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可能性の選択  作者: 桃鍋
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第1章 緊急事態

 先輩と旅行に行って二ヶ月が経過した。その時に改めて考えさせられたけど、どうやら僕はセレクターのことや代償のことを一人で抱え込みすぎていたようだ。だから日に日に心が摩耗していってしまって、結果、世界が色褪せて見えるようになってしまった。そのことに先輩と、間接的に翔が気づかせてくれたこともあり、僕の世界に色が戻り始め、少しだけ精神的な余裕を取り戻しつつあると感じる。

 だからこそ、僕は最近考えていることがある。心配してくれている二人の恩に報いるためにも、僕自身このままでいいのかなって。だからと言って何ができるのかって話だけど、セレクターのことをもっとちゃんと知ることならできるんじゃないかな。無意識に考えないようにしていたけど、今後の僕の人生のためにも知らないといけないと思う。そしてヒントとなりそうなものを僕は一つだけ知っている。痛覚を失うきっかけとなった、あの商店街の古本屋にあった本、“悪魔の伝承”だ。…………正直、あの商店街にまた行くのも、真実を知るのも少し怖い。一人だと足が竦んでしまいそうだから、翔について来てくれないかお願いしてみようと思ってスマホを持ち上げた時、ピコンとRAINのメッセージが一件届いた。誰だろうと思いアプリを起動すると、妹の海月からだった。ヤッベ、そういえば最近それどころじゃなくって、全然連絡とかしていなかった。もしかしたらメッチャ怒ってるかもしれない。

『お兄、ウチ来週そっちに遊びに行くから!部屋綺麗にしておいてよね!』

 予想以上のメッセージが来てしまって血の気が引いてきた。人間って、漫画みたいに笑顔のまま青ざめることってできるんだぁ…………何て呑気なことを言ってる場合じゃない!ヤバイヤバイ、とんでもない事になってきたぞ!?焦る気持ちのままに、僕は翔にRAINのメッセージを送った。

『カケえも〜ん!助けてー!』

『その呼び方、ちょっと前に先輩も使ってたけど、何?流行ってんの?』

 何となく、ジト目でツッコミを入れている翔の姿が想像できたけど、とりあえず緊急事態だと言うことだけ伝えて、明日諸々の内容を全部説明することになった。それにしても、よりによって海月がこのタイミングでこっちに来るなんて。セレクターのこと、何て説明すればいいんだ。

 余談だけど、この件に関してセレクターを使えないか試してみたけど発動しなかった。多分、妹が急に来ることは確かに困るけど、久しぶりに会えることが嬉しいっていうのもあるからかもしれない。……それと、これはあくまでも予想でしかないけど、もしかしたら、いよいよこの力が大きな代償が伴う選択しか取り扱わなくなってきたからかもしれない。実際に先輩との旅行中にも、今までなら発動してもおかしくなかったタイミングでセレクターは発動しなかった。だからこそちゃんと調べたかったのに……。こうして色んな悩みがいっぺんに来た僕は、頭を抱えたまま夜が更けていった。

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