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第一話

さて、さっきから矛盾の色が段々と色濃くなってきたかと思う

由実子は真面目な顔で言うのだけれど、正直なところ疑いの念しか出てこないのだ


由実子が言うには、二人の人を愛してしまったらしい

つまり、今現在、俺は由実子の恋人なのだから、俺以外でもう一人男が出来たということだろう

それを言い出したのは由実子本人で、別に話がそんな流れになった訳でもないのに突然、切り出し始めた

というか、俺はいままで由実子が浮気をしているかもしれないなんてことを思ったこともなかったし、疑わしいところも全く感じられなかった

でも、実際に由実子は現在進行形で浮気をしているのだ

由実子と付き合い出してついこの間三年を迎えたばかりで、そろそろ結婚を考えてもいい時期かと実は思っていた

年も、もう二人とも二十歳を越えているのだし、それに何より俺は由実子を愛していた

今でも愛している

しかし浮気をしていると突然に聞かされて、そのうえ、俺に対する大した反省や後ろめたさが感じられるといったこともなく、その気持ちも少し失せかけている

確かに由実子は可愛いし、昔からもててもいた

でも俺はそれだけで由実子のことを好きになったのではない

彼女の、年によらずしっかりしていて、悪いことは悪いと言えるような正義感のあるところが好きだったのだ

特に俺なんかは由実子と正反対といってもいいほどに自分の身を持て余していたのだから、尚更そんな自分と比べ、惹かれていた

それに、由実子の俺への深い愛も三年が過ぎた今でも、変わらずに信じていた

そんな由実子が浮気を…

実は今でも少しだけ信じがたいと思っているのだ

夢であれと願う気持ちが強い

由実子がそのことを話してからというもの、それに対して俺が何も言わないものだから、二人の間には束の間の沈黙が流れ続けている

頭がまだ事実だとはっきりとは受け入れていないので、一体何を言っていいのかも分からず、ただ黙っていると、少しずつ少しずつ、実感が沸いて怒りがこみ上げてきた

浮気とは何だ?

俺という男がいて、他の男が出来た?

どういうことなんだ

俺はあふれ出る感情に任せて、やっと口を開いた

「なんで浮気なんてするんだよ?」

「俺のことはもういらないってことか?」

「俺はずっとお前を愛してたってのに、そんなのってあるかよ…」

まずは最初に怒りがやってきたが、言葉を発しているうちに最終的には泣き出しそうな程、心にぽっかり穴が空いていた

由実子に裏切られた

今までこんなにも信じていたのに

そんな被害的な思いが、頭の中をぐるぐると渦巻く

頭を抱えて、ため息をついた

それを見ていた由実子が口を開く

つまらない弁解の言葉かと思った

もしそうだったなら、もしかすると今なら許していたかもしれない

しかし、そうではなかった

「浮気は浮気だけど、そんな軽い気持ちじゃないわ。あなたももう一人の相手も。わたしだって、今も昔も変わらずあなたを愛してるつもりよ。」

これは開き直りなのだろうか…

そう頭の中に巡り始めて、由実子のしっかりとした声が耳に残った

「そんなことを言ったって、どうせ俺を捨ててそっちへ行くつもりなんだろう。それなら、愛してるなんて嘘じゃないか…。」

首の垂れ下がった状態で言う

完全に怒りよりも裏切られた悲しみが大きいような気がする

もう一人の男の方に気が傾いているからこそ、わざわざ話したのだろう

そうでなければ、何も俺に浮気している事実など打ち明ける必要はないのである

「嘘じゃないわ。それに、あなたを捨てたりなんてしない。あなたが一緒に居てくれるなら、あたしはいつまでもここに居て、いままで通り生活をするわ。」

一緒に居る

そう聞いて、咄嗟に俺の方を取ってくれるのかと思った

俺は、由実子がなぜ自分の浮気について語ったのかということについての疑問も考えないまま、少しだけほっとした

垂れ下がっていた首が少しだけ上を向いた

そりゃあ、俺一人を見ていてくれないと嫌だけれど由実子が今すぐいなくなるのは辛い

いままで由実子に頼りっぱなしの生活であったし、一人の寂しさは拭いきれないだろう

それに愛する人が他の男にさっさと、とられていくのもどうかと思う

ということは、もう一人の男の方とは別れるということか

自然に考えが導き出されていた


また連載を始めました。少しだけ背伸びして書いてみたりしたのですが、どうでしょうか?感想を聞かせてください

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