表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/50

008.辺境の少年ロラン(3)不思議な貨幣

 俺が3歳になったころくらいから流通する貨幣が徐々に新しいものに入れ替わっていったのだが、その貨幣には付与魔術が施されているらしかった。

 以前は金貨・銀貨・銅貨と価値によって使用されている材質が違ったが、新しい貨幣は価値によって材質は変わることなく、全て魔晶銀と呼ばれる透明度のある金属が使用されている。その新貨幣は透明度があることから一般に透貨と呼ばれていた。


 貨幣に使用されている魔晶銀からはかなり多量の魔力が内包されているのが感じられ、通常では考えられない性質を宿していた。金属でありながら透けているというのもそのひとつだったが、他にも水に水に浮くなどするのである。最初はアルミニウム製で1円玉のように表面張力で浮いているのではないかと思ったが、1円玉のように軽くはなく、同じ大きさの銀貨と同等の重さにも関わらず浮いたのでそれはないと即考えを改めた。

 しかも新貨幣は水に沈めてみても浮き上がってくるのである。新貨幣に使用されている金属の密度が水よりも低いということなのだろうが、大きさに対する重量的にどう考えてもありえない現象だった。だからこそ俺は付与魔術が施されているのだろうと結論付けるに至っていた。


 その不思議な貨幣が出回り始めてすぐ、珍しい物好きの父は早々とそれを手に入れて俺に手品を披露するようにして水に浮く様子を見せた。父の目論見通りに俺は新貨幣に興味津々となり、俺は父に「パパ、これ頂戴」とせがんで5種ある新貨幣を1枚ずつ譲って貰った。


 魔晶銀製の新貨幣の裏面には円を描くように広げられた二枚翼の上に正面から見た牛の頭蓋骨が配置された図案で、表面には貨幣の価値ごとに別の図案が描かれていた。


 5種ある透貨の価値と形状に表面の図案、それと使用されている魔晶銀の違いは以下のようなものである。


四宝透貨(不透明度60%)

価値:1

形状:正方形

図案:風車

五宝透貨(不透明度50%)

価値:10

形状:正五角形

図案:鳥

六宝透貨(不透明度40%)

価値:100

形状:正六角形

図案:雪の結晶

八宝透貨(不透明度20%)

価値:1000

形状:正八角形

図案:花

万宝透貨(不透明度10%)

価値:10000

形状:真円

図案:三日月


 価値が上がるほどに感じられる魔力量が多かった。透貨各種を並べていてもしかしたら七宝透貨というものもあったが製造が面倒で流通させるのを取り止めにしたんじゃないかと思えた。

 なんにしても付与魔術を施された現物を目にして、ようやく調整中だったものが実装されたのだと確信した。あとはこれらを解析して他にもどういった付与効果があるのかを調べて俺自身にも使用可能か確かめるばかりである。

 それから俺は毎日のように透貨流通前に使用されていた銀貨を用いて透貨に付与されている付与魔術を再現しようと試みていたが、一向に成果を上げることが出来なかった。

 おそらく設定されている初期消費MPや魔力比率が間違っているのだろうが、それがわからず難儀していた。透貨に付与されたものから魔力比率を判別することが出来ればいいのかもしれないが、元の魔力が単一であり魔力比率の判別は到底無理だった。

 それから俺は毎日毎日ちまちまと【属性効果】と【魔術効果】の魔力比率を属性魔術が成立しないように調整しながら変えて総当たりしていったが一切成果は得られなかった。


 初期消費MPだけでもわかればもう少しマシになりそうではあるが、それ以前に付与する素材がよくない可能性も考えられる。付与が成功いたとしても素材のHPが高くなければ付与魔術を連続発動出来ずに効果が消失してしまう。だが付与魔術用の素材を手に入れようと魔獣狩りに行くことは3歳児の俺には難しかった。


 他に失敗の原因で考えられる可能性として効果付与時に追加消費MPが必要な可能性もあり、ただでさえ魔力比率条件を満たしていないために付与魔術が不発なのかどうかさえわからない俺は完全に手詰まりに陥っていた。


 神様は属性魔術に使用されている既存の魔術要素だけで付与魔術を構築すると言っていたが、俺が転生した後に新たな魔術要素追加等の変更がなかったとも言い切れなかったので困ったものだった。

 これはいっそ造幣所に行き、貨幣を製造している幻獣に直接会って確かめた方が早いかもしれない。そう考えた俺は、付与魔術の研究を一時保留にして文字の読み書きなどを母から教わりながら覚えるのに時間を費やすことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ&最新話下部の評価欄などでぽちぽちっと応援していただけるとうれしいです。


小説家になろう 勝手にランキング
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ