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007.辺境の少年ロラン(2)修復魔術実験

 毎日のように両親に隠れて魔術を行使していてわかったが、HPはMP同様に小数点第1位まで設定されていて小数点第2位以下の数値はあるもののステータスとしては完全に無視されていた。

 それがわかって以降、俺は地道にステータスを上げてMPが14万を超えたところで、HP・MPを増やすのを一旦止めた。MPを全消費しようにも発動に20時間近くかかるような状態になっていて、MPを増やすのが難しくなっていた。魔力比率が魔術発動条件を満たしていなくても魔力だけは消費され、消費MP相当の発動時間いっぱい待たなければならず、その間別の魔術も発動出来ないという状態に陥るので困ったものだった。転移者や神の使徒たちに対応出来るかは微妙なところだが、ステータスを上げるのを効率化しただけの中身のない魔術を連続して使い続けても時間の浪費が激しいばかりなのである。それならその時間を使って魔術の研究を進めた方が有益だと判断した。


 魔術の研究をしようと決定した俺は、まず始めに損傷修復に関して調べることにした。

 これだけ他と比べて明らかに必要なMPが多く、この世界で扱える者はほぼ皆無なのではないかとさえ思えた。加えて俺の前世でのことを考えると治癒とは違う修復の魔術というのが一体どの程度の効力を発揮するのか気になったというのもあった。

 それに土壇場になって初めて修復魔術使用して想定通りの効果が発揮されなかったりしたら目も当てられない。

 そういった理由から俺は修復魔術を早速試してみた。魔術の対象には落として割った陶器製のカップを使った。


【リカバー】

消費MP:4196+追加420

魔力比率:土水70%・加速30%

発動時間:2098.0s

持続時間:420.0s

射程距離:13637.0m

発動領域:3409.25m

魔術規模:105.0m


 魔術規模が大き過ぎて家周辺の一帯を完全に効果範囲内に収めてしまっているが大丈夫だろうか不安もある。普段のMPを消費をするだけの魔術は発動発動起点ぎりぎりの上空に発動させて空に向かって即射程外に飛ばして消失させているので両親には気付かれてはいないが、今回は修復魔術の効果を調べるためなのでそういうわけにもいかない。ただ害を及ぼす魔術ではないので問題ないだろうと今は気にしないことにして術後経過を見守る。

 無駄に多い消費MPのせいで発動に30分以上かかってしまうので治癒魔術としてまともに使えるとは到底思えない。魔力比率が魔術にとって一番大事な要素である魔術法則もあり、【特殊効果】の『短縮』を組み込めないのも考えものだった。


 そうして40分以上待ち続け、目にした結果は残念極まりないものだった。カップは【リカバー】使用以前から一切姿を変えていなかった。

 【魔術効果】の『加速』による完了時間の減少が機能しなかったのかもしれないと消費MPの量を増やして術の持続時間を600秒にしてきっちりMP1を600秒間追加消費し続けたが結果は同じだった。

 なにか魔術法則に関して見落としがあったのかとステータスウインドウからヘルプ画面を開いて調べ直す。すると【合成属性効果】の項目に魔術阻害効果との記載があった。

 その記載と効果が現れない魔術対象とを見て、修復出来るのは魔術によって損傷したものだけなのではないかと考え至った。


 その考えを確かめるようにカップの破片のひとつを魔術で破壊して再度【リカバー】を使用した。すると散らばった破片の中で俺が魔術で破壊したものがあった辺りだけが元に戻った。


 そこからさらに数日をかけ研究を進めて【リカバー】の初期消費魔力をかなり抑えることに成功した。

 その結果が完成したのが──


【リカバー】

消費MP:6+追加420

魔力比率:土水70%・加速30%

発動時間:3.0s

持続時間:1.0s

射程距離:19.5m

発動領域:4.875m

魔術規模:0.25m


 追加消費MPの記述に関して少し気になることがあり、1秒間に消費するMPの数値を増やしてみたら術の完了時間が大幅に減ったのである。ヘルプに記載されていたのは、あくまでも1秒間の追加消費MP1だった場合の完了時間が600秒というだけだったのである。その後、魔力濃度などが完了速度などに影響を及ぼすかなどを調べたが、そちらは特に結果に変化はなかった。ただ色々と試している過程の中で魔術によって破損した修復対象が修復される際に、魔術以外の外因で破損した物体が巻き込まれるようにして修復されたことがあった。

 同一の現象を何度か再現した結果、修復対象に密着した状態で魔術の効果範囲内にあった場合に一緒に修復されることがわかった。

 これなら魔術的な外傷でなくとも治癒出来る。あとは病魔や毒に対してこの魔術が効果を発揮するかどうかわかればいいのだけれど、こればかりは両親以外の他人と会う機会の少ない2歳児の俺には実験のしようがなかった。


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