表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒歴史ノート持って異世界へ  作者: くま太郎
10/19

夢で逢えたら?

 話によるとジャイアントボアの毛皮や牙は高値で売れるとの事。これは役得と思っていたら……。


「あたい達には、なめし技術を持った奴がいねえ。だから、このワイルドドッグの毛皮と一緒にもらってくれないか?」

 ルイネさんの宣言に村中が湧きたつ。

 ジャイアントボアを倒せたとはいえ、コーリン村の被害は少なくない。高値で売れるジャイアントボアの毛皮は、喉から手が出る位欲しいと思う。でも、倒したの俺だぞ。なめし技術はないけど俺もお金が欲しいです。

 しかし、俺は空気を読む日本人だ。この空気で言い出せません。

 結果、肉三分の一と魔石、それに胃の内容物が俺達の取り分となった。

 ……もう、色々限界なので寝ます。


 ◇

 ……これは夢だよな。俺が今いるのは、中学校の教室なのだ。ついでに学生服も着ています。ただ、ポッコリお腹はそのままだった。窓ガラスに映った姿を見ると,そこいたのは制服をきたおじさん。悪趣味なコスプレにしか見えない。


「コーガ!久し振りだねっ。元気にしてた?……もしかして私の事、忘れちゃったのかな?」

 嘘だろ?……声がした方を振り向くと、制服を着た少女が立っていた。光を反射して輝く金色の髪、張れた日の空の様に青く澄んだ瞳……忘れる訳がない。彼女はずっと、俺の胸の奥にいたのだから。


「ル、ルーチェさん!?どうして、ここに?」

 ルーチェ・エクラーク。俺の中学時代の同級生で初恋の相手だ。再会出来るのなら、きちんとダイエットしたのに。


「コーガがエスフェルドに来たって聞いたら、我慢出来なくなちゃって。夢の中に遊びに来たんだ」

 ……夢か。だから中学校の制服を着ているのか。夢にまで見るなんて、初恋をこじらせ過ぎです。


「エスフェルドが本当にあるとは思わなかったよ」

 まさか異世界だったとは。そりゃ、調べても見つからないよな。


「コーガ・ヒラノに問います。貴方はこの世界で、なにを求めますか?使いきれぬ程の富。人々から賞賛される名誉。多くの美女を集めたハーレム。異世界から来た貴方なら、全てを手に入れる事も出来るでしょう」

 一瞬にして周囲の空気が一変した。ルーチェから発せられるのは、侵し難い高貴なオーラ。

 正直に言えば、どれも欲しい。宝くじで一等が当たったら、何に使おうと空想する。けなされるより、褒められたい。なによりおじさんだってもてたいのだ。


「全部欲しいけど、俺の身の丈にあったレベルでだな。金はろくでもない奴等を引き寄せるし、名誉を守り続けるのは大変だ。ハーレムより、いつも笑い合える一人の女性と出会える方が幸せだと思う……今の目標は、日本に帰る事かな。こっちの世界に来た子供達も、日本に戻してあげたいし。昔は英雄に憧れたけど、今の俺はお節介焼きなおじさんなんだよ」

 他人から見たらつまらない人生かも知れないが、俺なりに頑張って作りあげた人生だ。中途半端なままで終わらせたくない。

 それに、この年になれば周りは子持ちばかりだ。その人達から話を聞くと、自分の子供を心から愛している事が分かる。余計なお節介だと思うが、あの子達を親元に戻してあげたい。

 でも、その為には命懸けで戦って強くならなきゃ駄目なんだよな。


「えー、コーガが、お節介焼きなのは昔からじゃん。うん、安心した……ボー、折角の再会を邪魔しないの……分かったわよ。それじゃ、コーガ、 本当に会える日を楽しみにしているね」

 ……気付くと、すでに朝だった。ルーチェの夢を見たのは、エスフェルドに来た影響だと思う。

 再会か……ルーチェは、もう結婚しているだろう。遠くから見る位で我慢しておこう。


 ◇

 ジャイアントボアを倒したお陰か、帰り道は来た時よりかなり楽だった。でも、足がパンパンだから、一刻も早く休みたい。

 それなのにギルドに着くなり、俺だけギルドげんじの部屋に呼ばれました。


「光の字、お疲れさん。無事にジャイアントボアを倒せたらしいな」

 無事?お疲れさん?今はギルド長だけど、源治は悪友だ。


「無事じゃねえよ!なんだよ!?あの化け物猪は!危うく死ぬ所だったんだぞ。毛皮は寄付されちまうし、くたびれもうけだよ」

 猪肉は陽向さんが料理に使うとの事。ジャイアントボアの魔石って、いくらになるんだろ?


「……お前は王家の本音を聞いたんだよな。ジャイアントボアの胃の中にあった物は、ジャルダンでしから採れない芋だ」

 源治の雰囲気が変わる。絶対に、ビビらないし、譲歩しないからな……まずは話を聞こう。


「ジャルダンって王家の直轄地だよな」

 確かルイネさんが〝あの辺りは王家の管理地なんだ。許可がない者が入ったら、逮捕されるんだよ”と言っていた。


「良く知っているな。最近ジャルダンで、大規模な戦闘訓練が行われたそうだ……内容は日本人による魔物狩り。早い話が魔物と戦わせて、レベルアップをはかったのさ」

 王国の騎士が追い詰めて、日本人がとどめをさすってやり方だそうだ。命を奪う事への抵抗を減らすのも目的らしい。


「もしかして、ジャイアントボアやりゴブリンはジャルダンから逃げて来たのか」

 だから本来臆病なジャイアントボアが凶暴になっていたのか。ジャイアントボアから見たら、俺も城に残った奴等の仲間に見えた筈。


「王家にとって、あのジャイアントボアは、出来れば秘密にしておきたい存在なんだよ」

 あのサイズのジャイアントボアが棲息している所は、プレローでも数か所しかないそうだ。

 村に被害が出た原因を辿っていけば、国を平和にする為に連れて来た異世界人だった……そんな話が広まったら、王家の面子は丸潰れだ。


「おい、コーリン村は大丈夫なのか?」

 そんなやばい猪の毛皮や牙を売ったら、目をつけられるんじゃないのか?」


「だから胃を回収させたんだよ。胃がなきゃ、他の所からジャイアントボアだって言い張れるからな。それと寄付した事で、お前達の名声が高まる。冒険者にとって名声は信頼の証だ。金を払っても手に入らないぜ」

 名声ときたか。今回で一番高まりそうなのは、ライトファングだと思う……次からは重吾に押し付けよう。


 ◇

 ジャイアントボアと戦った結果、レントアタックが使える様になっていた。魔石を消費して、攻撃する一回こっきりの魔法。ジャイアントボアの魔石は二十万で売れるそうなので、随分とコスパの悪い魔法だ。

 そして俺は……毎日走らされています。移動と戦闘時の為の体力作りらしい。

 ダウンしたら、薬師君のヒールで回復。そして再び走り込み。ここ一週間、それをひたすら繰り返している。

 喉が渇けばちょっと小休止で水が飲めるし、汗をかけばシャツを脱げばすぐに綺麗になるからオッケー……なんともお得なトレーニングである……次の飲料水はスポーツドリンク一択だ。

 渇いた喉を水で潤していると、重吾が近付いてきた。重吾はルイネさんに近接戦を教えてもらっている。

 ちなみに薬師君は、鍛錬場に常駐してヒールの練習。陽向さんは魔物の勉強をしている。


「光牙さん、お疲れ様です。カイルさんが呼んでますよ」

 カイル・ローシ、種族はエルフで竜の顎の副ギルド長。ジョブは魔法剣士との事。


「いよいよ試練の洞窟に挑戦か」

 つまり本格的に冒険者家業にデビューする訳だ。怖いが、強くならないと日本に帰れない。おじさん、頑張ります。

 会議室に行くと既にカイルさんが待っていた。こういうのは、教えてもらう側が先に行かなきゃ駄目なのに、社会人として非常に気まずいです。


「皆さんには明日から試練の洞窟に挑戦してもらいます。試練の洞窟をクリアして初めて一人前の冒険者として認められるんですよ。そして試練の洞窟に挑めるのは、一人一回のみですので、気を付けて下さい。」

 おい、今とんでもない事を言わなかったか?


「つまり、ルイネさんやギルドの人は付いて来てくれないと……」

 ガチで試練じゃないか!一人一回しか挑戦出来ないって事は、プロの冒険者はついて来れないって事だ……だから、源治は先に実戦を経験させたのか。

 前衛は重吾だ。包丁で戦う陽向さんは、その後ろだよな。ヒールを使う薬師君は真ん中……って事は、俺が後衛と。バックアタック喰らったらどうしよう。


「ええ、そして皆さんには第三王子レイン様と一緒に挑戦してもらいます」

 だ、第三王子?失敗したら洒落で済まないぞ。


明日も七時に更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ