003.ルール説明(1)魔術法則
「そんじゃ、少年を転生させる予定の世界に関する情報を説明させてもらうぞ。詳細に関しては転生後も確認出来るよう手配しておく。ということで、その確認も兼ねる作業としてまずは頭の中で『ステータスオープン』と念じてくれるかい?」
俺は言われるままに『ステータスオープン』と念じると眼前に縦15㎝横20㎝くらいの半透明のウィンドウが宙空に出現した。
霧津 滝哉
HP:4/4
MP:0/0
と3つの項目だけが表示され、ウィンドウの左上の方に歯車ようなマークが描かれていた。
「とりあえずステータスらしきウィンドウを開けましたが、俺の名前とHP・MPの項目だけですね。これで全てですか?」
「あたしがいじれるのは魔術に関することまでだからね。一応あたしなりにゲームっぽさを出したつもりだよ。ただ下手に項目を増やして造り込むと異能で介入される余地が多くなってしまうからね。ある程度制限してるのさ。それに重要なのはステータスではなく、これから少年が転生することになる世界の魔術法則の方さ。それを知っていなければ相手が異能を行使しているのかどうかの判別が難しいだろうからね。要するにこれから説明する法則を外れた能力を使った人間が十中八九、転移者だと断定して間違いない」
「ステータスはあくまでも異世界を巻き込んだゲームをしている奴らを誘い出すための要素なんですね」
「そういうことさね。とりあえず左上に表示されてる歯車印に触れてくれるかい」
彼女の指示に応じて歯車印に触れてみるとステータス表示が消えて代わりにヘルプ画面のようなものに切り替わり、複数の項目がずらりと縦に並ぶ。それなりの長さがあるのか右側にスクロールバーが現れる。俺はスクロールバーをちまちまと動かして各項目に目を通していった。
【魔術耐久】
HP:魔術に無傷で耐えられる限界値(0になっても死亡するわけではない)
初期数値:最大内在魔力×10(幻獣・魔獣以外の全生物は初期値4)
特殊減少条件:魔力0.0時50%↓
HP回復間隔:減少値の125%/日 0時更新(死亡時更新不可)
HP上昇条件:討伐対象に与えたHP減少値の125%討伐直後に加算
【内在魔力】
MP:魔術行使時に消費される数値
魔力回復:5%/h
【魔力比率】
魔術を構築する要素に振り分ける魔力の比率
【魔術要素】
属性効果・合成属性効果・魔術効果・特殊効果の4項目
【発動条件】
必須比率:属性効果40%・魔術効果20%
必須環境:別種魔術の発動領域外
【属性効果】最低必要魔力比率40%
魔術補助効果
火:魔術威力50%↑
風:発動領域100%↑
水:発動速度40%↑
土:物理干渉・消費MP×0.5%↑
【合成属性効果】最低必要魔力比率70%
魔術阻害効果
火+風:魔力攪拌・消費MP×魔力濃度5%↓(最大50%)
火+水:反応促進・消費MP×持続時間5%↓
火+土:速度干渉・消費MP×移動速度1%↓
風+水:空間固定・消費MP×物理干渉10%↓
風+土:効果減少・消費MP×魔術効果2%↓
土+水:損傷修復・追加消費MP1/s・完了時間600s
【魔術効果】最低必要魔力比率10%・LV補正あり
LV上昇:分配魔力比率10%毎に1↑・最大6
下記はLV1時点の効果・上昇倍率はLV等倍
収束:魔力濃度50%↑
射程距離100%↑
停滞:物理干渉0.5%↑
持続時間50%↑
拡散:魔力濃度10%↓
魔術規模50%↑
加速:移動速度50%↑
完了時間10%↓
【特殊効果】最低必要魔力比率20%・LV補正なし
増幅:魔術効果100%↑
短縮:発動時間40%↓
操作:遠隔操作・追加消費MP1/s
変化:形状変化・追加消費MP2/s(基本形状は球体)
追尾:自動追尾・追加消費MP3/s
待機:発動遅延・追加消費MP×1.0s
【初期数値】
魔術威力:魔力濃度×消費MP×1.0(HPを減少させる数値・魔力濃度初期値:1.0)
物理干渉:0.0%
発動時間:消費MP×0.5s
持続時間:消費MP×0.1s+0.4s
移動方向:発動基点から26方向を任意に選択
移動速度:消費MP×7.5m/s(移動方向未指定の場合0.0m/s)
射程距離:消費MP×3.25m(射程外に出ると魔術消失)
発動領域:射程距離/4(魔術発動基点設置可能領域)
魔術規模:直径0.1m+消費MP×0.025mの球形
【物理干渉】HPを無視して肉体に与える被害
魔術耐久なし:消費MP×1につき肉体損傷率5%
魔術耐久あり:物理干渉数値=肉体損傷率
肉体損傷率は累積しない
損傷率による外傷度合
025%:打撲・創傷・熱傷深度Ⅰ度
050%:骨折・切創・熱傷深度Ⅱ度
075%:裂傷・熱傷深度Ⅱ度
100%:割創・熱傷深度Ⅲ度
【使用単位】
h:時間
s:秒
m:メートル
m/s:メートル毎秒
「単位は少年に馴染みのあるものを使用したが概ね理解してもらえたかね?」
実際に使ってみれば違うのかもしれないが、各項目を参照してもどうにも目が滑ってイメージがし難い。
「使用例などがあれば少しは理解出来るとは思うんですが」
「ちょいと待ちなっと」
なにやら彼女が手元で操作すると新たに項目が出現した。
【魔術用例】
【ファイヤーボール】消費MP1
魔力比率:火40%・収束10%・停滞10%・拡散10%加速・10%・増幅20%
魔術威力:2.7
物理干渉:1%
発動時間:0.5s
持続時間:1.0s
移動速度:15m/s
射程距離:9.75m
発動起点:2.44m
魔術規模:0.25m
「MP1でも使えるんですね。小数点第1位の値まではMPを振り分け可能ってことですか」
「HPの項目でわかると思うが、MPの初期値は0.4だ。本当は4で設定してたんだが魔術用例として出している最も基礎的な魔術であるファイヤーボールを使用するのにMP10必要で1の位は飾りみたいなもんだから位をひとつずらしたのさ」
「なんでわざわざそんなことを」
「魔術を使える人間を限定するためさね。日常的に魔術に触れる機会のある人間か、魔獣・幻獣との戦闘経験で魔術的な攻撃を受けた者だけがMPを上昇するようにしたのもそのためさ。MPの表記が0なら端から魔術を使おうなんて思えないだろうからね。ま、魔術を使う上で大事なのはMPの比率だからな。MPがあっても使えないやつは使えないがね」
「その言い方だとこの詳細に関しては、知られてないということですか」
「そうさね。少年だけに限定公開してる情報になる。だから転生後はなるべく伏せてくれると助かるね」
俺の目的を考えるとこれを流布するのは悪手だろう。
「わかりました。それで一点質問があるのですが」
と切り出して俺は次の質問を投げかけた。