第13話:偶然の再会
偶然にしては出来すぎているような気がした。
それは、勇気にとっても同じで自分は何かしただろうかと思わざるをえない程の偶然だ。
「ええと、松本梨佳さんですよね?」
「はい。あの元ちゃんの弟さんですよね?」
どうしよう、それが二人の共通の思い。
(とりあえず、言わなきゃ。)
「あの、入会したいんでけど」
梨佳は思い切って要件を切り出した。
そんな梨佳の言葉に慌てて勇気は、部屋のパイプ椅子に座るように勧めた。
「うちは、幽霊会員がほとんどなんだ。だから全員そろうのはイベントごとかな。みんな、好き勝手に写真取りに出ちゃうから。松本さんは写真を撮ったりしたことある?」
「まったくの初心者なんですけど駄目ですか?」
思わず不安な表情をした梨佳を見て、勇気は笑いながら手を振る。
「大丈夫。会員の半分は、大学から始めたやつらだから。そうだ、カメラは持ってる?」
「持ってます。でも、使い方がよくわからなくて」
「じゃあ、次に来る時持ってきなよ。基本的なこと教えるから。俺は、だいたい毎日いるからさ」
「はい。よろしくお願いします」
梨佳は、ぺこりと頭を下げた。
「松本さんは、具体的に撮りたいものってあるの?」
「笑顔です」
「いいね、それ」
こうして、あたしの新たな生活が始まる。
この出会いはあたしにとって良い出会いでもあり悪い出会いでもあったのだけど。
でも、この出会いがなければ、これから起こる出来事に対する救いは無かったと思う。
それからあたしは、毎日この部室に通い始めた。
早くカメラの使い方を覚えて笑顔を撮る為に。
進まない。動かない。かなり大変な話です。




