プロローグってこんなもんだったっけ?
――東京24区、麗志区にある国立奉学園には幻の5人目のイケメンが居る。いや、確かにそこに”居た”。
「――あふ」
今まで噛み殺してきた反動なのか不意に襲われた欠伸に抗える訳でも無く、漏れてしまった。
どうやらそれは目の前に居るお兄ちゃん――雪姫真白――も同じらしく、というか同時にしてたらしいんだけど。
とまぁ、変なシンクロは置いといて、あたしは洗面所に向かった。
当然お兄ちゃんも付いてくる訳で、ああ、お兄ちゃん的に言わせれば『たまたま目的地が同じだけだっただけで他意は無いって言う方が表現的に良いのかな?』らしい。
いやいや、それはあたしの台詞でしょーよ。
あー、もう良いや、これ以上のツッコミは耐えられない!
兎に角お兄ちゃんとあたしは一緒に歯を磨いて、一緒に部屋の近くまで行って、それから別々の部屋に入っていった。
部屋に入る前に何故かお兄ちゃんはにっこり微笑みを浮かべながら、あたしの頭をなでなでぽふぽふしてきた。
んん、まぁ悪い気はしなかったけどね。
◇ ◇ ◇
わたしのお兄ちゃんはついこの間まで普通のちょっと女の子っぽい顔付きの普通の可愛い男の子だった。
……だった、んだけど。
中等部の卒業と共にガラッと変わってしまった。
まず、あんなに綺麗だった短髪がぼっさぼさの目隠れロン毛ヘアーに。
次に、女の子っぽい服装と見た目に。
それから目の下に隈が出て、それから腐女子っぽい気持ち悪い喋り方と笑い声が壁越しに部屋から僅かに漏れてくる様になった。
――――うん、絶対ヤバイ(どっちかと言うと女子特有の気持ち悪い雰囲気バリバリな感じMAXで)。
会話もわざと怠惰且つ卑屈っぽい感じな所があるからさ、どうもちぐはぐな印象になっちゃって、逆に話辛くなる時がたまにあったりする、ちょっち辛い。
そんな訳で、印象が180°どころか360°に変わり果ててしまったお兄ちゃんと今後どう接したらいいか解らなくなっちゃう妹・雪姫真尋ちゃんなのでありましたとさ。