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可能性の選択  作者: 桃鍋
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幕間その3 真実

翔視点の幕間です。

 陽太が実妹の対応をすることになり、俺はアイツの負担を少しでも軽く出来ればと思い、一人例の古本屋で“悪魔の伝承”とタイトル付けられた本を買ってきた。アイツはしばらくこの本を読む余裕なんてないだろうし、その間に俺が先に読んで要点をまとめることになっている。(もちろん、本代は後で請求するつもりだが。)

「ふぅ…………。さぁ、読むか。」

 アパートに帰りついた俺は、早速買ってきた本を読むためメガネをかける。正直、この手の本は読んだことがない。ハッキリ言って専門外だが、そうも言ってられない。それに、先輩が以前読んだ悪魔関係の本で、似たような本が他にもあった気がすると言っていたから、先輩にもお願いしてそっちを当たってもらっている。情報は少しでも多いに越したことはないからな。そしてこの情報収集の段取りを組んだ発起人は俺なんだから、自分だけ何もしないなんて事はできない。だったら俺も……覚悟を決めて真実を探っていかないとな。例えそこにどんな真実が待っていようとも。俺は軽く深呼吸をしてからページを捲っていった。

 最初の百十数ページについてはあまり参考になる情報はなかった。世界中に残されている“儀式を通じて悪魔の力を手に入れた”人達が残した手記を元にした伝聞が書かれているだけだ。中には、誰もが知っている有名な偉人も数人載っていた。彼らに共通していることは、悪魔降臨の儀式を行った際に既に代償を支払っていることであり、その代償に見合った奇跡しか行えなかったようである。いずれにしても、幸せな最後を辿れた人は皆無であるが。ここまで読んで確信を持てることは、アイツに限っては儀式をしたということだけは絶対にないと言い切れる。実際に俺も力を手に入れた時を見たわけではないが、ここまでのページに書かれていることが本当なら、アイツが力を使う度に代償を払うのはおかしいだろう。しかも、その引き起こされる事象も、それに伴う代償もどんどん大きくなっている。明らかなルール違反だ。

 儀式をしていないと言い切れる根拠はもう一つある。俺も陽太も、オカ研にこそ入っているが、オカルトに関する知識なんて先輩からたまに聞く話くらいしかないってことだ。そもそもアイツは不純な動機で、俺はそれに巻き込まれてオカ研に入ったのだかれ当然である。……まぁ今となっては俺にとっても変え難い居場所になったわけでもあるが。

 そんなことを思いながらページを捲っていると、あるページに辿り着いた時にその手が止まった。何度も何度もそのページの文字を目が追う。読み返すうちに自然と俺の目が目開かれていくことを自覚した。おそらく、陽太も古本屋でこのページを見たのだろう。本人はたまたま開いたページと言っていたが、先日二人で立てた仮説、セレクター自体に悪意という意思があるのならば、偶然ではなく必然の可能性が高い。

「あぁ………………そんな………………嘘だろ。…………クソッ!………………チクショウがっ!!」

 一人部屋の中で俺は抑えきれない感情を拳に乗せ、床を叩いていた。その時に手から広がる衝撃がジンワリと俺の心に悔しさを募らせていく。アイツが感じられなくなった痛みと共に。ここに書いていることが全て本当なら、俺はアイツに何をしてやれる?俺は……………………無力だ。


悪魔の伝承 183頁より

『古今東西、世界には悪魔の痕跡が多数残されている。その中でも特に恐ろしいのが悪魔の力と呼ばれるものである。悪魔は基本的に召喚した人間と契約を交わし力を与えるが、ごく稀に次元の裂け目から無理矢理人間に力を授けることがある。このような野良の悪魔の契約は拒むことができない。そして、基本的に悪魔の力は授かった人間が死ぬまで、そして死んでからも逃れることはできない。

 では、なぜ野良の悪魔の契約を拒むことができないのか。野良の悪魔は基本的に退屈をしている。ヤツらは確実に人間に力を与えるため、非常に強力な力を扱う。通常の儀式を行う人間は、儀式の段取りを組んでいる時点で心構えができている。そのため、ある程度の理不尽な要求を払い除けることができるが、無作為に力を与えられる人間にはそのようなものはない。そしてその力は、悪魔が使うタイミングを見計らい行使される。そのため、急に力を授けられた人間は、まるで自分が全能になったかのような錯覚を覚えさせられるのである。より強大な力、奇跡を起こせるようになるとともに、代償も大きくなる。どうやら野良の悪魔には、自分が楽しむためにある程度この世界に干渉ができるようだ。

 最終的に、契約者の存在は全て、悪魔に代償という形で搾取される。そして存在全てを失った契約者は未来永劫その魂が救われることはなく、そこに例外はない。』

翔は頭がいいため、最悪を想像することができてしまう、「考え続けられる」恐怖の質を持っています。

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