出逢った奇跡のその先へ
夜の帳が下りる刻――
冷たい屋上の更に上。風に揺れるフェンスの上で。
宝石の様な紫の瞳。綺麗な目を持つその人は、
「お前の望みを叶えてやろう」
微笑みを浮かべてそう言った。
……泣いていた私に、そう言った。
優しい記憶。柔らかな過去。
悪魔の様な黒装束を、纏った天使の夜風の声。
あの世界で、只一人。私を救ってくれた人。
綺麗な紫の瞳をした、優しい優しいあの青年の、大切な名前を私は知らず。
知らないままに、空に語る。
僅かな愛を胸に抱いて。
「ありがとう」
と、そう語る。