第6話:待ちぼうけ
12月24日、PM17:00、自宅。
「最後にグロスをつけてっと。はい、終了!!」
なっちゃんは、そう言うとあたしの姿を見て満足げに終了宣言をした。それを横で見ていた春ちゃんも、2度、3度とうなずきながらこう言った。
「うん、かわいい。せっかく女の子に生まれたんだからちゃんとしなきゃね」
「…………別に、元ちゃんは気にしないし」
「それは違う。梨佳、男はそう言いながらも本音は違うものよ」
「…………そうなのかな」
あたしは、自信満々に言い切るなっちゃんの言葉にちょっと不安に思った。
(でも、元ちゃんは格好なんて本人の好きにすればいいんだよって言ってたし。…………でも本当は、こういう格好のほうが良いのかな?)
鏡に映る自分の姿を眺めながら思った。あたしは、もう少し周囲に合わせたほうがいいのかと。
(でも、化粧って苦手なんだよな)
PM、18:00 駅前広場。
「来ない!! 何で〜、時間と場所はあってるよね?」
あたしは、カバンから手帳を取り出すとまじまじと見て確認した。手帳には確かに書いてあるのだ。
(忘れちゃったのかな?)
実を言うと元ちゃんとの待ち合わせで待ちぼうけをするのは初めてではない。 初デートの日には2時間ほど待たされたし。理由は、猫の親子から目が離せなくて写真を撮っていたから。
だから、きっと今日も何か気になる被写体を発見してしまったのだと思う。
(何か飲み物買ってこよう)
PM20:00
来ない。さすがにおかしい。
あたしは、バッグから携帯を取り出すと元ちゃんに電話をした。
トゥルルと呼び出し音だけがむなしく響く。仕方なくあきらめて電話を切り、これからのことを思案していた時だった。一人の男の子があたしにこう声をかけてきたのだった。
「あのー、松本 梨佳さん? 元兄の彼女の」




