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日常

大まかな設定は何年も前から考えてました。

でも中々形にすることができなくて、やっと重い腰をあげる事にしました。当然素人。誤字脱字があれば気兼ねなく教えてください。

おまけに見切り発車ですが、皆様よろしくお願いします。

 相変わらずの薄い体が視界の端に映った。

 傷一つない、なめらかな曲線を描く腰はつい触ってしまいたいような気がするが…

「なぁに。アキラちゃん。触りたくなった?」

 意地の悪い空気を含んだハスキーな声が耳にはいった。

「ミキさんのじゃないでしょう」

 机にうつ伏せているせいで少しくぐもった応えに、相手はゆるいウェーブのかかった茶色い髪を揺らし、作業に戻った。

「触りたいならどうぞ」

「いーえ。ケッコーです」

アキラの声に腰の持ち主があっさりと言ってみせたが、手を振ってそれに答えた。

「いつみても(あや)ちゃんの腰は見事ねぇ」

 頷きながら針を持つ手を進めていたが、「ちょっとタンマ」としゃがんでいた腰を伸ばすと大柄な体が現れた。

「長い間しゃがんでいると足腰が痛いわぁ」

「…何じじむさい事言ってるんですか」

「じじむさいって何よ。昨日は一日立ちっぱなしの歩きっぱなしだったのよ」

「じゃぁ休んだらいいじゃないですか」

「んまぁ。アタシ一応依頼主(クライアント)よ。そんな口きいて…

 これがアタシのリフレッシュ法なの。理想の顔見て、体見て体中の毒素を排出してるのよっ」

「はいはい」

 最近こんなやりとりに慣れてきた自分を感じて、アキラはここ馴染んできたと思うようになった。

 平均よりも少し高い自分よりも、頭一つほど高いこの人物が、知る人ぞ知る新進気鋭のファッションデザイナーとは思わなかった。

(顔は良いのにオネェだし)

 口には出さず、うとうとするフリをして、改めてその体躯を観察する。

 元モデルだけあって、頭も小さいし手足も長い。整った少し彫りの深い顔は異国の要素が入っているようだが、まだ本人に確認したことはない。着ている服もなんだか「お洒落」な感じだし。真面目にしてたら視線を集めそうなものだのだが…

「いやぁん。彩ちゃんサイコーよっ」

 興奮してしなを作るミキをちらっと見て、知れずため息が漏れる。

(なぜか男前に見えない…)

 何故だ。そこがミキの魅力なのだろうが…

 いつ出会ってもあんな感じだから彼(彼女?)のあの言動は素なのだろう。そう思いながら言われていた方をちらっと見る。

 瞬きが少ないせいか、今みたいにあまり動かずにいるとマネキンのように見える。自分より少し低い背に細い手足。厚みがないが幅もそんなに広くない。あえて言うなら肩幅が少し広いくらいだろうか。頭も小さい。肩で揃えられた黒髪はいつもさらさらで撫でたい衝動に駆られそうになる。見た目は十代後半のような感じだが、恐ろしいことにここでは自分の上司になる。

 ショキンというハサミの音にとりとめのない思考が中断された。

「はいっ。今日の分は終わり。お疲れ様」

「ミキさんもご苦労さま。明日の予定は?」

「明日は部屋で縫う予定」

「何かあったら呼んでね」

「えぇ」

 着替える音が止んで伏せていた顔をあげると、ふいに彩と目があった。

 着替えが済み、赤を基調としたチェックのミニスカートに黒のカットソー、飾りのチェックのネクタイ姿になった彩はネクタイを弄びながら

「暇でうとうとしてるのも良いけど、薬屋に行くの忘れてない?」

「あー。ぼちぼちいきます」

「そう」

「彩ちゃんが行った方が早いと思うけど…」

 アキラが言った途端、彩の眉間に見事なシワが寄った。

「イ・ヤ」

 ミキとの仕事の時は気を使ってあまり話さないように静かにしているが、普段は表情豊かで生気に溢れた彩が、ここまで嫌そうな顔をするのはそうそうない。

「零《れい》さん、行くたびに『彩じゃないのね』って言うんですけど…」

「知らない。私は薬屋に用事ないし」

「いやいや。ここで使ってる薬だから無関係では…」

 何度も同じやりとりをして、どうにもならないのはわかっているはずだが、ついつい同じ事を繰り返していまう。そして、その横でミキがくすくす笑うのも見慣れた風景だ。

「ホント、彩ちゃんは零ちゃんが苦手なのねー」

 いい子なのに…と言うミキにいつものように苦い顔をして彩が応える。

「苦手じゃなくて、合わないの」

「はいはい。じゃぁ、平和の為に俺が行ってきます」

 いつものように腰を上げ二人に手を振り建物をでた。

 いつも世話になっている薬屋には裏道を通って徒歩20分ほどで着く。自転車にでも乗れば早くつくが、歩くのが苦ではないのでいつも歩きで向かう。

 舗装が禿げたり割れたりしている道をのんびり進む。裏道は畑や小さな田んぼが続くのどかな風景が続く。表を通れば、綺麗に舗装された道があるが、畑の景色がまだ珍しいアキラはこっちの道のほうが好きだった。

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