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黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
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源治の頼み

 虚ろ石は召喚や疑似生命の核に使うそうだ。名前は石だけど正確に言うと石ではないらしい。


「帰らずの森では、魔物がアンデッド化する事があるそうなんですー。アンデッド化すると骨まで柔らかくなるでー、キラーベアは、好んで襲うそうですよー。でも、どうしても消化しきれずに残る骨があるそうなんですー。それが固まった物が虚ろ石の正体なのですー」

 流石は陽向さん、もうチェック済みなのか……でも、熊を食べるつもりじゃないですよね。

 虚ろ石は結石みたいな物らしい。でも、アンデッドが素になってるだけに、闇の魔力が凝縮されているそうだ。

 ちなみにでもトロルのお肉は筋肉質で硬いけど、アンデッド化すれば柔らかくなり、キラーベアの大好物になるそうだ。


「それじゃ、キラーベアの死体を探せば良いんですね」

 トロルを襲う様な熊だ。絶対にでかいし、凶暴だと思う。いくら加護をもらえたからって、調子にのるのは駄目だ。


「本にもそう書いてましたー。虚ろ石はゴーストが沢山いる所にあるそうですよー。物によっては、ゴーストが憑りついている虚ろ石もあるそうですー」

 熊とゴーストか……どっちも嫌です。この世界のゴーストってお経や十字架は効かないだろうな。

 何より俺の浅い言葉で成仏してくれるとは思えない。


「源治さんの話では帰らずの森の近くまで定期運航の馬車があるそうですよ。」

 馬車か。魔法でクッションでも作っておくか。

 せっかく異世界に来たんだから、ワイバーンやユニコーンみたいなファンタジーな移動手段を確保したい。

 黒歴史ノートの中に書いてある移動手段はマジックカー。魔力で動くって設定だ。でも、中学の時に考えた設定だから、オイルやバッテリーには言及していない。

 何より車の詳しい構造が分からない。エンジンは何となく分かるけど、ギアやコンピューター制御の部分にとなると完璧にお手上げだ。

(駐車場に置きっぱなしだから、車のバッテリー上がってたらまずいな)

 ちなみに俺の愛車は中古のワンボックスカー。ゴルフの送迎に大活躍している。車内もゆったりしているので、朝早いお迎えの時は道の駅で仮眠もとれる。

 ……大事な事を忘れていた。


「ちなみに馬車代っていくら位かかるんだ?」

 試練の洞窟をクリアしたばかりなので、まだ報酬を手に入れていない。


「帰らずの森ですと、宿泊費込みで四人ですと銀貨一枚になるそうです。掛かった経費は帰った来たら請求できるそうですよ」

 流石は石動先生、既にチェック済みですか。ジャイアントボアの魔石があれば余裕で払えたよね。

(待てよ。ジャイアントボアか……新しい魔法を思い付いたぞ)


「とりあえず俺が立て替えておくよ。でも、この世界に領収書なんてあるのか?」

 宛名が上様だから、認めないとかないよな。


「魔法の掛けられた羊皮紙に書いてもらうそうです」

 虚偽判定の魔法が掛けられており、不正請求が出来ない仕掛けになっているらしい。


「後は重吾の武器か。剣っていくら位するんだ?」

 重吾が使っていた剣はロックゴーレムとの戦いでボロボロになってしまった。


「それなら大丈夫ですよ。騎士団で使っている剣を譲ってもらえましたので」

 そういや、レイン王子のご厚意で、報酬は装備一式になったんだよな。しかも、かなり高価な装備ばかりらしい。ジャイアントボアの魔石を軽く上回るお値段だとの事。

でも、俺の装備は貴重な物ばかりで、上位互換の品となると国でも簡単には準備出来ないそうだ。俺だけ働き損でございます。


 帰らずの森へ旅立つ前日、俺は冒険の準備をしていた。

(まずは今使える攻撃魔法のページに付箋を貼ってと……)

 戦闘中だと、どうしても慌ててしまい任意のページが開けないのだ。

 次の対アンデッド用の魔法を書いていく。ノートの残りページも、後わずかだ。

 必要だと思った魔法だけ書いていこう。


「光の字、ちょっと良いか?」

 魔法を書き終えると、同時に源治が部屋に尋ねて来た。


「良いぞ。ギルド長様、こんな夜中にどうしたんだ?」

 組織のトップだけあり、源治は忙しい。ギルドの運営だけじゃなく、国の重鎮や商業ギルドのお偉いさんとの付き合いもあるそうだ。


「大事な話があるんだよ」

 源治の顔は真面目その物で、話の内容が重大なものだと分かる。


「それなら重吾も呼んでくるぞ」

 大事な話となると、重吾もいないとまずい。


「後から俺が話しておく。それにあいつには言えない内容もあるんでな……光の字、頼む。俺に力を貸してくれ」

 源治は、そう言うと俺に頭を下げて来た。


「貸すって、お前は俺より強いだろ?」

 成長する程、源治との力量の差が分かる。こいつと師匠は化け物だ。


「俺がギルドを作ったのは、契約者を守りたかったってのが、第一だ。でも、もう一つ理由がある。メンバーが魔族を倒したり、依頼を解決して感謝されたりすると俺にポイントが入るんだ」

 ポイント?何かが割引になるんだろうか。スーパーみたいだな。


「個人契約者第だとポイントが多く入るってのか?」

 差し詰め会員特典ってところか。ますますスーパーじゃないか。曜日によって、ポイントが増えたりして。


「それもある……お前、ロキシー・クロークを覚えているか?」

 自分から地雷を踏みに来た!?あえて忘れたふりをしてたのに。


「源治、忘れる事も大事だぞ。ポイントを使って、女を振り向かせても虚しいだけだぜ」

 源治の肩に手を置き。首を振る。旧友ともよ、辛かったな。

 異世界まで来て捨てられたんだ。悔しいのは分かる。でも、神使に頼ってよりを戻しても、虚しいだけだ。


「お前、なんか勘違いしていないか?あいつの今の名前はロキシー・不破、俺の女房だ!可愛い娘だっているんだぞ」

 そうか。分かったぞ。そう言う事か。


「つまりポイントを稼げば奥さんと娘さんが返って来てくれるんだな。分かった。力を貸してやる」

 きっと源治が何かやらかして、奥さんと子供が呆れて出て行ったんだ。ポイントを稼ぐ事で、俺は変わったんだぞとアピールしたいんだな。

 金は貸せないけど、ポイントなら貸してやろう。


「違うっつーの。ロキシーは神使なんだよ。今は天界に住んでいて、月一で会っている。ポイントを稼げば、家族一緒に暮らせるんだよ」

 詳しく話を聞くと、ロキシーさんは水を司る竜の神使だそうだ。それで竜姫の顎って、ギルド名にしたらしい……ドン引きしたのは、秘密にしておこう。会社や商品名を嫁さんの名前にする様なもんだぞ。


「お前が、天界に行くのか?……ちなみに、それって誰が決めたんだ?」

 ただの人が天界なんかに行くなんて地獄でしかない。貧乏人が高級住宅街に住むより、きついぞ。

 人間臭いとか、お下品ざますとか言われそうだ。


「お決めになったのは、ミゲーカ様だ。お互いの家が繋がって、いつでも会える様になるんだよ。頼み!これ以上、娘に寂しい思いをさせたくないんだ」

 餓鬼の頃なら、ミゲーカ様は意地悪だと思っただろう。でも、大人になった今ならミゲーカ様の優しさが分かる。


「ポイントってより、功績だな。お前が英雄並みの活躍をすれば、他の神使も文句を言えない。それなら重吾の協力も必要だろ?」

 人気俳優や有名なスポーツ選手が、高級住宅街に引っ越してきても誰も文句は言わないだろう。

 異世界人とはいえ、源治はただの人間だ。ロキシーさんと結婚した事を、面白く思わない神使も少なくない筈。そいつ等を黙らせるには、それ相応の功績が必要だ。


「今までの話は伝えるさ……残留組の中には、神使の意思に反する行動をとりそうな奴が大勢いる。場合によっては、そいつ等と戦う必要が出てくるだろう。重の字には、出来ないだろ?」

 確かに重吾の性格だと、生徒に手をあげるのはきついと思う。でも、向こうは違う。俺達の命を狙ってくる危険性は充分にある。


「神使様に頼んで、契約を解約してもらったら良いんじゃないか?」

 むしろ、速攻契約を解約されそうな感じがするんだけど。


「神使ってのはプライドが高い奴が多いから、自分の間違いを中々認めないのさ。それに天界も一枚岩じゃない。神様や神使にも、色々いるんだよ」

 日本には祟り神や荒神がいる。それと同じ様に負を司る神様もいるらしい。


「早い話が残留組の餓鬼共が、悪さをする様なら力づずくで懲らしめろって事だろ?」

 一緒に試練の洞窟をクリアした俺達が活躍すれば、レイン王子の株があがりジードへの牽制にもなるそうだ。


明日七時に更新します

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