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黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
18/19

もしかして?

 キラーベア、名前だけでも強敵感が溢れている。絶対にデビューしたての冒険者が戦っていい魔物ではない。熊なら木に登れば逃げれる筈。

 念の為、キラーベアと念じて鑑定をしてみる。

 そうしたら、どこでもナビと同じディスプレイが空中に現れた。


キラーベア タイプ:魔獣

 体長4m~6m 森の支配者とも呼ばれる魔獣。攻撃力が高く、動きも素早い。また木登りが得意なうえ、大概の木ならへし折る事が可能。爪は鋭く鉄の鎧位なら簡単に切り裂く。キラーベアは強力な魔獣であるが、毛皮、爪、肉共に高値で取り引きされている。特に肉は美味で貴族にも愛好家が多い。

 キラーベアは間接的にトムさんを食べているんですが……素材全てが高値で取り引きされているのなら、キラーベアを狙う冒険者は一定数いる筈。


「だから、キーユさんに懸賞金を掛けてもらって、第三者にキラーベアを倒してもらおうと思うんだ」

 昨晩の経緯をみんなに話し、人形を取り戻す算段を伝える。

 高級ホテルを経営しているキーユさんなら、それなりの報奨金を出せる筈。


「どうやって、その冒険者に目的のキラーベアを見つけてもらうんですか?光牙さんが同行するのは、得策とは思えませんよ」

 重吾が深い溜め息交じりに突っ込んできた。キラーベアは生きている。つまり、森の中を動き回っているのだ。画面を見せて、このキラーベアですって言っても現場に着いた頃には、違う所に移動していると思う。


「キラーベアさんってー、美味しいんですよねー?それなら、なんとかなるかもしれませんよ」

 陽向さんは柔らかな笑顔を浮かべたと思ったら、物騒な事を言う……料理人の陽向さんだから、何がしからの算段があるんだと思う。


「残りはアンデッド対策か。露店で売っていた憑りつきを防ぐアクセサリーを買っておくか」

 鑑定スキルを使えば、本当に効果があるかが分かる。あのてんとう虫バッチを重吾に着けさせたら、面白いし。

 キーユさんに昨晩の経緯を伝え、露店へ移動。驚いた事に全部本物だった。


 てんとう虫バッチ タイプ:アクセサリー

 てんとう虫を模した可愛らしいバッチ。属性は光で、ゴーストの憑りつきを防ぐ。貴方との相性は最高です。

 てんとう虫は太陽に向かって飛んで行く。だから光属性なのか。そして、俺は光属性だから相性もばっちりと……バッチを外せば、自動修復でスーツの傷も治りますしね。他の三人は銀のアクセサリーを購入。全部で銀貨一枚でした。

 虚ろ石を手に入れられないと、無一文になっちまうぞ。


帰らずの森はディーフェの町から、徒歩五分の所にあるそうだ。そしてこの世界の貴族は本気で暇なんだと分かった。


「ほう、不思議な恰好した人達ですね。二時間持つでしょうか?」

 町と森を隔てる塀の上から俺達に視線が注がれる。高そうな服を着た貴族の男性達が俺達を値踏みしているのだ。

 不思議な恰好……重吾は鈍色の軽鎧に騎士の剣、ファンタジーな世界では、違和感がないと思う。

 陽向さんは三角頭巾に黄色いエプロン。明るく柔らかな色が陽向さんに似合っている……でも、どう見ても、これからお料理をする少女にしか見えない。日本でなら違和感がないと思う。

 薬師君は白衣を着ており、右手に絵筆、左手にはパレットを持っている。日本で見ても違和感があると思う。

 俺に至ってはスーツに通勤カバンという、サラリーマンスタイルだ。異世界だと浮きまくりです。


「彼等の動きは素人その物です。三十分で逃げ帰ってくるのがオチですよ。私は、三十分に金貨一枚賭けます」

 そう、お貴族様は、この冒険者、帰らずの森にどれ位いられるかゲームで賭けをしていたのだ。朝っぱらからワインを飲んで女をはべらせて……羨まし過ぎるっ!

 貴族の視線が届かなくなったのを確認して、どこでもナビを起動……マジですか?


「この青い点はアンデッドですか。それにしても凄い数ですね」

 重吾の言う通り、キラーベアの周囲にはアンデッドが何体もいた。


「前にー本で見たんですけどー、キラーベアはトロルとかを襲った後に、わざと逃がしてアンデッド化するのを待つそうですよー。アンデッドもキラーベアの近くにいるとー、新鮮なお肉や魂がお手軽に手に入れるそうなんですー」

 なんて嫌な共生関係なんだ。そしてキラーベアには、アンデッドを利用できる知能があると。


「対アンデッド用の魔法を作ったから、心配ない。とりあえずは森の中へ行ってみよう」

 アンデッドから魔石が手に入れば、当面の生活費を稼ぐ事が出来る。


 帰らずの森、どうもその名は伊達ではない様だ。


「獣道はあるけど曲がりくねっていますし、分かれ道も多い。何より鬱蒼としげった木々。これで直ぐに、迷子になってしまいますね」

 幸いどこでもナビのお陰で、迷子になる事はない。

 キラーベアを追っていると、開けた場所に出た。お出迎え嬉しいんですが、貴方達はノーサンキュです。


「凄い数のアンデッド……光牙さんお願いします」

 そこにいたのは百体近いアンデッド。リビングデッドにゴースト、スケルトン。様々なアンデッドがいる……任せろ、無事に成仏させてやる。


「もし、私の声が聞こえるなら、答えて下さい。ここに貴方の親しい人がいます。しかし、その人は行き先を見失い、迷っています。どうか、私の問い掛けに応え、彼の人を、御導き下さい……迷子ロストチャイルドグリデードえ……あれ?」

 ドヤ顔で、ロストチャイルド・グリデードを唱えるも、なぜか五分の一位のアンデッドが残ってしまった。残ったのはリビングデッドだけ……無事にお迎えも来ているのに、なぜだ?


「平野さん、もしかし残られた方って、女性じゃないでいすか?」

 薬師君の言う通り、鑑定してみると残っているのはリビングデッドになった女性だけだ。


「そうだけど……薬師君、危ないよ」

 薬師君はどんどんリビングデッドに近付いていく。重吾も止めるが、一度振り向いて微笑むだけで、歩みを止める事はなかった。


「女性なら綺麗でいたいですよね。迎えに来てくれたのが旦那様だったりしたら、綺麗な顔を見せたい筈です。エンゼルケアって言うんですよ」

 薬師君はそう言うと、リビングデッドの顔に絵筆を走らせた。腐敗した顔がどんどん綺麗になっていく。

(俺は近付くのもきついってのに……流石は未来のお医者様だな)

 元の顔に戻った女性は、迎えに来た男性と一緒に空へと登っていく。満面の笑みを浮かべながら、うれし涙も流していた……女性と付き合った事がない少年に、女心を教わるとは……俺もまだまだです。

 感心しながら、魔石を回収していく。これで当面の生活費はなんとかなると思う。

 あらかた回収し終えた頃、遠くの方から足音が響いて来た。


「枝守っ!お前ご自慢のお姉様方にお願いして、なんとか出来ないのかよっ」

 大声を上げているのは、薬師君の幼馴染み星空希来里さん。装備は黒いスキニーデにパーカという渋谷にでもいそうな恰好。確かストリート系ファッションとかいうやつだ。


「僕のパーティーは戦士、武闘家、魔法使いなんだって」

 どんだけ火力重視なんだよ。

 そして二人の後ろからは三人の女性がついてきていた。さらにその後ろには大量のアンデッド……あんなの数相手に出来ないっての。


「二人共、私の後ろに……光牙さん、お願いします」

 石動先生、無茶振りです……こうなりゃ、ロストチャイルド・グリデードを連発してやる。

 結果、またもや二割ほど残り薬師君が活躍中です。ちなみに、枝守君がお礼もせずにお姉様方と逃げていきました。


「あれ?まだ駄目ですか?」

 魔石を回収していたら、薬師君の困った様な声が聞こえてきた。見ると、一人の女性リビングデッドが暗い顔をして佇んでいる。


「それじゃスッピンじゃん。私の言う通り、メークしてみな。目元を明るくすれば、もっと魅力が上がるし」

 薬師君が星空さんの指示に従って、女性にメークを施していく。星空さんが鏡を見せると、女性は待ち人共と一緒に嬉しそうに天へと昇って行った。

 これはもしかして、もしかするのでは。



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