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黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
13/19

一か八か

 これがゲームならクレーム殺到しているぞ。出来るなら俺もここを作った神様にクレームを入れたい。


「あいつ滅茶苦茶だ。壁を壊してきましたよ」

 薬師君の言う通り、ロックゴーレムは洞窟の壁を壊しながら近付いてきた。

 ロックゴーレムはチュートリアルダンジョンに出現するには、規格外する強さだ。攻撃力も桁外れだし、スピードも俺達を上回っている。

 ついでに魔法防御力も高いらしく、俺の魔法も一切効かない。


「もう一度、私が斬りつけてみます」

 重吾が俺達を庇う様にして立ちはだかる。でも、その身体はロックゴーレムに何度も殴られてもう満身創痍だ。


「重吾、止めろ。お前の剣は刃こぼれして役にたたないだろ!」

 重吾は何度もロックゴーレムの攻撃を仕掛けていたが、その度に岩の鎧に剣を弾かれている。


「でも、このままでは試練の洞窟をクリア出来ません。何より生徒を守るのは私の使命です」

 この頑固教師が……確かに、このままじゃいずれロックゴーレムに倒されてしまう。


「陽向さん、ロックゴーレムの弱点を知りませんか?」

 魔物の勉強をしていた陽向さんなら、何か知っている筈。


「た、食べられる魔物を中心にお勉強していたので、あまり詳しくないのですー」

 陽向さんのジョブは料理人だ。だから、食える魔物を中心に勉強していたと。

 確かにロックゴーレムは食べられないもんな。


「ロックゴーレムの弱点は打撃です。強い打撃を加えれば、身体が砕けちるそうです」

 王子様、ナイスフォロー。打撃か、俺のストーンブリットじゃ、効果はなしのつぶてだ。

 命あっての物種だ……こうなりゃ一か八か、あれに賭けるしかない。


「陽向さん、レイン王子逃げながらで良いですから、ロックゴーレムの気を引いて下さい。その間、薬師君は重吾の傷を出来るだけ回復。重吾は傷が治ったら、詠唱が終わるまで俺を庇え。まず俺が逃げるぞ」

 ちょっと格好悪いが、先頭をきって逃げる。ある程度距離を取れた所で、エコバックからお目当ての物を探す。


「任せて下さい。恐らく、今回の原因は王家にもありますので」

 王子、王家ってより貴方のおジードさんが、原因だと思います。


「ここをクリアしたらー、美味しい物を食べさせてもらいますからねー」

 陽向さん、俺がごちそう出来る物ならなんでもおごります。


「薬師君と重吾も頼んだぞ」

 仲間から離れてエコバックに手を突っ込む。取り出したのはジャイアントボアの魔石。レイン王子と陽向さんが適度な距離を保ちながら、ロックゴーレムを引き付けている。


「平野さん、石動先生の傷と体力回復しました」

 薬師君の言葉が終わるや否や重吾が飛び出していく。


「レイン王子様、陽向さん後ろに下がって下さい。光牙さん、任せましたよ」

 重吾の顔には笑みが浮かんでいる。あれは子供達を安心させる為の偽りの笑みだ。

 それならもう一人のおじさんも頑張ろう。

 右手にジャイアントボアの魔石、左手には黒歴史ノートを持つ。

 俺は大人だ。信じてくれた子供達……いや、仲間を守れないでどうする。


「我、願う。汝はかつての強敵手ライバル。しかし今は友。友よ、我が危機に,その絶大なる力を貸し給え。汝の名はジャイアントボア……レントアタック」

 一発二十万の高コスト魔法だ。魔石に魔力を篭めると、淡く発光し始めました。


『変わった人間じゃの。魔物たる儂を友と呼ぶか。あれは我が家族の仇。仇討ち機会を与えてくれた事を感謝するぞ。人間いや友よ』

 やたらとダンディな声が頭の中に響く。それと同時に光が猪の形に変わり、ロックゴーレムに体当たりした。

 一瞬にしてロックゴーレムは粉々に砕け散る。

(あれはジャイアントボア?俺が殺したのに、なんで?)

 良く考えればレントアタックはえげつない魔法だ。殺した相手に力を貸せって言っているんだから。


『友よ、気にするな。お主のお陰で儂はまた家族に会えるのだからな……息子達にお前達の仇は討ったぞと大足を振って会いに行ける』

 とりあえず、助かった。ちなみにロックゴーレムは魔石を落とさず、大赤字となりました。


 ◇

 ようやく最深部まで戻ってこれた。ジャイアントボアが力を貸してくれなかったら、まじでやばかったと思う。


「この扉の向こうに礼拝所があるんですね」

 重吾はそう言いながら、扉に手をかけた。頼むから、これ以上魔物は出ないで下さい。


「ミゲーカ様……」

 レイン王子はそう言うと、涙を流しながらその場に跪いた。そこにあったのは洞窟の入り口にもあったミゲーカ様の像。

 形は似ているが、神々しさが違う。気付けば全員ミゲーカ様の像に向かって跪いていた。そして優しく暖かな光が俺達を包んでいく。

 徐々に光が弱まっていく。ゆっくりと目を開けると、予想もしなかった光景が飛び込んできた……ここ礼拝所だよね。

(め、面接会場?日本に戻って来たのか?)

 そこには面接会場と書かれた案内板が置かれていたのだ。

 恐る恐るドアをノックする。


「どうぞ、お入り下さい」

 聞こえてきたのは、優しそうな女性の声。

 声に従いゆっくりとドアを開ける。

 そこにいたのは四人の美女。神々しいまでの美女四人が、椅子に座っていた。

 四人とも、髪の色も瞳の色も違う。ついでに座っている椅子も違っていた。


「ようこそ、加護付与面接会場へ。これから簡単な面接を行わせてもらいます」

 声を掛けて来たのは黒髪の女性。二十代後半位の清楚な美人だ。

 加護もらうのに、面接が必要なの?ネットや新聞もチェックしてないどころか、予習すらしていないんですが。


「平野光牙、三十五歳です。本日は宜しくお願い致します」

 四人の美女めんせつかんに向かって、頭を下げる。待てよ、履歴書を持って来ていないんですけど。


「平野さんですね。どうぞ、椅子にお掛け下さい」

 純白の髪の美女が椅子に座る様に促してきた。この人は二十代半ば位で、妖艶な魅力があった。

 視線の先にあったのは、何の変哲もないパイプ椅子。スーツを着たサラリーマンがパイプ椅子に座って面接を受けている。

 どう見ても転職の面接だ。

(俺、転職活動してないんだけど……こんな所、部長に見られたらやばいって)


「はい、失礼します」

 もう一度頭を下げてパイプ椅子に腰掛ける。


「見た目は今回来た異世界人の中で、一番パッとしないな。こんな奴のどこが良かったんだろうな」

 赤い髪の美女が不思議そうに呟く。赤い髪をショートカットにしており、活発な印象を受ける。

 加護をもらうに、容姿も関係するんですか?それだと、俺が一番不利なんですけど。


「お姉ちゃん、好みはみんな違うの……今までの行動を見ていたけど、僕は合格で良いと思うな。ママも合格だって言ってたし」

 次に口を開いたのは、茶髪の少女。可愛らしい顔立ちをしており、みんなのアイドルって感じがする。


「俺が契約する訳じゃないしな。下手な事を言えば姉貴にぶっ飛ばされるか。それじゃ俺も合格にしとくよ」

 赤髪の少女も合格にしてくれた。ところでお姉さんってどんな人ですか?


「それじゃ、合格で良いわね。平野光牙さん、貴方に加護を授けます。詳しい結果は、紋章にてお知らせ致しますので……これで面接を終わります」

 今の流れで加護がもらえるの?


 ◇

 光が納まると、礼拝所の前だった。

(今のは夢……だよな?って、熱っ)

 右手の甲が熱くなっている。見てみると手の甲が金色に光っている。

 俺の紋章は金色こんじきに輝く鳥であった。金色の鳥の周りには、火や水を現しているかの様なマークがある。マークは全部で七個。

 その下には解読不明な文字が書かれていた。ちょっとゴテゴテしているけど、きっとDランク辺りだと思う。

 でも右手の甲って、目立つ過ぎだろ!魔法を唱える度の俺の手は金色に輝くと……勘弁して下さい。


「光牙さんも加護を頂けたようですね」

 重吾の話では、全員加護を授けてもらう事が出来たとの事。


「なあ、みんなも面接を受けたのか?」

 全員がキョトンした顔になる。結果、物凄い変な空気になりました。


「面接ですか?疲れて夢でも見たんじゃないですか……それじゃ、戻りますよ」

 重吾君、待って。このままじゃ、俺だけが痛いおじさん扱いになっちゃうんですけど。


 ◇

 入り口に辿り着くと、クーネルマ団長が駆け寄って来た。


「王子、良くご無事でお戻りになられました。これも、皆様のお陰で御座います。感謝致します」

 クーネルマ団長は余程嬉しいのか、号泣しまくっている。


「危ない場面もありましたが、皆様のお陰で無事に加護を授けて頂く事が出来ました。ありがとうございました」

 レイン王子はそう言うと、胸元を寛げた。そこにあったのは、岩のマーク。丸の中に三角が描かれており、その中に岩を模している様なマークがあった。


「王子、流石でございます。それは丸の三角岩、先々代の王がお授かりになったという由緒田正しきBランクの紋章でございます。属性は全てを支える大地。レイン王子様こそ、王位を継ぐに相応しいお方でございます」

 紋章って、家紋みたいなノリなのね。そして岩は大地属性の証と……俺の紋章にも描かれているけど、気にしないでおこう。

 何しろ俺の紋章は丸どころか剥き出しのままだ。きっとBランク以下だ。

明日も七時に更新します

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