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黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
12/19

試練の洞窟

 ただいま試練の洞窟を目指し、ジャルダンを移動中。

 ジャイアントボアが棲息しているだけあって、ジャルダンは自然が豊かな所だ。

 町どころか集落すらなく、その為か野生動が数多く棲んでいた……出来れば平時に来たかったです。

 俺達を試練の洞窟に連れて行ってくれるのは、コーネルマ団長。団長自ら御者をしてくれている。

 団長の話によると、残留組は全員試練の洞窟をクリアしたらしい。


「最後にクリアしたのは、ツトム・エモリという少年でした」

 ……正直に言います。女の子だけ見ていて、野郎はスルーしていました。だから枝守君がどんな少年なのか覚えていません。


「最後……枝守は一人でクリアしたのですか?彼は運動があまり得意な方ではない筈。それに、こちらに来ている生徒の中には、枝守と仲が良い生徒はおりませんし」

 流石は生徒マニアの重吾先生。担当している学年以外の生徒の事も把握しているんですね。


「……皆様がこちらに来た次の日に王家から“神使様から宣託がありました。異世界から来た勇者のパーティーメンバーを集います”とのお触れがあったんですよ。まだ試練の洞窟に挑戦した事のない才ある少年少女の元には直接指名する手紙が届いたとの話です」

 参加は本人の自由となっていたそうだけど、神使と王家からのコンボじゃ逆らえる人なんていないだろう。


「各自に専用パーティーを作ったんですか?」

 王様の女をあてがっておけばという言葉が脳裏をよぎる。美少女が数人仲間になったら、頑張るよな。

 俺の言葉を聞いて、落ち込む薬師……まだ、吹っ切れてないんだね。

 そんな薬師君をレイン王子が慰める。年が近い事もあり、二人はすっかり意気投合していた。

 ちなみにレイン王子はフィルさんと幼馴染みで片想いしていたらしい。


「いえ、数人は生徒同士でパーティーを組んでおりました」

 まあ、見ず知らずの異世界人より、顔見知りの人間の方が信頼出来ると思う。

 そして薬師君の顔がパーッと明るくなりました。薬師君のリアクションに癒されるけど、初恋独特の切なさも感じる。


「生徒とパーティーを組んだ方々は、信頼のおける人達なのですか?」

 重吾先生は残留組が心配らしく、どんな人間とパーティーを組んだのか気にしている。


「神使様を裏切れる人間はいませんよ。それに奴隷をパーティーに加えた人もいましたし」

 奴隷なら裏切られないから、安心だねって……ならねえよ!

(試練の洞窟をクリアしたら、奴隷の身分から解放するとか言っているんだろうな。そうすりゃ真面目な奴も受け入れる)

 なんでも自分の言う事を聞いてくれる奴隷から悪い影響を受けなきゃ良いんだけど。


「しかし、酷い有様ですね。色んな所に傷が付いていて、これじゃまるでなぶり殺しですよ」

 道々に魔物だけじゃなく、動物も殺されたまま放置されている。その中にはジャイアントボアの親子の遺体もあった。母猪が子供を庇う様にして倒れていたのだ。

 ジャルダンには一般人は入れない。そして残留組の為の大規模な演習があった。

 つまりこの惨状は、残留組による物なんだろう。ゴブリンやワイルドドッグを殺した俺達に彼等を責める資格はない。


「戦いの経験を積ませるのが目的じゃなく、命を奪う事への抵抗を無くする為でしょうね」

 重吾がそう呟く。集団で襲えば、恐怖感も薄れるし罪の意識も軽減する。


「そう言えば試練の洞窟には、どんな魔物が出るんですか?」

 その前に試練の洞窟は神使が管理しているから、魔物が出るんだろうか?


「試練の洞窟に出るのは、神使様が魔法でお造りなられた疑似モンスターです。主に出るのはシャドウゴブリンとシャドウウルフ。そして礼拝所の前にはシャドウオークが待ち構えています」

 疑似とは言え、攻撃をくらえば怪我をするとの事。気を引き締めていかねば。


 ◇

 やばい……これはテンションが上がってしまう。目の前にあるのは、荘厳な神殿。至る所に細やかな装飾が施されており、見る者の目を奪う。


「試練の洞窟の入り口は神殿の中にあります……王子、私がお供出来るのは、ここまでございます。ご武運をお祈りしております。皆様、どうか王子の事をお願いいたします」

 コーネルマ団長は涙を流しながら、俺達に頭を下げてきた。


「お任せ下さいって言いたい所ですが……その前にレイン王子の戦闘スタイルを教えて頂けますか?」

 基本、王子は薬師君と一緒にパーティーの中央にいてもらう。でも、戦闘に不参加という訳にはいかない。


「僕はレイピアを使って戦います。皆さんの足を引っ張らない様頑張りますので、よろしくお願いします」

 そうなると、重吾が敵の前衛を足止め、陽向さんが撹乱。そしてレイン王子が攻撃。俺は後方の敵を魔法で倒す、この流れが良いと思う。


「それじゃ、行きますよ。王子様、入り口に置いてある柔和な笑みを浮かべておられるの女性像は、どなたを模した物ですか?」

 重吾の言う通り、試練の洞窟の入り口には女性の像が置いてある。でも、柔和な表情と言うより、ニヤニヤと笑っている様に見えるんだけど。


「あれはミゲーカ様の像ですよ。あれと同じ像が最深部にある礼拝所に置かれていると聞いております」

 ミゲーカ。この世界の主神で、上級神使の母親だそうだ。現在、彼女の子供と契約しているのは、一人しかいないらしい。


「ミゲーカ様、どうか私達と生徒の安全をお守りください……それじゃ、皆さん行きますよ」

 重吾はミゲーカ様の像に祈りを捧げると、号令を発した。

 これは良い傾向だ。このまま重吾をパーティーのリーダーにしてしまおう。


 ◇

 神様が試練の為に作った試練の洞窟中は以外に広く歩きやすかった。通路でさえ四メートル位の幅がある。所々に燭台があり、視界も良好だ。

(ゲームで言うチュートリアルみたいな感じか。そうだ、どこでもナビを起動しておくか)

 どこでもナビを起動して、洞窟の全体像を確認する……確かにこれは試練だ。さほど複雑ではないが、とにかく広い。


「重吾、次の曲がり角は左だ……敵が三体近付いて来ているぞ」

 近付いていたのは、小型の影……恐らくあれがシャドウゴブリンなんだろう。


「光牙さん、先頭にいる奴は私が対応します。貴方は後ろのシャドウゴブリンをお願いします」

 重吾はそう言うと、シャドウゴブリンの群れに突っ込んでいった。シャドウゴブリンというからには、闇属性なんだろうか?それなら光属性の魔法で……。

 ちょっと待て!王子様の前で詠唱しろと?不敬罪ならぬ、おふざけい罪になるんじゃないのか?

 俺の悩みを無視して重吾はどんどん進んで行く。このままじゃ、ゴブリン達に囲まれてしまう。

 仕方ない。黒歴史ノートを弓に見立てて、矢を引く動作をとる。


「汝は命を慈しみ育てる万物の母。その名は光。我、願う。ここに顕現し、光の矢へと変じて敵を打ち砕け……ライト-アロー」

 俺の詠唱を聞いたレイン王子は乾いた笑いを浮かべた後、無言でシャドウゴブリンの群れに突っ込んでいった。

 光の矢が最後尾のシャドウゴブリンを貫く。重吾はシャドウゴブリン達が怯んだ隙を見逃さず、一刀のもとに切り伏せた。


「私も続きます!」

 レイン王子のレイピアが残りのシャドウゴブリンを貫く。


「問題なく勝てましたね。しかし、流石は王子様です。勝機を見つけると躊躇なく、攻撃されました」

 流石は石動先生。褒める時は、時間を置かずに誉める。しかも自然で嫌味がない。俺だと不自然な位におべっかまみれになると思う。


「いえ、全てはコウガが珍妙な詠唱で、シャドウゴブリンを唖然とさせてくれたお陰です」

 王子様、俺の詠唱は珍妙なんですか?突っ込んでくれると思ったら、王子様は天然で良い人でした。


 ◇

 まじですか?ここってチュートリアル用ダンジョンだよね。

 パーティーで協力して、なんとか最深部に到達したんだけど……。

 俺達が最深部に着くと同時に魔法陣が発動。シャドウオークよりも巨大なゴーレムが現れ、シャドウオークに攻撃し始めたのだ。


「シャドウオークがロックゴーレムに倒された!?」

 王子様、解説ありがとうございます。そしてあれはロックゴーレムなんですね。

 そしてクルリと向きなおって、拳を振りあげるロックゴーレムさん……もしかして、こいつを倒さなきゃ駄目なの?


明日も七時に更新します

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