表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可能性の選択  作者: 桃鍋
41/48

幕間 誰がためについた嘘

翔視点の幕間です。

その嘘は誰のためについたのか……

 アパートに帰り着いた俺はカバンを乱暴にベッドに放り投げる。自分自身にイライラして仕方がなかった。そしてそれが何の解決にもならないこともわかっているから、終わりのない自己嫌悪に陥る。

 何故、俺はあの時正直に言わなかった?俺は既にあの本を読み終わっている。それも一度だけではない。他にヒントはあるんじゃないか、見落としがあるんじゃないか、そしてアイツを救える方法が何かあるんじゃないのか。そんなありもしない可能性にかけて、本を全ページ読み返した回数はゆうに十回を超えていた。だけど、何度読んだところでそこに書かれている内容が変わるわけがない。読み終わる度に俺の心に訪れたのは、受け入れ難い事実と、深い絶望だけだった。

 壁に背を預け、そのまま床に崩れ落ちるように座り込む。頭では全て理解している。あぁそうさ、わかっている。あの場で嘘をついたところで、あの場の誰にも、なんのメリットもなかった。情報を開示せず、俺一人で抱えこんで考えたところで何かが変わるわけではない。真実を告げることで、先輩と海月ちゃんの顔を曇らせたくなかった。アイツの……陽太にこれ以上過酷な運命を知らせたくなかった。いや、違う。それらは全て、結局のところ俺のエゴだ。そんなことを思いながら部室に行ったところで、皆にどんな顔をしたらいい?なんて声をかけたらいい?もう何が正解なのかわからなくなってしまい、気づいたら俺はほとんど何も発することなく時間だけが過ぎていってしまった。

「俺は一体………………何がしたいと言うんだ。」

 独り自室で呟いた俺は、髪をグシャグシャと掻き毟る。その言葉は、誰に聞かれるわけでもなく薄暗い部屋の静寂に溶け込んでいき、残ったのは抱えきれない罪悪感と救いようのない虚しさだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ