真っ白い世界
真っ白い世界があって、真っ白い存在がいて
その彼女が、真っ白いお皿に、
火星と金星と、地球を盛りつけてくれる。
僕はそれを、真っ白いフォークで口に入れる。
火星と金星は、ゴリゴリ、ゴリゴリとした。
噛んでも噛んでもゴリゴリ、ゴリゴリとした。
地球を口に入れる。
地球はやわらかかった。
噛むと、汁が出て来た。
噛めば噛むほど、汁が溢れ出てきた。
それは、血であったり、肉汁だったり、ただの透明な汁だったりした。
地球には、味があった。
それは、怒りだったり、憎しみだったり、欲望だったりした。
嫉妬だったり、妬みだったり、孤独だったり、悲しみだったり、敗北だったり、コンプレックスだったりした。
地球には、大きな種があって、僕はそれを真っ白いお皿にプッと吐き出した。
カランとそれは小気味のいい音をたてて真っ白いお皿の上をすべるように転がった。
それは真っ黒い色をしていた。
ゴツゴツとドス黒い色をしていた。
それに真っ白い天使が真っ白いジョーロでその地球の種に水をかけると、芽を出した。
それは、ぐんぐんぐんぐん大きくなった。ぐんぐんぐんぐんと大きくなった。
そして、花が咲き、実がなった。
それは、人間だった。
人間は真っ白い色をしていたが、大人になるとドス黒い種を吐いた。
その種はまた成長し、花が咲き、実がなり、人間が生まれた。
人間はどんどん増え、たくさんの人間がこの世界を満たした。
やがて世界に溢れた人間は戦争を始めた。
ありとあらゆる武器を使って殺し合った。
それは、刀であったり、ナイフであったり、弓であったり、銃であったり、爆弾であったり、ミサイルであったりした。
真っ白い世界は、人間の血で真っ赤になった。
人間の流した真っ赤な血と涙が、やがて、真っ白な世界を満たし、真っ赤な海になった。
真っ赤な海は、荒れ狂い、グルグルグルグルと渦を巻いた。
グルグルグルグルと渦を巻く真っ赤な海の中に、やがて新しい生物が生まれた。
それは小さいものだったり、大きなものだったり、醜いものだったり、かわいいものだったりした。
それは、お互いを食べ合い、力の強いものが生き残った。
やがて、生き残った生物たちは進化をし、形を変えた。
そして、いつしかそれは人間になった。
人間は数を増やし、世界はまた人間に満たされた。
人間は、また戦争を始めた。
人間たちは殺し合った。
たくさんたくさん殺し合った。
憎しみ合い、怒鳴り合い、罵り合った。
ありとあらゆる方法でお互いを傷つけ合った。
ありとあらゆる場所で、お互いを殺し合った。
世界の果ての果てでも、人間は殺し合った。
殺して殺して殺し合った。
僕たちはそれを見て泣いた。
真っ白い存在も僕も天使も、みんな泣いた。
たくさんの涙が世界に降り注いだ。
たくさんの涙が人間たちの流したたくさんの血を洗い流していく。
世界はまた真っ白い世界になった。
もうそこに人間はいなかった。
人間はみんな消えてしまった。
自分たちですべてを殺し尽くし、消えてしまった。
世界はただ真っ白くそこにあった。
ただ真っ白く――
もうこれ以上何もいらないと言うように――。




