表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

テキーラ・サンライズ

作者: べんとーず

一杯のカクテルの向こうに物語がある

今回は「テキーラサンライズ」です。

それでは、どうぞ!

昔々、メキシコに貧しい男の子がお母さんと2人で暮らしておりました。

家は町外れの高い高い崖のすぐ側に建っていて、

毎日太陽が部屋を真っ赤に染めていました。


あるとき、男の子が町へ出ると、いじめっ子たちが口々に言いました。


「やーい やーい 貧乏人! 金が無いから何にも出来ぬ! 」


男の子は何も言い返せず、涙をポロポロこぼしながらお母さんのところへ帰ってきました。


「いいかい? 」


お母さんは息子を椅子に座らせると、言いました。


「どんなに金を積んでも手に入らないものだってあるんだよ。

 たとえば、ホラ。」


お母さんは日の光に水差しをかざしました。

水は太陽の恵みを受け、燃えるような赤やオレンジのグラデーションに染まっています。


「私たちはこの家に住んでるおかげで、毎日太陽が飲める。

 太陽の水を飲んでるから、毎日元気でいられるんだよ。

 いいかい? コツは金でどうにかするんじゃない。

 生きる楽しさを見つける目を研ぎ澄ますことさ。」


男の子は目を丸くして、それからとてつもなく嬉しくなって

水差しを持ったまんま家を飛び出していきました。


「やーい やーい 貧乏人! 金が無いから何にも出来ぬ! 」


町の子供がまた男の子をからかいました。

ところが男の子は胸を張ってこう言いました。


「お金がなんだい。そんなもん無くても僕は太陽が飲めるんだ。」


男の子は一番高くなった太陽に水差しをかざしました。

まるで炎を溶かしたように、水は赤く、ガラスの向こうで美しく揺れています。

それはキラキラと輝いて、町をまぶしく照らしていきました。

いじめっ子たちはしいんとして、まるで神様を目の当たりにしたみたいに

いつまでもぽかんと突っ立っていました。


やがて男の子は大きくなりましたが、

今でもお母さんと一緒にあの崖の側の家に住んでいます。

太陽の水で心を潤しながら、

夜の闇に太陽を灯すべく、今日もシェイカーを振っているのです。

如何でしたでしょうか?

今回は「大人の童話」を目指して書いてみました。

貴方の楽しい気持ちが、この一杯の向こうに見えますように…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ