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光国祭  作者: GT
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「さて、それではここにお越しの皆様に簡単では御座いますが、明日から始まるこの宴に関する説明を私がさせて頂きます。ご存知の方も多いかと思いますが、ここで行われる宴、『光国祭』についてですが、これを承認、主催をしておられますのがご存知我がドンラブ国国王、アシタカ=ラ・ホン=キダス陛下です」


 其の言葉に、見るからにVIP席という観客席上部に位置し、無駄に豪華な空間の中で、無駄に豪華な椅子に悠然と腰を下ろし、無駄に豪華な衣装をその貫禄の伺える体躯に纏い、そしてなんかもう色々残念な顔をこちらに向けたまま、スッと右手を持ち上げてアナウンサーの言葉に答えていた。

 その何でもないような一動作に観客は割れんばかりの声援で答えていた。


「そして今回の宴の実況を担当します『お嫁さんにしたいアナウンサーNO.1』アンケート第一位、『今最も注目を集めているアナウンサー』第一位、そして!『世界美少女コンテスト』第3位!私カワイ=コチャンと、解説は昨年同様S・A=ディスト氏でお送り致します!Sさん、よろしくおねがいします」


「ディスト、でいいですよ。はい、よろしくお願いします」


 先程とは違った種類の歓声が広がる中で、やはり僕は放心したまま、動くことができないでいた。

 急展開。そう、正に急展開だ。それも過去に例の無い程の。高校生時代、タクシーに轢かれたことが有ったけど、あの時ですら右腕が骨折していたのに「慣れてますから、大丈夫です」と言ってそのまま自転車で普通に家に帰って居た。その時の体験すら何でもない展開で有るかのように。

 今回のことは付いていくことすら出来ない。先程から聞こえる言葉も耳に入っては右から左。正に置いてけぼりという感じしかしない。


「さて、解説のディストさん。今回も開催されることが決定した光国祭ですが、やはり集まった選手は性別、年齢共に様々な様ですが、やはりこれは優勝者の予想には関係ないことなんでしょうか?」


「はい、そうですね。ご存知の方も多いと思われますが、ここに集まっている『異世界の魔術師』の選手達の使う魔法は特殊です。『言霊』による制御という噂なのですが、その効果を決定し得る物がこちらの世界の魔法とはかなり違います。我々の常識では、魔法とは自身の魔力、魔法の特性把握、そして扱う技術次第でその魔法の効果、威力、規模、継続時間等が変わります。しかし、ここに召還された選手達が扱う魔法は全く別の原理でその効果が変わるんです」


「ほう、それはどの様な?」


「はい、それが、『致命度』という物です。致命度が高ければ高いほど発動する魔法の効果は増大するというものです。例えば私とコチャンさんが闘技場で対峙しているとします。私が『メスブタ』と言葉を言います。その言葉がコチャンさんの中でどのくらい致命度があるかによって、その威力が変わる、というものです。

 今年も去年と同じく八人毎の予選、その勝者による本戦という形式をとるらしいので、予選ではそこに選ばれた八人で、致命度の高い言葉を選ぶとより効果の高い魔法が期待できるということですね」


「では、致命度の高い言葉をより多く覚えているものが優勝できるということですか?」


「そうなんですが、そこに制限がついています。出身地の言葉のみ使用できる、というものと、一度使用した言葉には魔力が宿らない、さらに使用する魔法の効果は使用者にも解らない、というものです」


「変わった制限ですね」


「そうですね。しかし、だからこその老若男女問わず平等に近い魔法戦が行える、とも考えられます」


「なるほどなるほど。自分が知っているだけではなく、相手の知っていそうな言葉も予想しなければならないと言う事なんですね。それは見ごたえが在りそうではありますが、しかしこの人気の秘訣はそこではないですよね?」


「えぇ。ご存知の通りこの人気の秘訣は、ずばり見栄えの素晴らしさがダントツであげられると思います。幻想的な光景、神秘的な光景、摩訶不思議な光景、様々な光景を紡ぎだす魔法であり、そしてその効果は相手の体を傷つけ血を流すことも無く勝者を導き出すのです。敗者のあの姿には背筋に昇るエクスタシーすら覚えれる程の光景も見られます。これで人気が出ないわけは無いでしょう」


「確かに。さて、それではここで去年の映像を少しばかり映したいと思います。これからお見せするのは昨年の光国祭でもっとも白熱したと言われる予選第3試合、試合経過から5分後の『予選の英雄』vs『最強都市』による、本戦進出を掛けたタイマンガチンコ魔術合戦の模様をご覧に入れたいと思います。その間、ステージでは明日から行われる予選の組み合わせを行いますので、結果が出るまで映像をご覧になりお待ちください」


 






 台風、とでもいうように感じたアナウンサーと解説の言葉の応酬が終わったと思うと、周囲にはゆっくりと暗闇が広がり始める。徐々に徐々に明るさを落としていく様はまるで映画館にいる時の様に、次第に手元がようやく見える程度にまで照度を落としていく。

 ブン、と小さな唸りが頭上から聞こえたと思い、僕はふと視線を上げた。そこには先程何回も見たことのある無駄に豪華な金色の小槌らしき物体が緑色に近い色を周囲に纏いながらクルクル回転していた。

 未だ意識も虚ろなままにそれを凝視していると、其の回転は次第に速度をまし、それに伴って周囲を漂っていた緑色のそれは密度と範囲を増していく。それが徐々に肥大していくと――


「さて、諸君。君達にはこれからすぐに予選の組み合わせを行ってもらう。A、B、C、D、E、Fという六つのグループに八人づつ、まぁその内一つはどうしても七人になるが、その選出をする。これからそれについて説明しようと思う。此方に集まってくれないか?」


 その言葉で視線を集めたその人物は、いつの間にかこのコロシアムの中央に立っており、その人物の前には正方形のテーブルらしきものが置かれていた。そのテーブルの上には紙か何かに数字が書かれており、『1』から始まる其れは『47』と書かれている物が、縦六列、横八列に数字順に並べて置かれていた。 


 いかにも不本意ながら、という感じで数名が動き出し始めていた。中には鼻息も荒く「優勝、優勝・・・・・・」と念仏の如く繰り返す青年やら少女やら若いお姉さんやら三十路のお姉さんやらが目に入ったが、そんな人は半数もおらず。

 ノロノロと動き出した多数派の僕は、其の言葉に従いこそしたものの、視線は先程から頭上に映し出され始めていた映像に釘付けになっていた。


「集まったようだね。それでは説明しよう。ここに、『1』から『47』まで書かれた札がある。この札には既にAからFまでのグループ名が刻み込んである。まぁ見えないようになっているが。それを手にした瞬間、そこに書かれている数字がグループ名の表示に変わると捕らえてくれて構わない。先着順で札を手にして構わないから、誰でもいいからまず手に取ってみてくれ」


 其の言葉に顔を見合わせる人が多い中で、やはりというかノリノリで手を伸ばす人が数名居た。誰とは言わないけど。それに手を触れた瞬間、AやDという風に数字から英字へと変更している光景を見て、次第に近くに居た人から順に手を伸ばし始めていた。

 次々と、着々と決まっていく予選の組み合わせを他所に、僕は未だ頭上の光景に釘付けになっていた。

そこに映し出されていた光景は確かに幻想的だった。色取り取りの色彩に、大きさも巨大な物から小さい物まで。流れるような動きをみせるものや、一瞬にして飛んでいく弾丸の様な動き、そして、そのなかで一番眼を惹かれたのは――


「君で最後だ。残っているのはこれだけ。これに手を触れて貰えば今日は終了だ。明日に備えて休んで貰うことになる。残り一人という時点で結果は解る。だが、だからといってこのまま終わるというのも締まらないしな。急かすのも忍びないのだが、これに手を触れて貰えないかね?」


 その言葉に、僕はふと今何を言われたんだっけ?とゆっくり思い出すようにしながら、あぁ、と小さく呟くとテーブルにポツンと残されていた札に手を載せた。途端、其処から光が上がり、頭上に映っていた映像が切り替わる。Aから順番にFまで横一列に並び、その英字の下には都道府県の名称がずらりと並んでいた。途端に沸き起こる歓声、ある県の名前を声の限り叫ぶ声援、アナウンサーのお姉さんの組み合わせを読み上げる声、周囲に広がる戸惑いの呟き、あるいは決意を胸に、自分を鼓舞するように自分の頬を張る音、イガイガとした怒声、不敵に聞こえる笑い声、微かにきこえる眼鏡をずらす音、ため息、衣擦れ―――


「それでは、以上で準備は終了となる。明日の予選開始までは各自個室にて休息となる。部屋は多少狭いと感じるかもしれないが、そこは我慢して貰うしかない。移動に関しては私の体に触れると、その瞬間に部屋に移動できる。休みたい者から私に触れると良い」


 其の言葉にいち早くこの場から去りたいというように数名が小走りに近寄り、肩の辺りに手を伸ばし、触れた、と思うと其の姿は消えていた。それに続いて五人、十人、と続々と周囲から人が減り始める。

 気がついた時にはそこには五人ほどしか居なかった。


「・・・・・・例年、何人かはこのように残る物なのだな。君達もまた、何か疑問でもあるのかな?」


 口元に浮かぶそれは苦笑のように見られるが、その瞳はどこか嬉しそうな色をしていた。その言葉に対してすいと体を前に出したのは、銀縁眼鏡を掛けたエリート然とした青年。


「例えば。県境、その地方を跨ぐ様にある名称の物は、どの様な判定になるのでしょうか?」


「ふむ、それについて答えよう。そこに地名度があり、その地方の物と認識されていればそれは効果を発揮する。しかし、境を越え隣の地方の人間が同じ言霊を紡いだ瞬間、その効果は霧散する。ということが過去一度だけあった。確定ではない以上、過信は出来ないだろうが」


 その返答を聞いて一つ頷くと、その眼鏡エリート青年は相手の体に手を伸ばし――次の瞬間にはその場から消えていた。その場に残っているのは僕を入れて四人となる。


「ねぇ、罰則ってのはどうやっても回避、というか、何とかならないの?それがなけりゃ楽しめるんだけど」


 そんなことを口にしていたのは、大学生のようにも見られる綺麗な顔をした女性だった。僕よりもやや歳は上に感じられるけど。その綺麗な顔をやや難しい表情に変えながら、どこか縋るような視線で其の人物を見ていた。


「こればかりはどうにもならんのだよ。確定、というより、前例ではそーだろうということなんだがな。前年の優勝の褒賞に対して、その埋め合わせの如く逆の効果を次の年の敗者が被るらしいのだよ。名誉を得辛くなったり、怪我をしやすくなったり、とね。前年の褒賞から考えると、まず今年の敗者は・・・・・・」


 その言葉尻は濁すように消えていたが、それ以上は言わなくてもという意思表示のごとく、その女性は首を力なく左右に振ると、すたすたと歩き出して、其の手を持ち上げ――この場から消えていった。


「さて、残っているのは君達だけだが。何か聞きたいことでもあるのかね?」


「あぁ、いやさ。気になったことあんだけどさ。3回目だっけ?優勝者の奴がこっちに住んでるって言ってたよな?そいつって今どーしてるんだ?」


 そんな砕けた話し方をしていたのは、あの性格に眼を瞑れば頼れそうな青年だった。


「・・・・・・聞きたいか?」


「ん?あぁ、できれば」


「そうか・・・・・・。いや、そうだな。実はな、家のメイドをやってる」


「・・・・・・は?」


「この世界では高位の魔法使いの結婚に関してちょっとした決まりがあってな。その国の異性としか結婚ができないのだよ。それで、その・・・・・・な。いや確かに私としては反対というわけではないのだがな。いかんせん、私はこの国の魔法使いとしては頂点の位置にいるだけに、その仕来りも無碍に出来ずにな。それを聞いた彼女が、『それならメイドで住み込む』と言い出し始めて・・・・・・。あぁ、それでまぁどうでもいい情報かもしれないが、君達が此方の世界に住むと、その魔力量はかなり異質な存在となる。はっきりと言えば私の上を行く。だからまぁ・・・・・・サカラエナイトイウカサッシテクダサイ」


「え、あ、あぁ、うん。その、うん。がんばれ」


 先程までの貫禄をかなぐり捨てるようにその場に体育座りのように蹲り、顔を膝の上に乗せて負のオーラを放ちだした其の相手に、其の青年は居た堪れなくなったのか肩を摩ろうとして――其の瞬間には消えていた。え?この空気残して行くの?てか今のは素で触れたら飛ばされるっての忘れてただけじゃねえ?とかグダグダ考えていた。あぁ、残ったのは僕とこの人だけか・・・・・・。


「その、顔を上げてください。大丈夫ですよ。きっと。それより、質問してもいいですか?」


 そんな僕の投げやりな慰めの言葉に、彼は体を動かすことも無くボソリと「どうぞ」とだけ答えた。うわ、暗いなぁ。


「先程の映像ですけど、『最強都市』というのは、東京ですよね?」


「うん、毎年優勝候補だよ」


 あぁ、言葉使いにも覇気が微塵もない!どうすれば元に戻るんだろう!ていうか、この人この国の魔術師の頂点とか言ってたけど、こんな姿衆目に晒して大丈夫なのか?


「えっと、それじゃぁ『予選の英雄』についてですけど、これはやっぱり・・・・・・」


「うん、君の地方のことだよ」


 やはり、と僕は思った。先程見た光景の中に、一際幻想的な光景があった。確かに派手さ等それ以上の物もあったけど、やはり自分の居る所の物があれ程美しい光景として映し出されたときには、心を奪われたかのような思いだった。


「『予選の英雄』というのは?」


「そのままの意味だよ。本戦には一度も出たことが無いんだけど、何時もおしいところまでいくんだよね。しかもその魔法も派手な、というより幻想的な光景が多い。『最強都市』は逆に威圧的な光景が多いね」


 成程、やはりそんな感じか。まぁ、本戦にでたことがないというのは流石に先代選手達に対しもう少し頑張って欲しいとか思いはした物の、それでも『予選の英雄』等と呼ばれるほどには善戦しているのだからそれ以上は、と考えた。というか自分も最低限其の名に恥じないくらいには善戦しないと。

 とはいえ、目の前のこれどーしよう?うーん。まぁ、放置でいいか。

 考えが纏まったところで、僕も休むべく其の人物に向かって歩き始める。


 さきほど流れた映像、後半の二人きりで対峙している場面が脳裏に蘇る。『最強都市』の二十代半ばらしき女性と、『予選の英雄』の高校生らしき少年。互いにかなり知名度の高い言葉の応酬をしていたかのようで、繰り広げられた魔法は観客を沸かせ、その効果を相殺しあいながらも数十分と対峙していた。其の光景にあってその二人は――


 そっと目の前の人物の肩に触れる時、僕もあの映像の二人と同じように、これから起こる光景を夢想し、期待に瞳を輝かせて口元に笑みを浮かべていた。


 



 拙い文でごめんなさい。これが僕の限界です。


 ここから先の展開はまだ未定です。最初は東北は東北で予選、北陸、関東、近畿とやっていこうと思ってましたけど、ランダムにしました。

 予選も全部書くかも未定。一応『予選の英雄』というのは作者的に自分の出生地のことは書きやすい為、適当な二つ名つけて有利っぽいイメージつけただけで。


 今後の掲載は不定期となります。そして僕は文才が無い為投稿速度は期待できません。ごめんなさい。


 誤字、脱字のご指摘、感想、意見等貰えましたら唄って踊って喜びます。

 

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