第1話 あたしとあいつの出会い
TO:元ちゃん
Sub:初雪だよ!!
本文:おはよー、元ちゃん。
起きて寒いと思ったら、何と、雪が降ってたよ!!
もう、びっくりだよー。
さっき、大学のホムペを見たら、午前中は休講だって。
今日は、頑張って早起きしたのにー。
なので、あたしは今からまた寝ます。
元ちゃんは、お仕事頑張ってねー(^−^)/
「送信完了」
あたしは、いつもの日課であるメールを送信すると携帯を枕元に戻す。そして、メールにも書いた通り布団に潜り夢の世界へと旅立った。
あたしの毎朝の日課である「元ちゃんへのメール」が始まったのは去年のクリスマスイブからだ。元ちゃんというのは、一応あたしの彼氏である。まぁ、世間一般で言われるところの遠距離恋愛だ。
あたしと元ちゃんは、あたしがバイトをしているスーパーで高校生の時に出会った、向こうは旅とカメラが趣味だという5歳上のフリーター。元々、そんなに仲が良かったわけではない。きっかけは、これもまたクリスマス。
それは、あたしが高校3年のクリスマスだった。推薦での大学進学が決まり、バイトにせいを出していた時だった。
「クリスマスですか?別に予定はないですけど…………」
元々、あまり大きいスーパーではなくバイトの人数も多くなかったので店長にイブとクリスマスの両日の出勤を頼まれたのが始まり。
(まぁ、彼氏もいないし、家族と過ごすのもつまらないし、いっか)
「いいですよ、店長。あたし、出ます」
「本当!!いやー、助かるよ。松本さんが最後の頼みのつなだったんだよ」
「あはは、おおげさですよー、店長は。ところでもう一人はいるんですか?」
「ああ、市川君が出てくれるよ。じゃあ、頼むね」
そう言うと店長は店内へと消えて行った。
(……市川? 誰だっけ…………。あっ! 熊五郎だ!)
熊五郎というのはもちろんあだ名。本名は、市川 元気。何故に熊五郎かというとその外見が原因。熊は、身長が180以上もあり、高校時代は柔道部にいた猛者である。その上、髪も髭も長く、全体的にもっさりとした印象を与える人物だ。
しかし、そんな外見とはうらはらに性格はいたって温厚。面倒見も良いらしく、バイトからパートのおば様方まで大人気らしい。そんな感じで熊五郎というあだ名がついたみたい。
皆は、熊君、熊さんとか呼んでいるみたいだ。あたしは、あまりバイトが一緒になることが少なかったのであまり話したことはないのだけれど。
(熊五郎か、何か苦手かも)
あたしは、シフト表を見ながら早まったかもと今さら後悔をしつつため息をつきながらバイトへと戻った。
「それでね、なっちゃん。あたし、クリスマス両日ともバイト。相手が熊」
あたしはバイトから帰った後、自室で友人の夏樹に電話でことのてん末をを話した。
「えー、別にいいじゃん。一緒に組むの熊さんでしょ?」
「…………あたしは苦手なの。」
「梨佳は、誰だって苦手でしょうが。熊さんなら大丈夫でしょ」
「人事だと思って」
「だって人事だし。あたしはデートだもん」
「うう。…………裏切り者」
「はっ、裏切り上等。あたしだって努力したのよ。くやしかったらあんたも努力しな。あっ、キャッチだから切るよー。また、明日ね」
「はい、はい」
電話を切ると、あたしは携帯を枕にほうり投げる。すると、携帯はポスッと音をたて無事に着地した。
そして、あたしは、床に座りクッションを抱え込むとそのクッションに向かって叫んだ。
「熊五郎が何だ! 負けるもんかー」
あたしは、そう叫ぶと抱えていたクッションをドアへと投げつけ熊五郎への闘志をメラメラと燃え上がらせるのだった。




