第4章 夢
夢を見ている。いや、これを夢と言っていいのかな?わからないけど、夢としか表現できない。だって僕は、さっき布団で意識を手放した、つまり寝ているんだから。うん、じゃあきっと夢なんだろう。どこまでも沈んでいく感覚があり、やがて底についたのか、僕は真っ暗闇の中に一人で佇んでいた。そこは本当に暗い、まるで何かの映像で見た深海のような暗さだった。ただ深海と違うのは、ここは生命の影なんて何もなく、無音と言う音を拾った耳がキーンと鳴り響くような気がする。そして何より大事なのは僕がこれを僕の見ている夢だと認識していることだ。あー、そういえばこういう夢を夢だと自覚できるのをなんて言うんだっけ?なんだったっけ?もう少しで答えが出てきそうなんだけど…………こんなことなら普段からちゃんと勉強しておけばよかった。そんなどうでもいいことで頭を悩ませてたら、僕の目の前にお馴染みの白いボードゆっくりと浮かび上がってきた。ですよねーって感じで、大体予想はしていたけどさ。
『やぁ、如月陽太。元気にしているかな?
今日はここまで“オレっち”を楽しませてくれているお前に、面白いことを教えてあげようと思って意識をこっちに持ってきたよ。
こんなことするのはお前が初めてなんだぜ?“我”に感謝してほしいな。』
恐らくこのボードに書いている“意思”こそが、セレクターの力の源とも言える悪魔なんだろう。それにしても、何が感謝だよ。この力のせいで僕の人生、割ととんでもない事になってきたぞ。まぁ、最初の頃は何も考えずに調子にのってたのは否定できないけど…………大体、僕のことだけ知られていて、お前のこと何も知らないのは不公平だろ。せめて名前くらいは教えろ。
『“朕”に名前などない。だがそうだな…………お前の恥ずかしいセンスに合わせて言うなら、“余”のことはこれからストーリーテラーと呼ぶがいい。』
恥ずかしいセンスで悪かったな!だけど、ストーリーテラー………か。不覚にも響きがカッコイイと思ってしまった。バカにされたのも相まって、何か悔しい。
『気に入ってくれたようでよかったよ。さて、では本題に入ろうか。
面白いことを教えてやると言ったな。実は最初にお前にこの力を貸してあげた時に、始まりの代償をいただいている。“アタイ”が長くお前で楽しむための仕掛けだよ。そのおかげで長く楽しめているし、もしかしたら………………ま、それが何なのかはせいぜい自分で答えを探してみな。』
は?なんだよ始まりの代償って?それにもしかしたら何だよ?中途半端に気になる言い方をするな!
『おっと、そろそろ時間だ。じゃあ、楽しんで答えを探してくれたまえ。』
――――――――――――――――――――――――
目が覚めると、寝ていたはずなのにどっと疲れていた。動悸がする。夢の中ではたった数分くらいの出来事に感じたのに、カーテン越しに窓を見ると、もう日が昇っている。隣を見ると、海月が僕の腕にしがみついて寝ていた。一応海月には僕が使っていたベッドを宛がっているんだけど、また夜中に僕の布団に忍び込んできたんだな。
夢の内容を思い出す。全て鮮明に覚えている。そして、あれは正しく悪夢と言っていいだろう。悪魔…………ストーリーテラーは始まりの代償、その答えを探してみろと言っていた。考えてみるけど一向に思い浮かばない。一体なんなのだろうか。今までわからなかったぐらいだし、目に見えたりするものじゃないのは確かだけど。まるで魚の小骨が喉にひっかかったような、なんとも言えない気持ち悪さが僕の心に広がっていった。
始まりの代償、一緒に考えてみてください。




