王太子殿下が隣国の王女を選ぶなら、わたくしたち婚約者候補は、全員で殿下の後宮に入ります!~みんな殿下を愛しているから、こうも諍いが起こるのですわ!~
「アレクセイ殿下の婚約者が、ポーレット姫に決まりましたわ!」
ヴィクトリア様が、王宮の学習室に入ってくるなり言った。
わたくしは頭が真っ白になった。
え……、そんなことってある……?
隣国であるタラスク王国のポーレット姫が選ばれたというの!?
いくらなんでも、それはないのでは……!?
わたくしたちはアレクセイ殿下の婚約者候補として、八歳の時から十年も王太子妃教育を受けながら、王妃殿下とアレクセイ殿下の無茶な要求に対応してきた。
王家に選ばれているから、両親にわたくしたちの状況を訴えても、婚約者候補を辞めることはできなくて……。
その上、最近のアレクセイ殿下は、留学してきたポーレット姫とイチャイチャして……!
「ついに『真実の愛』を見つけた!」
とか、おかしなことを言い出して……!
これで他国の王女と結婚するなら、わたくしたちの十年を返せ、と思っていたのよ……!
ヴィクトリア様のお顔は真っ青よ。
そうなるわよね……。
ヴィクトリア様は、ラディウス侯爵家の次女。黄金の巻き毛と、菫色の瞳を持つ、とてもお美しい方。
お父上は宰相をされているから、こういう情報を手に入れるのが早いの。
ヴィクトリア様は、わたくしたちが勉強している丸テーブルのご自分の席についた。
「そんなことってあるだか……!?」
平民の出の聖女であるハンナ様が、平民言葉丸出しでつぶやいた。
ハンナ様は、平民らしい茶色の髪と瞳で、小柄でスタイル抜群な方。
「酷すぎだろう」
ミーレス辺境伯家の長女であるレジーナ様が、小さく舌打ちをした。
レジーナ様は銀の髪をかき上げて、紺色の目を細くする。だいぶお怒りのようだわ。
「わたくしたち……、これからどうなってしまうの……」
青い目に涙を浮かべているのは、ウォロ伯爵家のナタリア嬢よ。まっすぐな黒髪が印象的な方。
「シンプルに、ひどいですわ!」
わたくし――ベラトール侯爵家のエカテリーナは、縦ロールに巻いた金髪を、片手で勢いよく後ろに払った。
この五人が、これまでどれだけ理不尽な王太子妃教育に耐えてきたと思っているの!?
わたくしは皆様を見まわした。
「これまで王太子殿下と王妃殿下のスピーチ原稿を書いてきたのは、わたくしたちよ。今後はポーレット姫にやらせるつもりなのかしら?」
「あたしらにアレクセイ殿下とポーレット姫の通訳をずっとさせる気か? 閨でも? あいつら、言葉を覚える気ないぞ!」
レジーナ様ったら、辺境訛り丸出しよ。
「側近にやらせろよ、という内容の仕事をずっとやらされていたわよね」
ヴィクトリア様も、だいぶ言葉が荒いわ……。
「料理人の代わりに料理をしろだの、侍女の代わりに紅茶を淹れろだの、好き勝手していたわね」
ナタリア嬢の頬を、涙が一筋、伝い落ちる。
「王妃殿下……、オラのこと下女だと勘違いしているフリして、毎度毎度、侍女のメイド服を洗わせようとしてきて……! 侍女に紅茶をかけて虐めるのも、たいがいにせぇよ!」
ハンナ様が、テーブルを両手で叩いた。
その時――。
学習室の扉が勢いよく開き、浮かれた様子のアレクセイ殿下が入ってきた。
王家の血筋を示す燃える赤毛に、翡翠の瞳を持つ、甘い顔立ちの王子様。
「皆の者、ご苦労である! ヴィクトリアから聞いたと思うが、私の婚約者がポーレット姫に決まった! そこで君たち五人には、嫁ぎ先を下賜することにした! 喜ぶが良い!」
アレクセイ殿下は、わたくしたち一人一人に、自らの手で封筒を渡してきた。
「じゃっ、そういうことで!」
アレクセイ殿下は、片手を上げることで別れの挨拶とし、学習室を出ていった。
「もう嫁ぎ先が用意されたのか……。早いな」
レジーナ様が、封筒に入っているカードを出した。
わたくしたち四人は席を立ち、全員でレジーナ様のカードをのぞき込む。
そこには、大神殿長の名前が書いてあった。御年、七十歳。
「えっ、待ってちょうだい……」
ナタリア嬢も立ったままカードを出した。
王弟殿下。国王陛下の同腹の弟で、まだ三十歳。年齢だけなら、大神殿長よりは良いわね。すでに四人の奥様が、不審な死を遂げている方だけれど……。まあ、年齢だけならね……。
「オラ……、レジーナ様の義理のばあちゃんになるみてぇだ……」
「あら、わたくしも……、レジーナ様の義母になるようですわ」
ハンナ様とわたくしは、二人共、辺境伯家ですのね。
辺境伯家には、嫡男がまだ独身で残っている。婚約者に逃げられたらしい。それなのに、同年代の嫡男ではなく、祖父と父……。
「ヒェッ!」
ヴィクトリア様が、聞いたこともない声を出した。今のは……、悲鳴……?
わたくしたちはヴィクトリア様のカードを見た。
アレクセイ殿下に側妃として嫁ぐように、と書いてあるわ!
うわぁ……、これは「ヒェッ!」よね……。
これからもヴィクトリア様を利用しようという気持ちしか見えない……。
「こんなん、ドン引きだろ……」
レジーナ様が半笑いになっている。
「これは……、『誰が一番の貧乏くじか選手権』の開幕かしら……?」
ナタリア嬢が、無表情で面白いことを言う。
「わたくし、義母と共に辺境騎士団を率いて、王都に攻め上ってもいいかしら?」
「これはオラたちで王都を火の海にするしかねぇな……!」
わたくしとハンナ様は、固い握手を交わした。
「アレクセイ殿下の側妃……。なに、これ……」
ヴィクトリア様は、まだ現実が受け入れられていないご様子。……当然だわ。
ああ、やっぱり王都を攻め落とすしかないのかしら……?
「この新たな嫁ぎ先を両親に見せたら、わたくしはすぐに王弟殿下に嫁入りさせられるわ。もう終わりよ。はい、死んだ!」
ナタリア嬢が、丸テーブルに封筒を投げ出す。
すごい投げやりだけれど……、気持ちはわからなくもないわ……。
「王弟殿下の奥様たちの不審死には、実はちゃんとした理由があって、王弟殿下は普通の素敵な方で、ナタリア嬢は溺愛されてハッピーエンド……」
という、わたくしの言葉は、ナタリア嬢によって遮られた。
「絶対、ないから! わかっているでしょう! 王弟殿下は目つきが普通ではないわ!」
「そうね……、ごめんなさい……」
わたくしは、舞踏会で見た王弟殿下の姿を思い出した。たしかに、なにか異様な雰囲気があったわ……。
「みんなと離れ離れになって、じいさんに嫁ぐのか……。王家もやることエグいな……」
レジーナ様が、ため息を吐く。
「王家の考えはわかりました。こうなったら、全員でアレクセイ殿下に嫁ぎましょう! 側妃は一人だけ、という決まりはありませんもの! 全員がアレクセイ殿下を心からお慕いしている、と訴えるのよ!」
わたくしは悪い笑顔で四人の仲間を見まわした。
ずっと苦労を共にしてきたのよ。
こうなったら、どこまでも一緒よ!
◇
ヴィクトリア様以外の貴族三人は、家に帰ると家族に向かって泣きながら訴えた。
「ヴィクトリア様だけ側妃なんて、ずるいわ!」
と……。
題して、『欲しがりな妹ムーブ作戦』よ。
「ヴィクトリア様と同じように努力してきたのに、側妃にもなれないの!? これまでの献身はどうなるの!?」
だとか……。
「アレクセイ殿下を愛しているの! アレクセイ殿下でなくては嫌……!」
みたいな、心にもないことだって叫んだわ。
平民聖女のハンナ様も、似たような内容を神殿で訴えた。
その結果、わたくしたちは五人揃って、アレクセイ殿下の側妃になることができた。
嫁入りは、ポーレット姫と同時。結婚式をしているアレクセイ殿下とポーレット姫の後ろに、五人でウェディングドレスを着て、並んで立っていた。
他国の皆様からは「いきなりハーレムか?」などと言われていたわ。
結婚式が終わると、わたくしたちは、アレクセイ殿下の後宮として用意された王太子側妃宮に連れて行かれた。
わたくしたちは五人で丸テーブルを囲み、紅茶とスコーンをお供におしゃべりタイムよ。
「今夜はアレクセイ殿下とポーレット姫の初夜よね」
ヴィクトリア様の言葉に、わたくしは「そうね」とうなずいた。
「わたくしたちの方には、アレクセイ殿下は来ないわよね……?」
ナタリア嬢は不安そう。
「来たら迎え撃つまでですわ!」
ヴィクトリア様がカッと目を見開いた。怖い。
「そろそろ来るはずよ」
わたくしが答えるのと同時に、部屋の扉がノックされた。
「入れ」
レジーナ様が命じると、侍女が入ってきた。
「アレクセイ殿下とポーレット姫が、側妃の皆様にお会いしたいそうです。ご準備を」
侍女はそう告げると、部屋を出ていった。
わたくしたちは、大急ぎで各自の部屋に戻って初夜用の夜着に着替え、その上からガウンを羽織った。
そしてまた、元の部屋に集まる。
お茶会の痕跡は、侍女によって消されていた。
アレクセイ殿下とポーレット姫が来ると、全員でひざまずいてお出迎えした。
「今夜、お前たちに言っておくことがある! 私が愛しているのはポーレット、ただ一人! お前たちを愛することはない!」
はい、出ました! 定番のお言葉!
金髪碧眼のポーレット姫は、わたくしたちの前で勝ち誇った顔をしていた。
わたくしたちは、予定通り、全員で泣き崩れる。
この十年間の苦痛を思い出すと泣けてくるもの……。
「わたくしたちはアレクセイ殿下を愛しているのに!」
「側妃として娶ってくださったのは、アレクセイ殿下も愛してくれているからでは!?」
「オラの愛は、アレクセイ殿下に届いていねぇんだか!?」
「一かけらの愛も……、いただけないのですか……?」
「それでも、わたくしたちはアレクセイ殿下を愛しています!」
「愛しているのです! アレクセイ殿下だけを愛しているのです!」
わたくしたちは全員、必死でアレクセイ殿下に訴える。
『愛している』の大合唱よ。
ポーレット姫は顔を引きつらせていた。
「いやあ、そう言われてもなあ……」
なんて、アレクセイ殿下はまんざらでもない様子。
ポーレット姫は、そんなアレクセイ殿下に鬼の形相。
「もう戻りましょう! 今夜は、わたくしとの初夜ですわよ!」
ポーレット姫がアレクセイ殿下の腕を引いて、部屋を出ていく。
わたくしたちは廊下に出て、涙ながらにお見送り。
アレクセイ殿下は、わたくしたちを何度もふり返りつつ去っていった。
わたくしたちは、その背中に「アレクセイ殿下、必ずまた来てくださいませ! 愛しているのです!」などと叫びまくった。
これでポーレット姫が障害となって、アレクセイ殿下をこの王太子側妃宮に近づけないようにしてくれると良いのだけれど……。
さて、上手くいくかしら……?
◇
翌日になると、王妃殿下が王太子側妃宮にやって来た。
来ると思っていたわ。
備えは万全。
昨夜のわたくしたちは、結婚式で疲れていたけれど、がんばった!
丸テーブルの中央に蝋燭を一本だけ立てて、順番に泣ける話をしていったの。
生き別れの親子の再会、転生して再び巡り会えた恋人たち、番を失い絶望する竜人族、愛する人やペットとの死別……。
用意したバスタオルがぐしょ濡れになった。
そうして迎えた朝、王妃殿下は、わたくしたちに最初の仕事を持ってきた。
アレクセイ殿下とポーレット姫が、初めて二人で国王陛下に朝のご挨拶をするから、文章を考えろと言うの。
自分で考えるか、自分たちの側近に考えさせればいいと思うのに……。
まあ、嫌がらせよね。
わたくしたちは泣きはらした顔をして、王妃殿下の前に並んだ。
「できません……」
わたくしはバスタオルに顔を埋めた。
ああ、ハッツィー……。忠犬のハッツィー……。愛馬にまたがり遠征に行った騎士を、いつまでも待ち続けたハッツィー……。
わたくしは声を上げて泣いた。
他の四人も、なにかしらを思い出して泣いていた。
「そんなに泣く……!?」
王妃殿下は引き気味だった。
「これは泣くべよぉ……」
ハンナ様などは、床に崩れ落ちた。どのお話を思い出しているのだろう……? 極寒の北方に置き去りにされながらも生きていた二頭の犬、ターロスとジールのことかしら……?
「ゴンズ……、お前たちだったのね……」
ナタリア嬢が小声でつぶやきながら、顔にバスタオルを押しつける。
「無理ですわ……。書けません……」
「王妃殿下、お許しを……」
ヴィクトリア様とレジーナ様が、号泣しながら断った。
「まあ……、婚約者候補になって十年だものね……」
王妃殿下は納得したようで、わたくしたちに労わりの言葉をかけて去っていった。
そんな心があったのなら、なんであんな嫁ぎ先ばかり用意しちゃったかなあ!?
こっちはあんたらのせいで女の幸せを諦めて、五人で楽しみながら生きる選択をすることになったんじゃい!
どうしてくれるんじゃい、ワレェ!
思わず領地訛りが出るほど腹が立った。
今頃になって労わられたって、もう遅せぇよ!!!
◇
それから半年ほどは、アレクセイ殿下はポーレット姫の寝所にしか行かなかった。
ポーレット姫が良い仕事をしてくれたようね。
わたくしたちは庭で薔薇を育てたり、歌劇団員の男装の麗人を呼んで好きな場面を演じてもらったり、それぞれの得意な楽器で合奏したり、好きなことをして過ごした。
王太子側妃宮からは出られないけれど、もう王太子妃教育を受けなくても良いから、とにかく楽だった。
王妃殿下が仕事を持って来ても、引き受けることなく、こちらの用件をまくし立てた。
「それより、アレクセイ殿下にお情けをいただけるように、王妃殿下から頼んでくださいませ……!」
「いつまで待ったら、アレクセイ殿下は来てくださるのですか!?」
「寂しくて……、終いには震えちまうだよ……!」
「これだけ頼んでいるではないですか……!」
「アレクセイ殿下はどうされているのですか!?」
王妃殿下からは不敬だなどと叱られた。
だけど、忠犬ハッツィーのことなどを考えて号泣すると、王妃殿下はだいたい気まずそうに帰っていく。
へぇー、王妃殿下にも、そんな心あったんだー?
何度来ようとも、ワシらが仕事なんぞ引き受けるわけねえじゃ!
そんなある日、ついに、ヴィクトリア様のところにアレクセイ殿下のお渡りがあることが決まった。
隣国の大使が来るらしいから、わたくしたちにおもてなしの手伝いをさせたいのだろう。
冗談じゃない。利用されてたまるか。
その夜、わたくしたちは顔や腕に痣や擦り傷がある状態でアレクセイ殿下を迎えた。
こんな日に備えて、練習を重ねてきた傷痕メイクよ。
わたくしたちは全員で睨みあっていた。
「オラは聖女だ! 普通はオラが一番でねえか……!」
「辺境伯家は『王家の盾』であるぞ! わたくしが一番だ!」
「アレクセイ殿下を一番愛しているのは、このわたくしです!」
「王立学園での成績順ならば、わたくしが一番ではなくて?」
「アレクセイ殿下が指名してくれたのは、このわたくしよ!」
そのまま取っ組み合いの喧嘩風に、体術の訓練を行う。
メイクには触れないように注意しながらね。
歌劇団の団員の舞台メイクが激しかったから、傷跡もメイクで作れるのではないかと思ったの。じっくり見なければ偽物だとはわからないはずよ。
「愛が重すぎる……」
アレクセイ殿下は呆然とした顔をして、わたくしたちが技をかけあうのを見ていた。
男としての器が小さい方で良かったわ。それなら全員で来い、みたいな豪快な方だったら困るところだった。
「抜け駆けは許さねえ……! オラ、絶対に許さねえぞ……!」
予定通り、ハンナ様が丸テーブルをひっくり返す。
アレクセイ殿下は王太子側妃宮から逃げ帰っていった。
◇
その後も、わたくしたちは、アレクセイ殿下が来ると連絡があるたびに騒ぎを起こした。
届けられたワインやケーキが毒入りだと騒いで、犯人はポーレット姫ではないかと泣き喚く。
庭の池や井戸に落とされかけたと訴えて殴り合う。
階段で背中を押されたから現場検証をしろと言って、アレクセイ殿下を突き落とそうとする。
祖母の形見のネックレスや、祖父のくれた万年筆などが盗まれたからと怒り、アレクセイ殿下に徹夜で全員の事情聴取をさせる。
ワインをドレスに浴びせかけられたらドレスが溶けたので、違法な薬物が持ち込まれているのではないかと騒ぎ、アレクセイ殿下に散々調べさせた挙句、元からそういうデザインだった、勘違いでした、とあっさり謝る……。
――そんなことを繰り返しながら、二年ほどが経過したある日。
わたくしたちにアレクセイ殿下から『渡るから自分たちで順番を決めろ』という内容の手紙が届いた。
それから五日後、ヴィクトリア様がご返信を出した。
『王太子側妃宮の庭から呪いの人形が出てきた』
という内容に、針山として使っていた針まみれの人形を添えて。
人形は、女性だということはわかるけれど、泥で汚れていて、誰なのかわからない状態。
それを聞いたポーレット姫が病気になり、アレクセイ殿下のお渡りは中止になった。
それから三か月後、わたくしたちにはお見合いパーティーが用意された。
わたくしたちを娶っても良いという国内外の独身男性たちが集められたの。平民から王族、若者から高齢の方、容姿もいろいろ、選り取り見取りよ。
「頼む、気に入った男に嫁いでくれ……。このままではポーレットの母国と戦争になってしまう……」
アレクセイ殿下は疲れ切った顔をして命令してきた。
最初から、そうしろよ!
こうして、わたくしたちはそれぞれ男性たち数人とデートを重ねた上で、選んだ男性と結婚できることになったのだった。
ヴィクトリア様は、ポーレット姫の兄である隣国の第二王子の元へ。あのポーレット姫の兄なのに、まともなのだそうよ。
レジーナ様は、弓矢の話で盛り上がったとかで、王国軍の将軍を選んだ。
ナタリア嬢は、結局あの王弟殿下に嫁いだ。目つきが普通ではなかったのは、猛禽類のような目でナタリア嬢を狙っていたかららしい。四人の奥様の死にも、真っ当な理由があったのですって。本当に!? 本当に真っ当な理由なの!?
平民聖女のハンナ様は、前からハンナ様が好きだったという神官と。
そして、わたくしは……、レジーナ様の兄上である辺境伯家の嫡男に嫁いで、いずれは辺境伯夫人になることに……。まさか、このわたくしが、レジーナ様の義姉になるとはね……。
遠回りをしたけれど、それぞれ気に入った方に嫁げることになった。
ヴィクトリア様が隣国から帰省する時には、またみんなで集まるつもりよ。
お互いに手紙だって書くし、プレゼントだって贈りあうわ。
わたくしたちは、これでお別れではない。
付き合い方が変わるだけ。
結婚しようと。
どれだけ距離が離れようとも……。
心だけは共にある。
わたくしたちは、これからもずっと仲間なの。




