごめん。それに母さんたちも海外に長期旅行いっちゃったらしいからその間お前一人だけになる、、」
「なに言ってるの?? お兄ちゃん?? そういう嘘あたし嫌いだよ?? 全然ドッキリにもならないよ?」
「ほんとなんだ。ごめ──「やだっ!!!」
天音がいきなり抱きついてきた。
「おいっ! 天音!!」
「お兄ちゃんと一緒がいい!! 1人なんてやだ!! あたしもついてくっ!!」
「気持ちは嬉しいけど、それはできない。……実はな、学校の友達に頼まれてるんだよ。すっごい大切なことで俺にしかできないんだ。おれはそいつを手伝ってあげたい。だからごめん。1ヶ月だけ我慢してくれ……家に帰らなくても学校には行ってるからさ!! そんなやばい頼みごととかじゃないよ」
やっぱり天音を説得は難しいから嘘をつくことになっちゃったな。でもこうするしかないんだ。
おれは天音の頭をいつものように優しく撫でる。
「それじゃ、行ってくるよ。1ヶ月なんてすぐだからさ。またな。」
そう言っておれは17年間過ごしてきた才原家を出た。
「お兄ちゃんの嘘つき。」
あたしはずっと一緒にいるんだよ? お兄ちゃんの癖なんて知り尽くしてるんだよ? いまのが本当のことじゃないなんてすぐわかるよ。
あたしに、妹に秘密にすることってなんなんだろ。
お兄ちゃんが不安そうなのは本当だった。だったらきっと困ってるんだ。
妹のあたしが助けないと!!
「絶対に連れ戻して、それで1ヶ月間2人で一緒にいちゃいちゃ……えへへぇ」
自分の妹のブラコンさに追い詰められるともしらずに。
「あ、でもまずはお兄ちゃんのベットに入っちゃおっと!!!! むふふふ」
才原天音 15歳。才原慎の妹兼超ブラコンであった。
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