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黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
14/19

ランクは?

 ドヤ顔のクーネルマ団長が操る馬車が王都を行く。馬車を見かけた王都の人々は歓声をあげ、レイン王子に祝いの言葉を送ってくる。

 そう、王都を行き交う人々の視線は俺達が乗っている馬車に注がれているのだ。

 何しろ馬車には『祝!レイン王子様、試練の洞窟クリア』と書かれた横断幕が張られているのだから。

 ぶっちゃけ、凄い恥ずかしいです。


「このまま、龍姫のギルドまでお送りさせて頂きます。」

 団長が満面でそう告げてきた……出来れば途中で降ろして欲しいんですけど。

 なんでも、王都を一周してから城に戻るとの事。

 龍姫の顎に着くとギルドのメンバーが待っていた。源治だけじゃなく、師匠にカイルさん、ルイネさんまでいる。


「無事に全員加護を授かったらしいじゃないか。まずはどんな紋章なのか調べるぞ…光の字は、予想がついててるから最後だな」

 源治君、俺の扱いが雑過ぎませんか?


「無事じゃねえぞ。ボスはシャドウオークじゃなくロックゴーレムだったんだぞ。ガチで死ぬかと思ったんだからな」

 俺の一言で祝賀ムードだった空気が一変した。源治だけじゃなく、師匠からも怒りのオーラが出ている。


「光の字、その話詳しく聞かせろや」

 源治の顔は真剣その物。余りの迫力にビビってしまい、ロックゴーレムの事だけじゃなく面接の事も話してしまった。


「件の連中の中に召喚師がいた筈……しかも罠のスキルも授かったと聞いておるぞ」

 師匠の魔力がどんどん上がっていく。色々と聞きたい事があるが、二人の迫力に気おされひるんでしまう。


「多分そいつの仕業でしょうね。裏で手を引いてるのは、あの馬鹿だと思います……まずは、こっちの戦力を確認するのが先決ですね。誰かショーティーさんを呼んで来て下さい」

 普段は穏やかなカイルさんまで怒っている。エルフだから戦いは苦手なんじゃないかと思っていたけど、それは勘違いでした。余りの迫力にちびりそうです。

(戦いを経験して、強くなれたと思ったんだけど、まだまだだな)

 さっきから、物騒な言葉が出ているけど、みんなの迫力にビビッて口も開けないでいる。


「副ギルド長、お呼びでしょうか?」

 ……異世界に来て、良かった。やって来たのは二十代半ば位の清楚な美人。しかもただの美人ではない。ふわふわの狐尻尾を持った美人さんなのである。


「こいつの名前はショーティー・ルナール、狐人だ。普段はギルドの受付けをしてもらっている。ショーティー、こいつ等の紋章を鑑定してくれ」

 やはり、ギルドの受付け嬢は美人が担当するのか……でも、何を受け付けるんだ?

 ゲームやラノベみたく個人に依頼を斡旋するシステムではない筈。


「紋章って、辞典に乗ってるんじゃないのか?」

 ショーティーさんは、紋章判定一級でも持っているんだろうか?


「異世界から来た方に授けられる紋章はオリジナルの物が多く、辞典には乗っていないんですよ。でもショーティーさんは鑑定のスキルを持っているので、どんな紋章なのか分かるんです。ちなみに普段は持ち込まれた依頼を鑑定してもらっています」

 カイルさんの話によると、昔はギルドで依頼を斡旋していた時代もあったそうだ。

 でも、冒険者が病気や怪我で行けなくなったり、前金だけもらってバックくれてしまう事があり問題になったらしい。

 何より冒険者は成長すると、実入りの良い所に行ってしまう。

 そこでギルドは専属の冒険者を雇い始めたそうだ。冒険者としても、怪我をしても食いっぱぐれないので、専属を希望する者が増えていったらしい。


「依頼者が嘘をついていないか鑑定して、依頼の難易度にあったメンバーを派遣するのが、ショーティーの仕事さ。それじゃ、ショーティー頼むぞ」


「それでは皆さん、私に紋章を見せて下さい」

 どうする。先に楽になった方が良いんじゃないか。いや、他の人の紋章を見てから決めよう。


「それでは私からお願いします」

 重吾の紋章は右上腕にあった。紋章は丸の中に風のマークがあり、その下に教鞭と剣が交差している物が描かれていた。


「ランクはAで属性は風ですね……ジョブはソードティーチャー、今使えるスキルは指導・剣術・スチューデントガードの三つです」

 ソードティーチャー、直訳すると剣の先生になるけど、重吾の場合は剣も使える先生ってところだろうか。ちなみにスチューデントガードは生徒を守る時にダメージを五割カットするとの事……重吾君、フレンドは対象じゃないんですか?


「次は僕の紋章を見て下さい」

 薬師の紋章は右脛にあった。レイン王子と同じく岩が描かれており、その下にあるのは重なった絵筆と聴診器……そりゃ聴診器なんて異世界の辞典に載ってないよあ。


「ランクはAで属性は大地です。ジョブはアートヒーラーになります。今使えるスキルはヒールとクリエイトキュアですね」

 アートヒーラーは、薬師のオリジナルジョブで、魔法の絵具で色を塗ると、怪我が治るそうだ。魔法の絵の具が皮膚に変化するらしい。ただし、肌の色をきちんと再現する必要があるとの事。


「私もお願いしますー」

 日向珠美さんの紋章は首筋にあった。鼻の下を伸ばしたら、重吾に睨まれました。

 描かれているのは火で、その上で包丁とフライパンが交差している。


「凄いですね。貴女のランクもAですよ。ジョブは料理人で属性は火。今使えるスキルは、部位解体と調味料召喚ですよ」

 部位解体は食用になる魔物のみに有効なスキルで、可食部位を斬り落とせる技との事。今、調味料召喚で呼び出せるのは塩と胡椒だけらしい。

 次は俺の番だ。右手を掲げると、源治が間に割って入って来た。


「光の字は、Sで確定だから鑑定しなくて良いだろ」

 認めない、俺は認めないぞ。俺はこれ以上目立ちたくないんだ。


「なんで分かるんだよ?CとかDの可能性もあるだろ」

 そりゃ、重吾達と比べれば派手だけど見掛け倒しって可能性もある。


「俺もSランクなんだよ。それで紋章は、これだ。Sランクの紋章は神獣なんだよ」

 源治が左手を掲げる。そこに描かれていたのは水色の竜。竜の下には俺と同じく岩や火のマークがあり、判読不明な文字が描かれていた。


「ギルド長、つかぬ事を伺いますが、この文字はなんて書かれているんですか?」

 紋章を浮かび上がらせると、どよめきが走った。もしかしてやらかしたか……。


「神使が使う言葉で、コウガ・ヒラノって書いてんだよ。それは個人契約の証拠さ……へぇー、全員に認められたのか」

 個人契約ってなに?認められたって、何もしてないんですが……こうなればチートで大活躍してやる。

 ちなみに個人契約は、神使からするとペットショップや競馬の様な感覚らとの事。面白い奴を見つけたから、力を貸してやるってノリらしい。

 だから余程活躍しないと神使名を教えてくれないそうだ。

 当然、ろくでもない事をすれば契約は解除されるとの事。

 中にはガチで気に入り全力で応援してくれる事もあるらしいが、それはかなり稀だそうだ。


「ランクはS、主属性は光ですね。ジョブは魔導書使いで、スキルは魔導書詠唱になります」

 Sランクだけど、今までと一緒じゃん。魔法使う度に、紋章が浮かび上がるじゃ、むしろ悪化しているだろ。

 黒歴史ノートを確認すると、使える魔法が増えていた。


 炎属性 火炎狼ファイヤーウルフ円舞ワルツ

 水属性 水精霊ウィンディーネ輪舞曲ロンド

 闇属性 漆黒ダーク呪丸スペルボール

 闇属性 死神デス葬送曲レクイエム

 光性 妖精フェアリー交響曲シンフォニー

 大地属性 岩兵士ロックソルジャー行進曲マーチ

 風属性 風蝶ウィンドバタフライ狂詩曲ラプソディー

 ……痛いのばっかじゃん。決めた!初級魔法だけで乗り切ってやる。


「ショーティー、こいつ等に仕事を見繕ってもらえるか?」

 働かざる者食うべからずだ。依頼をこなして自分の食い扶持を稼がなくては。

(俺達はまだ初心者だ。あまりハードな依頼は選ばれないだろ)

 今は簡単な依頼をこなして実績を作る時期だ。荷物持ちでも売り子でもなんでもやってやる。


「帰らずの森から、虚ろ石を採って来て欲しいとの依頼があります。コウガさんの力があれば、迷う事もないと思います。あそこに出るのは、主にアンデッドですね。他にはトロルとキラーベア―位ですよ」

 ショーティーさん、どう考えても位で済ます面子じゃないんですけど。


 ◇

 同刻、王城。第二王子のジードは焦っていた。予想に反して異母弟のレインが無事に帰って来たのだ。しかも、自分と同じBランクの契約を済ませてきた。


「エモリ君とホシゾラさんは帰らずの森に行って下さい。あそこで採れる虚ろ石は貴方達のスキルに不可欠ですので」

 枝守努のジョブはトラップサモナーである。虚ろ石に魔力を込める事で、任意の場所に魔物を召喚出来るのだ。

 試練の洞窟でロックゴーレム召喚のトラップを仕込んだのは、えもりなのだ。

 それを命じたのは、他ならぬ第二王子のジードであった。


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