表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
3/19

おっさん見栄をはる

 おっさんは若者の前で恰好をつけたがる。まだまだ若い奴には負けない、俺だってこれ位出来るんだぞって……そして後から後悔するのだ。


「なにが二時間位で着きますよだ!?もう三時間は歩いてるぞ」

 あのままコーリン村にいたら、ケインさんやマリーさんを巻き込んでしまう。そこで見栄っ張りなおじさんは単独で王都を目指す事にしたのだ。

 ケインさんの話では二時間位歩けば王都に着くとの事。しかも道は真っ直。

 しかし、村を出て三時間経つが、王都のおの字も見えない。

 ケインさんと俺の違い。

 まず足の長さが決定的に違う。向こうはモデルでも出来そうな位に足が長いが、俺は純日本人体型だ。短足までいかないが決して長くはない。

 そして現役戦士とおっさんサラリーマンじゃ体力が違うから、当然歩く速度も違う。

 なにより俺はまたゴブリンが出たらどうしようと、おっかなびっくり歩いているのだ。

 ……あの後、魔法を唱えていたら、何も出なかったし。神使様、俺の加護は一回で終わりなのでしょうか?

 ゴブリンが持っていた棍棒は重い上に、血がこびりついていたのでケインさんに譲ってきた。その代わり銀貨を三枚もらいました。銀貨一枚で安い宿屋なら一週間位泊まれるらしい。

 なんとか王国に気付かれずに、日本人と接触しなくては……待てよ、どうやって王都に入れば良いんだ?

 俺が持っている物で、身分を証明できるのは免許証しかない。でも、異世界で身分証明書になる筈がない。何より一発で日本人だとばれてしまう。

 旅の商人だと嘘をつく……スーツを着てネクタイを締めた商人。どこからどう見ても、怪しさ満点だ。

 それでも頑張って歩いていると、道幅が広くなり人通りも増えてきた。ファンタジーの定番馬車もいて、若干テンションが上がる。

 そして人が増えると、俺の不審者度もアップ。すれ違う人が皆俺の事を、物珍しそうに見ている。

視線を無視しながら、歩いていると向こう側から大型の馬車がやって来るのが見えた。爆走と言う言葉がピッタリな勢いである。

ぶつかったら大変なので脇に避難してやり過ごそうとしたら、俺の真横で停止。


「二ホンの方ですよね?いやー、探しましたよ。さあ、馬車に乗って下さい」

 声を掛けた来たのはいかつい騎士。言葉遣いこそ丁寧だが、有無を言わせぬ威圧感がある。


「よ、良く俺が日本人だと分かりましたね」

 あれだけ人目を集めていれば、流石に分かるか。


「魔法陣に魔力波動が残っていましたので……色々(……)とお聞きしたい事があるので、我々と一緒に来て頂けますか?」

 素直に乗りますので、剣の柄から手を離して下さい。


 馬車に乗ると同時に窓が閉じられた。

 どうやら、俺はイレギュラーな存在らしい。騎士の話では、今回行ったのは召喚ではなく異世界転移だそうだ。

転移は無事終わったが、魔法陣に残された魔力波動が一人分多い。宮廷魔術師が探索したら、コーリン村の方から移動して来ているのが分かったので、保護しに来たそうだ。

 どう見ても今の扱いは、保護というより拉致だと思うんですが。


「それでこれから、どうすれば良いんですか?」

 下手に逆らうより、しばらくは指示に従った方が得策だと思う。


「他の方々と一緒に王に謁見して頂きます。その後、国の貴族や商人と交流を深めて頂く事になっています」

 交流と書いて実力誇示と読むのだろう。今うちには異世界人がいるんだぞと。


「私は戦闘経験がないので、お役に立たないと思いますが大丈夫ですか?」

 俺は自分の意思で、この世界に来たんじゃない。命懸けの戦いなんてまっぴらごめんだ。

 しかし、働からざる者食うべからずだ。転移にはかなりの金が掛かっていると思う……どこまでこっちの意思を尊重してもらえるか見極めなければいけない。


「ご安心下さい。皆様の才能・能力に合わせた訓練を行います。教師陣は我が国一流の人材を取り揃えておりますよ」

 これだけお膳立てしてもらって、結果を出せなきゃどうなるんだろう?見せしめに強い魔族と戦わされるとかないよね。


 ……俺、このまま消されたりしないよね。馬車が停まったと思ったら、細長い布を手渡された。


「すみませんが、その布で目を覆って頂けますか?」

 ……傍から見たら処刑される人ですよ。

 お約束展開なら、布を受けて取る振りをして騎士をノックアウト。そして脱出を図るんだろう。しかし騎士かれにも家族がいると思う。

 だからノックアウトするのは妄想でとどめておく。

(ふっ、命拾いしたな。俺は格闘技漫画が好きで良く見ているんだぞ)

 ノックアウトする妄想ならバッチリだ。

その後、手引きされた騎士の手の厚さにビビり、妄想で終わっておいて良かったと胸をなで下ろしました。


 目隠したまま、連れて来られた部屋には何故か良く知っている奴がいました。


「光牙君!なんで、ここにいるんですか?」

 部屋にいたのは、スーツを着たイケメン。昨日あったばかりの友人石動重吾である。

重吾の他にも、数人の日本人がいた。一人はスーツを着ていたが、他の人は制服だ。

(あれは重吾が勤めている学校の制服だよな……ってことは、重吾の教え子か)

 異世界転移+女子高生……これはもしかして、もしかするのでは。ここは異世界だ。日本の法律は適用されない。女子高生とのロマンスがあるのでは。


「昨日お前が言っていた家の前を通ったら、光に包まれて気が付いたら森の中にいたんだよ」

 法律は適用されないが、うるさい保護者じゅうごがいるか……そして男女比は大体半々。お約束でイケメン、美少女が多い。つまり俺にはチャンスがないって事だ。ロマンスは、秒で諦めました。


「相変わらず、巻き込まれ体質ですね……いいえ、巻き込んで、しまってすいません。フィル、彼を日本に戻せますか?」

 重吾の話によると、クラスにやって来た留学生フィル・フネ―トルさんが、異世界人だったそうだ。彼女は才能ある学生をスカウトし、異世界エスフェルドに連れて来たらしい。

やっぱり、俺が選ばれし者じゃないのね。異世界もイケメン優遇かよっ!


「すいませんが、それは出来ないんです。そちらの方が、異世界転移に巻き込まれた理由が分かりませんし……今回の転移魔法は分からない事だらけですので」

 答えたのは銀髪の美少女。どこか影がある感じがグットです。

 なんでも転移魔法は移動する人数に対して魔力が足らず、失敗しかけていたそうだ。

 でも、突然どこからか魔力が加わり転移が成功したらしい。

 これは俺に規格外の魔力が眠っているパターンなのではないか?


「とりあえず、王様に謁見だよな……えーと、フネ―トルさんですよね。謁見時の作法や不敬に当たる事を教えて頂けませんか?」

 冒険に出る前に不敬罪により、死刑なんてださすぎる。

 プレローでは王様は神の代理人となるそうだ。

本来は王様の姿を見るのは禁止。直答もアウト。頭を垂れて、じっとお言葉を聞くのがルールらしい。

しかし、今回はプレロー王国が日本人をよんだ。だから特別に直答が許されるらしい……許されてもしないけどね。どう考えても罠だ。後から、あの言葉は不敬に当たるとか難癖をつけるつもりなんだろう。


「そんなの当たり前だろ!わざわざ俺達が来てやったんだからよ。それよりいつまで待たせるんだ?」

 騒ぎ出したのは髪を金色に染めた少年。制服をだらしなく着ており、DQNってやつだ。


「龍児君、静かして下さいっ!」

 そしてそれを叱る重吾。昭和の学園ドラマみたいだ。重吾もあんな餓鬼放って置けば良いのに……骨の髄まで先生なんだから。


「石動先生よぉ。叱ってばかりじゃ、生徒の成長に悪影響を及ぼすぜ」

 昭和の学園ドラマから平成の学園ドラマにチェンジ。チャラい青年が重吾を止めたのだ。しかし、あいつ高そうなスーツ着てるな。


「元屋先生、何があるか分からないんですよ。慎重に行動させないと」

 うまい言い方だ。王国サイドの心証を害さないと思う。


「俺は生徒の自主性を尊重したいだけさ。先公なら、もっと生徒を信じてあげようぜ?」

 元屋の言葉に賛同する生徒達。甘い言葉で人気取りか。これでは重吾の立つ瀬がない……助け舟を出してやるか。


「元屋先生でしたよね。自主性って言えば聞こえは良いんですけど、貴方は、その結果に責任を取れるんですか?ここは日本じゃなくて、俺達の知らない世界のお城です。いくら呼ばれた立場でも節度は守らないとまずいんじゃないですか?貴方方、教師は生徒を守る立場なんですし……それと同じ様に騎士の方々は、王様の面子を守る責務があるんですよ」

 あまり無礼が過ぎれば、こっちの命を奪いにくると思う。それこそ死刑覚悟で……。

 元屋先生は反論出来ずに辛そうにしているが、俺も生徒特に女子生徒から白い目で見られて辛いです。


明日七時に更新します

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ