第26話:真実
次の日、梨佳の昨日の様子が心配になった春は朝から大学へと急いだ。
何故なら、午前の授業で夏樹が来ているはずだからである。
授業が終わるの見計らい、メールでカフェテリアに呼び出し到着を待っていた。
「お待たせ、春。急にどうしたの?」
夏樹は席につくなり難しい顔をした春に尋ねる。
「実はね…………」
夕べの梨佳の様子や言葉を自分がみたまま伝え、夏樹の反応を待つ。
(どうしたのかしら? 夏も様子が変だわ)
「春は、どう思った?」
逆に問い返された春は、慎重に自分の考えを述べる。
「多分、大切な人を失った喪失感や悲しみが梨佳ちゃんの中にあってそれが芝居を見て爆発したのかしらと仮説をたててみた。けど、梨佳ちゃんのお父様は小さい頃に亡くなられているのよね?」
夏樹は、コクリと頷き、顔の前で手を組みしばらく考えこんでいた。
そして他の人には聞かれたくないとばかりに春が聞こえるか聞こえないかの声でささやいた。
「………………亡くなったらしいの。熊さん」
ガチャン!!
春は驚きの余り、グラスを倒してしまう。そしてそのまま固まってしまった。
(熊さんが亡くなったって、でもじゃあ、あのメールは?)
梨佳が毎日送信しているメール。返事は時々しかないと笑ってでも時々来るメールには本当に喜んでいたのだ。
じゃあ、梨佳は一体誰にメールを送っているのだろうか。
そんな二人を柱の影から見ている人物がいた。
その人物は、会話を最後まで聞くと二人にばれないように駆け去って行った。
駆け去った人物。それは梨佳だった。




