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可能性の選択  作者: 桃鍋
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幕間その4 怖い中の決意

海月視点の幕間です。

 ウチはゆっくりとお兄の口から全てを聞いた。お兄が受けている得体のわからない悪意が、聞けば聞くほど意味がわからなくって怖くなった。怖くて震える体を抑えるよう、お兄にしがみつくように抱きつく。どこにも行ってしまわない、消えてしまわないように。そうしてお兄の服を掴むウチの手に力が入ると、その度にお兄は優しく右手で頭を撫でながら、左手で背中をさすってくれる。さっきの話が本当なら、左手を少し動かすだけでもものすごく難しいはず。でもウチを落ち着かせるために、「大丈夫だよ。ここにいるよ。」と行動で示しているようだった。一連の動作に昔を思い出す。あぁ、そういえば小さい頃、夏のホラー番組を見て怖くなったウチが、やっぱりこんな感じでお兄にしがみついた時にこうして宥めてくれてたっけ。やがて説明を終えたお兄は、ウチの顔を正面から見るようにして謝ってきた。

「海月、ごめんな。こんなことに巻き込んでしまって。元はと言えば、僕がちゃんと普段から連絡をマメにするようにしていたら、海月がここに来ることも、巻き込まれることもなかったはずなのに…………大切な妹をこんなに怖がらせてしまった。僕は…………海月のお兄ちゃん失格だな。」

 その言葉を聞いた時、愕然とした。何でそんな寂しいことを言うの?ウチにとってお兄ちゃんと言えるのはお兄しかいないのに。

「忘れろ……なんて無責任なことは言えないけど、明日になったら家に帰るんだ。もう、怖い思いはしたくないだろうし、これからはなるべく僕に関わらない方が…………」

 そこまでお兄の話を聞いた時、我慢ができなくなった。ウチは涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて、怒りのままにお兄に詰め寄る。

「嫌!そんなの絶対に嫌だ!それに、お兄ちゃん失格だなんて、なんでそんな悲しいこと言うの!?確かに理解できないことが起こってて怖いけど、それでもウチにはお兄しかいないもん!お兄だけがウチの味方なんだもん!覚えてる?中学生の頃、ウチが虐められていた時、友達だと思っていたヤツも、先生も、誰もウチの言葉を信じてくれなかった。悔しかったけど、心配をかけたくなかったからウチが我慢していたことに気がついてくれて、お兄だけは味方になってくれたじゃん!そんな優しいお兄がこんなわけのわからないことで苦しんでるのに、そんなの知って帰れるわけないじゃんか!!」

 ここまで一気にまくし立てたウチの言葉は、はたから見たら感情任せのただの癇癪だ。そんなの自分でもわかってる。でも、溢れ出した感情は治まらずまた涙がボロボロと出てくる。

「ウッ…………ヒック………………お願いだから、お兄………………………………いなくならないでぇ。」

 きっとこのままお兄と一緒にいても、また怖い思いをすることになると思う。でも、私の知らないところでお兄が消えてしまうと思ったら、そっちの方が何十倍も、何百倍も怖い。

 ありったけのウチの想いが伝わったのか、お兄も1粒の涙を流しながら、ウチのことを強く抱き締めてくれる。

「海月……ごめんな、変なこと言って。そして…………ありがとう。」

 ウチもお兄のことを抱き返してワンワンと泣き崩れる。ウチは例え何があろうと、お兄の傍を離れない。最後まで。

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