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第2話:大嫌いなクリスマス

 ついにクリスマス当日になってしまった。 結局、あたしはバイトを断る勇気もなかったのだ。


 周囲を見渡せば、色とりどりのイルミネーションが聖夜の街を飾りたてている。


 (クリスマスか。皆、何が楽しいんだろう)


 はっきり言ってあたしは、クリスマスというイベントが大嫌いなのだ。思えば子供の頃から、大嫌いだった。


 あのキラキラと飾りたてる電飾やうかれ騒ぐ人々の姿を見ると何故か苛立つのだ。


 お店へと向かう途中、商店街を歩いている時だった。ふと目を向けるとその先にはおもちゃ屋が目に入った。クリスマスだからだろうか、普段より数倍も派出に飾りたてたショーウィンドウのその中央にはサンタの格好をした大きなクマのぬいぐるみが座っている。


 (…………クマか。どこも考える事は一緒なのかな)

 

 あたしは、子供の頃からよく人から変わっているねと言われてきた。本人的にはいたって普通の子でいるつもりだったのだが違ったようだ。あれはそう、小学校の5年の、クリスマス前の出来事だった。


 それは昼休みの出来事。なっちゃんとあと2人くらいいただろうか。


 「ねえねえ、今年のクリスマス皆でクリスマス会をしない?」と、ひとりの子が提案したのが始まり。


 「クリスマス? あれって、カトリックのお祝いでしょ? なんでするの?」


 それは、場が凍るということを身をもって知った瞬間だった。


 「あはははっ…………さっすが梨佳だ。確かにそうだけど、日本じゃあ、お祝いというか楽しく過ごすのがあたりまえ」

 「そうなんだ」

 「そうだよ。じゃあ、あたしの家でやろうよ」


 なっちゃんのおかげでその場の空気は元に戻り、皆でクリスマス会をすることになったのだった。


 クリスマス当日は、本当に楽しかった。なっちゃんのお母さんが用意してくれたお菓子やケーキを囲んでゲームをしたり歌を歌ったりして楽しんだ後、一人家路についた。


 でも、楽しければ楽しかった程、家に向かうあたしの足取りは重いものになったのだ。

 本当はクリスマスがどういうものか知っていた。知っていたけど、わざと話をずらす為に言った。あたしにとって、クリスマスは、嬉しいものでもましてや楽しいものでもないのだ。


 あたしの家は、母子家庭だ。あたしが小さい頃に父は亡くなった。それからは、母が一人で育ててくれていた、だからクリスマスを一緒に過ごすということは無かった。


 あたしのクリスマスの思い出は一匹のクマのぬいぐるみだ。売れないカメラマンだった父が残してくれた、最初で最後のプレゼント。


 自然写真を撮ることが仕事だった父。その年のクリスマスは、山での撮影の日程とちょうどかち合ってしまったので母と二人だった。母とケーキを囲い、父からのプレゼントだというクマのぬいぐるみを貰った直後にあの一本の電話がきたのだ。それは、父が遭難したという知らせだった。母と二人着の身着のままで山へと向かった。そして、父の遺体が見つかった。それから、あたしの家でクリスマスを祝うということは無くなった。


 「ねぇ、パパ。あのクマが欲しい」


 突然、隣から子供の声が聞こえた。気付くと、いつのまにやらショーウィンドウの前に立っていたらしい。クマが欲しいと言った女の子が父親に手をひかれ店の中に入っていくのが見えた。


 (………何やってんだろう…………バイト行かなきゃ)


 ショーウィンドウから離れ、お店に行こうと足を踏み出した時だった。


 「松本さん?」


 そう後ろから声をかけてきたのは、あたしの憂鬱の原因の一つでもある「熊さん」こと、市川 元気その人だった。


話が何やら思わぬ方向へと進み始めました。

いつになったら現在の恋愛に行くかが予測不能です。

頑張って書きたいです。

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