第6幕 プロローグ
明香里先輩視点です。
私たちオカ研に海月ちゃんが加入してから三週間、すっかりと空模様が冬色に染まっている。もうそろそろ年末と言っても差支えのない季節になっていた。ということは、後三ヶ月もしないうちに私も卒業となる。卒業……と言っても、しばらくはこのキャンパスを離れることはない。海月ちゃんと顔合わせをしたあの日、私は柳田教授に大学院への進学を誘われていた。やりたいこともなく、まだ就職も決まっていなかった私はその誘いを受け、進学することにした。でも…………確かにキャンパスは離れないけど、きっと毎日研究漬けになっていって、今みたいにオカ研の部室に通うことは難しくなるだろうな。もしかしたら、たまになら顔を出せるかもしれないけど、それはその時になってみないとわからない。
部室にあるソファから窓の外を見る。外はしんしんと雪が降っていた。そういえば、去年の今頃もこうして雪が降り積もって、三人で雪合戦をしたっけ。あの時は楽しかったなぁ。カケルっちが陽ちゃんの眉間しか狙わなくって、顔面に雪玉を浴び続けた陽ちゃんも、寒さで唇が真っ青なのにおでこだけ真っ赤になってて大笑いした。今年は海月ちゃんもいるし、もっと楽しくなると思ったんだけどなぁ。私は誰もいない部室をソファの上から見渡す。あの日からオカ研は一度も全員揃っていない。海月ちゃんは基本的に毎日部室にいるけど、今日はもう帰っちゃった。同じく、陽ちゃんも基本的には毎日来るけど、海月ちゃんを迎えにくるだけって感じで、そのまま部室に留まることはない。私はもう卒業に必要な単位を、八月の時点でほぼ取り終わっているから部室にいることが多い。おかげさまで、海月ちゃんともほぼ毎日一緒にいるから、だいぶ普通にお喋りできるようになった。最近では隣に座っても逃げなくなったんだよ。本当に警戒心の強い仔猫みたいで可愛い。
そして、カケルっちは…………あれ以降、部室に一度も顔を出していない。聞いた話によると、講義もずっと出ていないみたい。心配になってRAINを何回か送ってみたけど、『すみません』って返事がくるだけ。仲のいい陽ちゃんなら何か知ってるかもしれないと聞いてみたけど、「今は少しだけ……時間をください。必ず僕が何とかします。」って言ってた。正直、これ以上私ができることはないと思う。なら、カケルっちのことは陽ちゃんを信じてみる。今は時間が必要なだけ。
あぁ、それにしても…………部室ってこんなに広かったっけ?私と陽ちゃん、カケルっちの三人でいる時は少し手狭に感じていた。海月ちゃんも加わった今、もっと狭く感じると思っていた部室は、予想とは違って広く、そして静寂に包まれていた。
もうあの頃には戻れないのかな?また海月ちゃんも含めて、皆で笑い合える日がくるといいなぁ……。私は一人、ソファの上で膝を抱え、そこに顔を埋めた。




