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027.若きふたりの探求者(4)狩猟組合

 最寄りの町までどうにか日没前に到着した俺たちは、暗くなる前に宿を探して2人部屋を八宝透貨4枚で確保した。

 残る路銀は万宝透貨3枚と細かい透貨が数枚ずつと心許なかった俺たちは、道中で討伐した魔獣から得た素材を詰めた袋を手に狩猟組合ハンターギルドを訪れた。


 終業間近という時間帯もあってか、建物内のひとは疎らでがらんとしている。俺たちは真っ直ぐに受付に向かう。すると書類を束ねて片付けを進めていた女性は、もう帰れると思っていた所に余計な仕事が増えたからか煩わしそうにこちらに視線を投げかけてぶっきら棒に問う。


「なにか?」

「素材の買取をお願いしたいのですが」

「では、ギルドカードの提示を」


 ちらりとメルさんを見る。当然ながら彼女も持っているはずもなく、首を横に振った。


「すいません、俺たち狩猟組合ハンターギルドもない田舎から出て来たばかりでして」


 受付の女性は、うんざりだとばかりに露骨なため息を吐く。それから2枚の用紙を俺たちに手渡して来た。


「とりあえず名前と出身地、あとわかるなら生年月日を御記入願えますか。文字が書けないようでしたらこちらで代筆しますが」

「大丈夫です」

「それでは御記入されている間に査定してしますので、持ち込まれる素材を出していただけますか」


 俺はメルさんに用紙を1枚手渡してから素材の詰まった袋を受付の女性に渡す。女性は中身を軽く確かめて一瞬眉根を寄せると建物の奥に引っ込む。俺たちは雑に布が巻かれた細い木炭で必要事項を記入して待っていたが、なかなか受付の女性は戻ってこない。ようやく戻って来たかと思ったら別の職員さんも一緒だった。


「先程の素材を持ち込まれたのはあなた方でよろしいですか?」

「えぇ、はい。その、貴方は?」

「すいません。ご紹介遅れました。私は当組合の査定を担当しておりますノーマンと申します。それでお尋ねしたいのですが、あの素材はどちらのどういったモノから採取されたので?」

「この町から東に徒歩で半日程行ったところにある村からここまで続く街道の途中で出くわした狼のような火を吹く魔獣からですね」

「やはり火吹狼の魔石でしたか」


 聞き慣れない単語を反芻するようにして聞き返す。


「魔石?」

「魔獣の体内で生成される魔法の力を宿した鉱石のことですよ」

「いかほどで買い取っていただけるのでしょうか」

「あれだけの大きさの魔石はなかなか持ち込まれることがありませんからね。ひとつにつき万宝透貨20枚でどうでしょうか?」


 魔石の保有MP1毎に万宝透貨10枚と行ったところなのだろうか?


 俺には相場がわからないのでメルさんに目を向けると彼女はこくりと頷く。どうやら問題はないらしい。


「では、それでお願いします」

「わかりました。それともうひとつ質問させていただきたいのですが、よろしいですか?」

「はい」

「火吹狼の群はおふたりで狩られたので?」


 正直に応えたものか迷ったが、魔石を持ち込んだ以上は下手に誤魔化す訳にもいかないだろうと質問を肯定する。


「ですね」

「わかりました。では、おふたりのランクは星3つで登録させていただきますね。ギルドカードを用意してまいりますのでもう少々お待ちください」


 待っている間に受付の女性から聞いた説明によると狩猟組合ハンターギルドのランクは星なしから星6までの7段階あるそうで、魔石持ちの魔獣を討伐した実績があると最低でも星3にランク付けされるとのことだった。


 諸手続きを全て片付けてギルドカードを受け取り、狩猟組合ハンターギルドから出たときにはもうすっかり日が暮れていた。


 受け取ったギルドカードには表に車輪とライオンの頭部が彫り込まれ、車輪の周囲に3つ星が正三角形を描くように配置されている。ひっくり返して裏面を見ると四隅にトランペットに似た楽器の文様があり、中央には俺の名前が大きく刻まれていた。


「それ、表がブエル様を表していて。裏がバルバトス様を表してるらしいよ」

「ここにも精霊様が絡んでるんですね」

「大抵の文化の根幹には大体精霊様が関わってるらしいからね」


 それを聞いてギルドカードに透貨と同じように付与魔術が施されていないかと軽く曲げたり指で弾いたりしてみたが特に変わった反応もなく、魔力も感じられなかった。


「にしても思った以上に路銀を増やせましたね。これだけあれば目的地まで稼ぐ必要はなさそうです。明日は朝から乗合馬車を探しましょう。魔獣と遭遇して戦闘することになっても俺たちだけで対処する必要はないでしょうし」

「その場合、やっぱり魔法のことは」

「伏せておいた方がいいでしょうね。俺たちふたりとも魔創痕シジルないですから」

「でも使わざるを得ない状況のことも想定しておいた方がいいんじゃないかな」

「じゃあ、昔メルさんがやってたように手袋で左手の甲を隠すくらいはしときましょうか」

「まぁ、それしかないよね」


 と言ったメルさんの表情が若干曇る。随分と前に魔創痕シジルや家族とのことは割り切ったとはいっても思うところはあるのかも知れない。

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