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第4話:恋の始まり

 「お疲れさま。二人とも疲れたでしょ?」


 店長は、閉店した店内の戸締まりをすると声をかけてきた。


 「お疲れさまです。でも、思ってたよりかは楽でしたから、大丈夫ですよ」


 暗に暇だったという意味を伝えると、店長は苦笑していた。              

 「じゃあ、ご褒美は無し」

 「あっ、ごめんなさい。ご褒美下さい!」

 「さぁ〜、どうしようかな〜」

 「店長のいじわる〜」

 「何がいじわる?」                                 

  店長とのやり取りの途中に熊さんが、突然入ってきたので正直びびった。でも、ご褒美が欲しかったので助けを求めてみた。                                 

 (我ながら単純?)                                    

 「店長がごほうびをくれないんですよー。」

 「へーーーっ、ごほうびって何です?もちろん、俺にもあるんですよね」


 あたしの言葉を聞いた熊さんは、あたしに合わせて期待の目を店長へと向けていた。そんな二人の様子を見て、店長は苦笑しながら休憩室のテーブルを指差した。


 「たいした物ではないんだけど、ケーキとチキンをどうぞ」

 「いいんですか?いやぁ、年末に向けて今金欠なんですよ」


 熊さんはそう言うと、嬉しそうにケーキとチキンを受け取った。が、あたしは内心困ってしまった。

 うちは、クリスマスを祝うことはないし、母と二人でこの量のケーキを食べれるだろうか………。


 「ありがとうございます。店長」


 とりあえず、店長の心使いを無にしないためにもお礼を伝えごほうびを受け取り、帰宅することにした。


 「じゃあ、おつかれさまです」

 「あっ、途中まで一緒しよう」


 熊さんはそう言うと急いで自分の荷物をまとめ始めた。そしてあたしが返事をする前にいつの間にか二人で店の出口にいた。この一連の行動、早過ぎる。


 (何で、こんなことに?)


 そして、いつの間にか、人の居なくなった商店街を二人で歩いていたのだった。


 「松本さん、実はクリスマスとか嫌い?」


 いきなりの熊さんからの直球に、とっさに返事につまってしまった。即答できてない時点であたしの負けである。


 「………………嫌いというか苦手です」

 「そう?嫌いじゃないんだったら、今度のバイトの時にちゃんとお礼を言わなきゃ駄目だよ?」


 (はっ?何でこんなこと言われなきゃならないわけ!!)


 「お礼ならさっき言いました」

 「そうだね、でも心から言われた言葉とただおざなりに言った言葉くらい、客商売をしている店長には分るはずだよ」


 そんな熊さんの言葉にあたしは、さっきの店長の顔がよみがえった。あの時、店長はどこか寂しげな目をしていなかっただろうか?もしかしたら、あたしはひどく人を傷つけたのかもしれない。


 あたしは、立ち止まり店の方を振り返った。


 (もう一度、店に戻ろうかな………)


 「大丈夫。家に帰って貰った物を食べて、あらためてお礼を言えば平気だよ」

 「…………はい」

 あたしは、のろのろとまた道を歩き始める。


 「うちでは、クリスマスはやらないんです。母は仕事で帰らないし、父の命日でもあるので……」


 あたしの唐突な言葉に驚きながらも、熊さんは優しさにあふれた微笑をくれる。


 「そっか。じゃあ、お父さんが亡くなってからは、毎年悲しい顔をしながら過ごしてたんだ」


 そんな熊さんの言葉にあたしの目から思わず涙の粒が一つ、二つと落ち始めた。熊さんは、大きな手であたしの頭を二度、三度と優しくなでてくれた。


 「お父さんはクリスマス嫌いだった?」


 あたしが、その言葉を否定するようにかぶり振ると熊さんは言葉を続けた。


 「じゃあ、今年からはお父さんの為にも楽しく過ごさなきゃ。きっとお父さんは、その方が嬉しいはずだよ?今日貰ったケーキとチキンを仏前にでも飾ってお母さんと一緒に三人で食べてごらん」


 熊さんの優しい言葉がストンとあたしの心に落ちてきた。


 (そうだ、お父さんは毎年、クリスマスを楽しみにしてたんだ。………忘れてたよ、そんな大切なこと)


 あたしは、涙で濡れる顔を思い切り手でこすると、元気よく熊さんの顔を見上げて返事をした。


 「はい!!そうします」


 そして、熊さんの言うことを早速実行してみると、母とあたしの心は幾分か軽くなったみたいだった。きっと、あのクリスマスから止まっていた時間が流れ始めたのだ。



 これが、あたしの恋の始まり。単純なようであたしにとってはとても深い出来事。そしてあたしは、この恋を成就させる為に行動を開始した。


 そう、出来るだけ熊さんと同じシフトに入りあたしは精一杯アピールした。今までの人生で一番必死に何かを主張するということにはげんだ。 そんなあたしを見てなっちゃんは笑っていて、でもあたしのことを応援してくれた。


 その頑張りの結果が今の二人。本当なら周りの皆と同じようにラブラブでいたかった。…いたかったのに〜!! あの日もクリスマスだった。そう!またしてもクリスマスだ。

 何度書き直しただろう。

 やっと、書けました。以前書いたものよりは自分的にはしっくりときた感じがします。

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