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あたしたちが「おでん」です。  作者: 千葉あんず
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第5話、母子家庭で疑似新婚生活

★第5話、母子家庭で疑似新婚生活


 ――気がついたら、おるこちゃんとラブラブになってから、もう既に、かれこれ一ヶ月が過ぎてたみたいな……


 そう、おるこちゃんとボクが相思相愛になって、もう、かれこれ、何だかんだで一ヶ月が過ぎてしまっていたりする。


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん?」


「おるこちゃん、なぁーに?」


「秋ちゃんも一緒にバンドやらない?」


「え? バンドって?」


 ――たったの一ヶ月超え、されど一ヶ月超え……おるこちゃんとボク、もうスッカリ、めっちゃラブラブだし……


 今、河鹿薫子はボクの家に居て、ボクの彼女は手際良く、とても見事な包丁さばきでぬか漬けのきゅうりを刻んでくれている。


 ――ボクが大切に育てているぬか床なんだけど……


「秋ちゃん、あたしね、バンドでライブがしたいのよ」


 ――っていうか、おるこちゃん、平気な顔をして、あの凄まじいニオイさせまくりなぬか味噌を素手でかきまわしたのには驚いちゃった……


「おるこちゃん? えっと……『らいぶ』って?」


 ――いや、もう、ホント、ぬか床って凄いニオイなんだよ。でね、これは聞いた話なんだけど……


「ライブって言ったら、ほら、ライブコンサートのことよ」


 ――今時の若い女性なんてさ、食品用の使い捨てビニール手袋してぬか床に手を入れるなんて人が居るとか……


「ネイルサロンとかでネイル盛られた素手でかき回されるなら、まあ、それならビニール手袋してもらった方がイイけどね」


「え? 秋ちゃん? なんか言った?」


「タダの独り言だから、おるこちゃん、気にしなくてイイよ」



 ところで、我が浅間家は慎ましやかな借家暮らしだったりする。


 ――そう、『家作』なんて昭和時代の人々が呼んでいた借家みたいな……もう、築50年を余裕で超えた、昭和時代のオンボロ木造モルタル平屋家作みたいな……


 そんなチープな造りの安普請炸裂な、いわゆる、荒ら屋も丸出しなオンボロ借家に住んでいたりする。


「そういえば、秋ちゃんってドラムが上手なのよね……うふふ」


「えぇー? おるこちゃん、そんなこと、何で知ってんの?」


 ――あ、そうそう、借家と言っても長屋みたいな集合住宅じゃなくてさ、一軒家のカサクなんだけどさ……


 解り易く換言をすれば、賃貸マンションやアパートではなく、一軒一軒が単体で建っている借家に暮らすボクの浅間家だったりする。


「だって、あたし、秋ちゃんが駅前のレンタルスタジオでドラムの練習してるとこ見ちゃったし」


「うそ……レンタルスタジオでボクがコソコソ、練習で叩いてるとこ見ちゃったの?」


「うん、あたしもコソコソ見ちゃったわよ」


 ――厳密に言い直すとね、我が浅間家は二軒家を借りて住んでいるんだけど……


「秋ちゃんったら、凄く上手だったもん。プロ顔負けって感じだったもん」


「おるこちゃん、それは褒め過ぎだよ。だってさ、ボクは単純なビート系のリズムしか叩けないし」


 ――うち一軒はボクたち家族が住まう借家で、それと薄っぺらい壁一枚で連なる、もう一軒はボクの作品を製作する作業場に使ってるみたいな……


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん?」


「え? おるこちゃん、なぁーに?」


「秋ちゃんって、いつ頃からドラムを始めたの?」


「えっと……だいたい一年位前から……だったかな?」


「わお! たったの一年しかやってないのに? なのに、秋ちゃんが叩いてたドラム、とっても上手だわよ」


「うーん……そうなのかな? ボクにはワカンナイや」


 ちなみに、借家の二軒家にあるボクの作業場というのは、いわゆる、ボクのアトリエだったりする。


「秋ちゃん? ぬか床に浸かってるタクワンも切っとく?」


 ――おるこちゃん、沢庵をタクワンって発音してるし……おるこちゃん、意外と古風な大和撫子みたいな……


「ってかさ、おるこちゃんって凄いよね」


「え? 秋ちゃん? あたしがスゴイって、何が?」


 そのアトリエでボクは好きな様に作品を作っていたりする。


 ――あのね、実はね、絵の具ってさ、生活する家の中にあると臭くてたまらないんだよ……


「いや、だって、手を洗ってもさ、しばらくは臭い取れないのにさ……」


 ――水彩絵の具なら臭わないけれど、アクリル絵の具とか、油絵の具とか……


「取れないって、もしかして、ぬか味噌のニオイのこと?」


 ――それに、アクリル絵の具や油絵の具を溶かす有機溶剤とか……


「うん、ぬかの臭いってさ、石鹸で手を洗っても易々とは落ちないもんだし……」


 ――石油系の画材達の臭い、慣れない人が長時間かいでいたなら、もう、間違いなく吐いちゃうかもだし……


「うふふ……あたし平気よ。だって、あたし、ダイワナデコだもん」


「おるこちゃん、おるこちゃん……それ、ヤマトナデシコだし。ダイワナデコじゃ、どっかの金融会社だか証券会社だかの記入見本みたいだし」


「あはは! あたし、ちょっとボケかましてみただけだもん」


 ――いやはや、しかし……おるこちゃんと付き合い始めて、もう一ヶ月過ぎちゃったけど……おるこちゃんってさ、やっぱり古風な大和撫子だし……


「あら? 女神様秋ちゃん? あたしを黙って見つめたりして、どうしたの?」


 ――でもね、少しっていうか、かなぁーりアバンギャルドなとこもアリアリだなんてことは内緒ばなしだよ……


「え? あ……うん、おるこちゃん、やっぱり凄いなぁーって見とれてた……」


「いやん、秋ちゃんったら……あたし、恥ずかしいわ」


 ちなみに、ちなむと、アトリエはボクの母親の名前で借りていて、家賃はボクの作品の売り上げから全てを支払っている。


「でもね、でもね、秋ちゃんのが凄いじゃない」


「え? ボクが? 何で?」


「だって、こんなに見事な手作りのぬか床を作っちゃうんだもん」


 ――これは内緒ばなしなんだけど……ボクの浅間家、母子家庭だったりするし……


 ちなみに、ちなんで、ちなむと、浅間家の借家も、壁一枚で連なるアトリエの借家も、どちらの家賃もボクの作品の売り上げで全てを支払っていたりもする。


「ぬか漬けのきゅうり、こんなに美味しく浸けちゃう秋ちゃんのが凄いわよ」


 ――おるこちゃんは、真っ直ぐで艶つやした黒髪に昔のお姫様みたいな雰囲気の顔立ちで、まるで日本人形みたいな、とっても素敵な、ボク的に本物の大和撫子……


「いやん、あたしの女神様秋ちゃんったら……そんなに見つめないで」


 ――浅間家の隣に連なってあるアトリエ、もはや、おるこちゃんとボクの疑似新婚生活の場みたいになっているなんてことは……


 もちろん、そんなことは絶対に学校には極秘の内緒ばなし。


 ――いや、あの、校則に同棲しちゃいけないなんて条項は無いけどさ……


「あ、秋ちゃん、ご飯が炊けたから、そろそろお味噌汁作る?」


 ――でも、おるこちゃんとボクみたいな中学生同士で、半同棲みたいなアレとか、通い妻みたいなアレとか、校則うんぬん以前の問題だもんね……


「うん、作って、作って。じゃあ、ボク、お風呂沸かしてくるよ」


 ――あ、そうそう、ボクの母さん、とある食品工場に勤めていて、日勤と夜勤の交替勤務という……


 昼間働いたり夜間働いたりを繰り返す、シコタマのこと、スコブルものハードワーカーだったりする。


「風呂釜に火を入れて来たよ。ウチはプロパンガスだからさ、もう、アっという間に沸くからね」


「うふふ……秋ちゃん?」


「おるこちゃん、なぁーに?」


「今日こそ秋ちゃんの背中を流さしてくれる?」


「だから、ダメだってば」


 ――そんなハードワーカーな母の負担を少しでも減らしたくてさ……


 ボクは自分の才能をトコトン育てると共に、少しでも家計の足しになるよう、学校の勉強なんかソッチノケで作品創りに励む日々だったりする。


「秋ちゃん、大丈夫よ」


「おるこちゃん? 大丈夫って?」


「あたし、ちゃんと水着を着るもん」


「はい? お風呂で水着?」


「うん、お風呂で水着よ。ねぇ、ねぇ、秋ちゃん? それならイイでしょ?」


「っていうか、まさか……学校の水着?」


「うん、ちゃんと学校指定のだもん」


 ――学校指定の水着、それは、いわゆる、かの有名なスクール水着という名のアレみたいな……


「あたしね、あたしね、ちゃんと持って来てるもん」


 ――おるこちゃんがスクール水着を着てボクと一緒にお風呂入るとか?


「お……おるこちゃん! スク水なんてさ、ますますハズイからダメだよ!」


 ――スク水おるこちゃんがボクと一緒にお風呂? うーわ!! ボクは顔から火が出ちゃう!! Bathガス爆発んなっちゃうし!!


「えぇー? 何でよぉ……もう、秋ちゃんのばかぁー」


 ――うわっ! はにかんでモジモジしたおるこちゃんの表情と仕草、メチャクチャ可愛いし!


「あのね、秋ちゃん? 恥ずかしがってたら、あたしたち二人の暮らし……」


「え? ボクたちの暮らし?」


「いつまでもラブラブな新婚生活にならないじゃないのよ」


「おるこちゃん、おるこちゃん……」


「ん? 秋ちゃん、なぁーに?」


「あのさ、ボクたち結婚してないし……」


「いやん、もう……細かい突っ込みとかイラナイのに……」


「いやいや、いやいや、全然、全く、少しも、ちっとも細かくないし」


 ――ちなみに、ボクの母さん、おるこちゃんをメチャクチャ気に入ってしまったらしくて……


 今みたいに、こうやって、学校が終わったら疑似新婚生活みたいなことをするボク達二人をボクの母は歓迎してくれていたりする。


 ――但し、将来、ボクたち二人は必ず結婚することが条件という、そんな条件付きの母親公認ラブラブなんだけど……


「うーん……結婚かぁー」


「秋ちゃん、秋ちゃん?」


「おるこちゃん? なぁーに?」


「秋ちゃんったら、『結婚かぁー』とか、いきなり、何を呟いちゃってるの?」


「え? いや、あの……ただの独り言だから気にしないでよ。ボクさ、独り言とか得意な人だから」


「あはは! 秋ちゃんったら、変なの」


 ――おるこちゃんはボク的に有り得ない位の美少女だし、スタイルだってメチャクチャ凄いし……


「あら? 秋ちゃん? またあたしを黙って見つめたりして、どうしたの?」


 ――まさか、おるこちゃんの性格、こんなに素敵だとは思ってもみなかったし……


「ねぇ、ねぇ、あたしの女神様秋ちゃん?」


 ――おるこちゃんからイジメられてる頃には、全然、全く、少しも、ちっとも、予想もできなかったおるこちゃんの本当の人格を知っちゃったし……


「微笑む女神様から抱きしめられっぱなしな秋ちゃんったら、ねぇってば」


 ――びっくりする位に家事も上手だし、大人になったら絶世の美女になること明白だし……


「ねえ、秋ちゃんってば! ねぇ、ねぇ、秋ちゃんってば!」


「へ? おるこちゃん? にゃ、にゃ……にぁーに?」


「あはは! 秋ちゃんったら、『にゃーに』って、いつから猫キャラになっちゃったの? ニャンコ秋ちゃんみたいな……あはははは!」


 ――しまった……ボク、呆けっとしてて噛んじゃったし。おるこちゃん、ツボにハマって思いっ切り爆笑しちゃってるし……


 これは内緒ばなしだが、実は、ボクの母は離婚をしてしまっていたりする。


 ――まだボクが幼稚園に入る前に離婚をしたらしいんだけど……


 まだまだヨチヨチしていた、とても幼い頃にやらかしてくれた離婚劇であるがため、残念ながらボクは覚えていない離婚劇だったりする。


「ニャンコ秋ちゃんラブリー。あたしだけしか知らない秋ちゃん独占みたいな。うふふ……ねぇ、ねぇ? あたしたちの婚姻届け、明日の朝にでも出しに行く?」


「おるこちゃん、あのさ、ボクたち中学生なんだし、市役所は受け付けてくれないから」


 ――離婚経験者の母さん、おるこちゃんをボクが家に連れてきた時……


 我が母は自分自身の苦い経験から嫌悪するかと思いきや、全く予想外にボクの彼女を歓迎してくれたのだった。


 しかも、ボクの母は、『だんだん秋ちゃんも一人前の男になってきたわね』なんて、大喜びをしてくれていたのだった。


 ――でも、まだオコチャマな子供のボクには……将来の結婚なんて考え様もないんだけど……


「秋ちゃん、今晩中に頑張って大人になってね」


「は? そんなの無理どころか無茶だし」


 ――ボクの母さん、意外と親ばかなのか、それとも、巷では有り得ない位の放任主義なのか……


 まだまだ子供のボクには大人が考えていることなんて、しかも、偉大なる自分の母親が考えていることなんて分かるわけがなかった。


 ――あ、そうそう……ボクは母さんをスコブル尊敬しているなんてことは誰にも内緒なんだけど……


「秋ちゃん、秋ちゃん、お風呂、お風呂……あたし、秋ちゃんと一緒に入りたいのよ」


 ――だからっていうか、上手く説明できないんだけどさ……


 だから、ボクは尊敬する我が母を超える女性じゃないと結婚なんてしようと思えない。


 ――だってさ、ボクの理想の女性は尊敬するボクの母さんだから……


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん? そんなに考え込むほどのことなんかじゃないわよ」


 ――ちなみに、先に言っておくけど、ボクはマザコンじゃないよ……逆の話、マザコンなんてお粗末なカテゴリで括れるような薄っぺらい母子の絆じゃないボクと母さんなんだし……


「気楽に、あたしと一緒に入っちゃえばイイだけだもん」


 ――だってさ、女手ひとつで赤ん坊だったボクを中学生まで育てちゃう位に凄い人なんだし……未だに男尊女卑あらかさまな日本の社会なんかに負けるどころか勝ち進んでゆきまくりなボクの母さんだし……ボクが憧れちゃう生きざまカマシまくりなボクの母さんだし……


 だから、ボクは我が母を尊敬せずにはいられない。


 ――そう、ボクに命を授けてくれて、しかも……


 誰にも頼らず一人っ切りでボクを真っ直ぐに育ててくれた偉大なる我が母。


 ――あのね、ボクの母さんは、『男とか女とか、それ以前に人間としてどうなの?』って、ことあるごとにボクへ投げ掛けるんだけど……


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃんってば! もたくさしてないで……あたしと一緒にお風呂……ねえ、早く、早くぅー」


 ――男だからとか女だからとか、それ以前に人間としての生きざまをことあるごとに諭してくれるボクの母さん……


 そんな母をボクは一人の人間として尊敬して止まない。


 ――ボクの母さん、ボクにとって人生の師匠なんだよ。人間としての師匠だし、自慢の師匠だし……


「秋ちゃん、秋ちゃん……あたしたちに婚姻届けなんていらないわよね、うふふ」


「は? おるこちゃん?」


 ――しまった! ボク、自分勝手に考え事とかしてて、全然おるこちゃんの話を聴いてなかったし……


「ってかさ、おるこちゃん? 何だかさ、話がアサッテにブっ飛んじゃってない?」


 ――もうバレバレだと思うんだけど……今更ながら内緒だが、おるこちゃんはエッチな女の子だったりする……


「だって、あたしたち愛し合ってるから……ねぇ、あたしの旦那様ぁーん」


「いや、だから、ボク達、結婚してないし」


「ダーリンはウチのものだっぴゃ……なんて、あはは」


「いや、それ……著作権がヤバイし」


 ――おるこちゃん、すっかりボクの嫁さん気取りになっちゃっていたりしたりしてさ……


 学校が終わり、お互いの部活が終わると、必ずボクのアトリエにある狭い台所で晩ご飯を作ってくれていたりするボクのおるこちゃん。


「早く早く、秋ちゃんとお風呂入りたいの、あたし……うふふ」


 正直、そんな河鹿薫子の嫁さん気取りは嬉しいボクだったりもする。


 ――だってさ、おるこちゃんが作るご飯、メチャクチャ美味しいんだよ。はっきり言ってさ、誰にでも自慢したい位に旨いんだよ……


「秋ちゃん? あたしね、水着なんて着なくて平気よ」


 もちろん、ボクが河鹿薫子の嫁さん気取りを歓迎する理由には、まだまだ幾つもの要素があったりする。


「秋ちゃん、あたしの……うふふ……とか見たくない?」


 ――どうして歓迎しちゃうかって、その一例を言えばさ……


 ハードに働いている母とすれ違いな生活を送る現実があり、ボクは幼い頃から一家団らんというものを味わう機会が極端に少なかった。


「秋ちゃんには、全部、ぜぇーんぶ見て欲しいのよ」


 そのため、ボクは秘そかに、いわゆる巷で『家族』と呼ばれているものに憧れていたりする。


「ぜぇーんぶ、ぜぇーんぶ、秋ちゃんに見せたいんだもん、あたし、うふふ……」


 ――だから、毎日のようにボクが暮らす借家のアトリエに来くれて、おるこちゃんがボクに一家団らんを味わせてくれること……


 それが有り得ない位に嬉しかったりもする。


「秋ちゃんには見て欲しいんだもん」


 ――大人から見たら『ままごとみたいな団らん』って笑われるかもしれないけど、ボクには素晴らしい一家団らんだし……


「うふふ……あたしの全てを秋ちゃんには全部見せたいんだもん、えへへ」


 ――だからさ、おるこちゃんの嫁さん気取りには感謝してやまないし……


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん?」


 ――おるこちゃんはさ、ボクが憧れる一家団らんを与えてくれる素敵な彼女だし……


「もう、とっくの昔にお風呂沸いてるのよ」


 ――しまった! またまたボクは勝手な考え事とかしてて、またもや全然おるこちゃんの話を聴いてなかったし……


「あわわわわ!! っていうか、おるこちゃん!!」


「いやん! 秋ちゃんったら……急に大きな声でびっくりしちゃったじゃないのよ!」


 ――おるこちゃん、いつの間にか、件の我が校指定の名札入りスクール水着を身に着けて……


 威風堂々とボクの目の前に立っていたのだった。


 ――やばっ!! おるこちゃんのスクミズ姿を見た瞬間に……ボク、アレがアレしちゃったし……


 河鹿薫子、彼女は転んだなら折れてしまいそうなくらいにスレンダーで、痩せ過ぎとは違う、とっても華奢な、21世紀の今時ならではの、細身なくせに豊満な女の子。


 そんなボクの彼女は、中学生にしては育ち過ぎた全身の美しい曲線を露にして、ボクの煩悩が痛い位の、とてつもなく今風なスタイルの良さを誇り見せている。


 ――おるこちゃんのスタイルの良さって、ボクの脳みそ刺激し過ぎだし……


 しかも、身長の半分以上もある彼女の脚は、いたずらに痩せ細っているわけではなく、ほど良くボクの煩悩をくすぐる柔らかな曲線を綺麗に描いていたりする。


「いやん、嬉しい。あたしを見て秋ちゃんの……大きくなっちゃってるの?」


 更に、彼女の頭周りよりも細い彼女のウエストにスクール水着は見事にピッタリフィット。


「いやん、いやん! 秋ちゃんの大きいわ……あたし、自慢しちゃいたいかも」


 更に、更に、彼女の顔の大きさ位はあろうかという魅惑の胸は、その二つともが、彼女が着ているスクール水着を突き破らんばかりに自己主張を誇示している。


「秋ちゃん? あたし、秋ちゃんのソレ触ってもイイ?」


 ――おるこちゃん、ウチのクラス2年2組で一番おっぱい大きいし……っていうか、我が校で一番大きいボクのおるこちゃんのおっぱいみたいな……


「秋ちゃん、ダメ? そんな、まさか、うふふ……もちろん、ダメなわけなくてOKなのよね? ね、秋ちゃん……うふふ」


 とどめに、彼女のデルタ地帯は見るからに、彼女の期待に満ちた、温暖湿潤気候の梅雨時っぽい湿地帯のほくほく状態になっていた。


 ――うわぁ……スクミズのあのエリア、しっとりホクホクしてるのが見た瞬間分かるし……


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん? どうやったら秋ちゃんのソレ……」


 ――って、ボクはドコ見ちゃってるかな!


「ねえ、どうやったらあたしに来れるの?」


 ――あ……おるこちゃん、今日こそドサクサにボクを食べちゃうつもりみたいな? いやいや、そう簡単にはエッチなんてさせてあげないぞ!


「んもう……ほら、秋ちゃんってば、何をモタクサしちゃってるの? 早く脱いでね、ほら」


「うわっ! ボクはおるこちゃんから脱がされちゃったし!」


「いやん、いやん、いやん……秋ちゃんのアレ……メッチャ素敵だわ」


「うっわぁー! おるこちゃん、どこ見てんのさ!」


「え? うそ!! 秋ちゃんのが……秋ちゃんのアレが……」


「おるこちゃんのばか! アレを見つめるからさ、ボクの、更に凶暴化しちゃったじゃんか!」


 ――ボクは今、ボクの煩悩と、その対極にあるボクの理性的なプライドと……


 実は、その狭間で、男ならではの理性と本能の狭間で激しく戦っていたりする。


「うそ、うそ? こんなに大きい秋ちゃんのが……あたしに来れるの?」


 ――おるこちゃん、ボクのアレを見つめながら顔を真っ赤に染めつつ、何かを期待しちゃってるみたいな……


 しかしながら、言葉とは裏腹に、初めて見るボクのに驚いたのか、河鹿薫子は一歩二歩と無意識に後ずさりを始めてしまう。


 ――いやはや、辛うじてさ、今晩もボクの理性が、ボクのプライドが煩悩に勝ったかも……


「秋ちゃんの、秋ちゃんのを……あたし、あたし……」


 河鹿薫子、三歩四歩と、更に後ずさりしていたりする。


「あたしね、あたしのに秋ちゃんのを……」


 ――ありゃま……どんどん後ずさりして行っちゃってるけど、それも仕方ないよ。生まれて初めて見る凶暴化しちゃった男のアレにビックリして当然だし……


「あたしのに、あたし……どうやって? そんなに大きいの、どうやったら……」


 河鹿薫子は茫然自失としながら、グルグルと同じことを繰り返し言っている。


「あたし、どうやったら? 秋ちゃんの、あたしに……あうあうあ」


 ――ヤバっ! おるこちゃんが壊れてきちゃったみたいな?


「どうやったら? ねぇ、秋ちゃん? あたし、どうやったらイイの?」


 ――うわっ! おるこちゃん、スクミズ姿でさ、そんな悩ましくて妖しい顔でボクを見つめないでよ! 腰もクネクネさせちゃって……おるこちゃんのエッチ!


「あたし秋ちゃんの欲しいのに……あたし、どうしたらイイかワカンナイの……」


 ――おるこちゃんゴメン。ボクだってワカンナイよ……


「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん? 教えて秋ちゃん、あたしに……」


 ――うわっ……ニッチもサッチも行かなくなってきちゃったし……


「あぁーもう! ボクはお風呂入ってくるよ!」


「え? あら? 秋ちゃん、ちょっと? あたしは? あたしは? 一緒にお風呂じゃないの?」


 ――っていうか、おるこちゃん、まだまだボクが尊敬する母に負けてるね……


「いやん、秋ちゃんってば! ねぇ、ねぇ? 秋ちゃんったら!」


 ――おるこちゃん、早くボクが尊敬する母さんに勝って!


「いやん、もう……秋ちゃんったら、ドアの鍵閉めちゃったの? お風呂のドアが開かないわよ」


 ボクは風呂場出入口扉を施錠し、凶暴化したボクのアレをなだめながら、鼻を摘んで湯舟にジャボンと頭まで沈没している。


「いやぁーん!! 秋ちゃん? あたしも一緒に入りたいの!! 一緒に入りたいの!! 一緒に入りたいんだってば!!」


 ――早く静まれ、早く静まれ! ボクの凶暴化したアレ!


「ねえ、秋ちゃん知ってる?」


 ――ボクの煩悩よ、ボクのプライドに負けるな!


「新婚さんなら、普通、お風呂って、ラブラブ夫婦で一緒に入るのよ! 一人で入っちゃダメなのよ!」


 ――えーん! おるこちゃんの妖しい誘惑なんかに負けるな、ボクのプライド!


「あたしは秋ちゃんと入りたいの!! あたしもお風呂に入れて、あたしに秋ちゃんを入れてってば!!」


 ――ああ、もう……仕方ないから一発こいちゃおう!


 ボクは河鹿薫子の哀願を無視しつつ、ボクの凶暴化したアレを静めるために、ボクは恥ずかしくも、いわゆる、一人エッチをして煩悩を激しく吐き出したなんてことは、もちろん、河鹿薫子には内緒ばなし。


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