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010.辺境の少年ロラン(5)新たな発見

 帰宅した俺はメルクルーリアとのことを母から耳にした父に茶化され「そんなんじゃないよ」なんてむきになったように装って否定するなどして夕食の一幕を飾り、一家の団欒を盛り上げた。


 早めの就寝を告げて自室に戻った俺は本日の成果を省みる。まず人目に付かないだろうと訓練場として使った村外れの雑木林奥にあった空き地は、初日に魔術を使っているところを目撃されるという失態を演じてしまい困ったことになった。


 目撃される以前に使用した【ホバーボード】の魔術もひどい出来だった。現状では改善の余地もなく、あれは使い物にならない。そもそもこの世界の魔術は救済措置である修復魔術以外MPを3桁消費することを想定していない調整をされているとしか思えない。実際にはMPの桁をひとつ下げられているので4桁消費しているようなものなので当然といえば当然の結果なのかもしれない。

 速度や発動時間に関してはまだましだと言えるが、消費MPを増加させて一番困るのは魔術規模である。ひっそりと魔術の訓練をするにも目立って仕方がなかった。


 消費MPを抑えれば済む話かも知れないが、持続時間が短過ぎて応用が利かないのである。最大まで延長するとして【魔術効果】の『停滞』LV4に【特殊効果】の『増幅』を組み合わせたとして消費MP100で52.0sまでは延ばせるが、ただ維持出来るだけで直径2.6mの球体を真っ直ぐ飛ばすか特定位置に静止させておくことしか出来ない始末なのである。それを補うために消費MPを増加させれば【ホバーボード】を『操作』してみた感じからして制御の難易度が大幅に上昇してしまうだろう。制御出来るようになればいいのだろうが、今の環境では精密操作に慣れる訓練をするのも困難だった。


 もういっそのこと魔術規模だけでも縮小出来ないかと考えた俺は、自身の魔術に対して魔術阻害効果を用いて弱体化させてみることにした。


 そう考えて構築した魔術を発動する。


【ダウンサイジング】

消費MP: 100+追加90

魔力比率:風土(効果減少)70%・停滞30%

対象魔術:拡散20%使用魔術

発動時間:50.0s

持続時間:26.0s

射程距離:325m

発動領域:81.25m

魔術規模:2.6m


 次に弱体化させる魔術として試しに【ホバーボード】を改変して消費MPを抑えて【ダウンサイジング】が効果を発揮した直後に発動するようタイミングを合わせる。


【ホバーボード】改変

消費MP:25+追加3/s

魔力比率:土40%・拡散20%・操作20%・変化20%

魔術威力:25

物理干渉:12.5%

発動時間:12.5s

持続時間:2.9s

射程距離:81.25m

発動領域:20.3125m

魔術規模:1.45m


 魔力濃度がマイナス値になって発動しないなんてことにはならないだろうと魔術規模を基準に【ダウンサイジング】の追加消費MPを調整する。魔術阻害効果の魔力攪拌に記載された内容から別の魔術に干渉することで下げられる魔力濃度の限界値は50%だろうと踏んでの判断だった。

 結果、発動した改変【ホバーボード】は両手に収まる程度に縮小していた。実験は成功である。その後、魔力濃度の方はどうだったのかと何度か検証して今回使用した【ダウンサイジング】の効果量は以下のようになっていることがわかった。


発動効果:魔術規模90.0%↓・魔力濃度160%↑


 魔術規模が縮小された分、魔力濃度が上がっていたらしい。魔術阻害効果だからといって必ずしも効果量が減少されるわけではなく、相手が『拡散』を組み込んだ魔術を放ってきた場合に【ダウンサイジング】を使用すると魔術威力を底上げしてしまうことになりかねないらしい。それなら他の【魔術効果】をマイナス値にまで減少させた場合にデメリットが生じるケースはあるのだろうかと一通り試していった。


 魔力濃度は想像通りに50%以下にはならず。魔術規模と射程距離はなんのこともなく普通に不発に終わった。移動速度は逆向きに加速することになり、相手に魔術を反射させることが可能なようだった。

 完了時間は修復魔術に必要な時間が延長されただけで相手の治癒を妨害するくらいにしか使い道を思い浮かばなかった。

 物理干渉は0%で打ち止めされ、魔術が不発になるということはなかった。


 ここまではある程度想像通りの結果だったけれど、持続時間に関してだけは想定していなかった現象が起こった。

 想像では持続時間がマイナスとなったとこで魔術は不発になると思っていたのだが、難なく発動した。そこまでは可能性がなくもなかったので驚くほどではなかったのだけれど、その後いつ持続時間が尽きて消失するのだろうかと観察していたが一向に消える気配はなかった。

 再検証として追加で同様の魔術を再現したが、それらも全て消失することはなかった。さらに『操作』と『変化』をいくつもの消失しない魔術に組み込んでいたのでかなりの勢いでMPが消費され、MPが0.0になって魔術を維持出来なくなっても俺が魔術で発生させたものが消えることはなかった。

 ただ魔術の接続が断たれたのかMPが回復しても『操作』と『変化』に追加で持っていかれることはなかった。

 どうやら持続時間がマイナス値になったことで魔術は(過去)からこの世界に存在し続けていた物体という位置付けになったのか、時間を巻き戻しでもしなければ消失しなくなってしまったらしい。


 予想外の結果だったが、この現象の発見によって持続時間を気にする必要がなくなったのはかなり大きかった。

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