表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可能性の選択  作者: 桃鍋
24/32

幕間その4 カスミソウ

明香里先輩視点の幕間です。

 行かせちゃダメだと思った。何がなんでも、ここで彼を行かせてしまったら、二度と会えなくなると直感的に感じた。

「陽ちゃん待って!」

 そう言って私は彼の手を取り、立ち去ろうとする彼を私の元に引き寄せた。一瞬目が合った彼の目は

今にも泣き出しそうで、咄嗟に私は彼の頭を胸元に抱き寄せる。

「…………………………………………ぇ?」

 まるで迷子のように、泣き出しそうな声で戸惑っている彼に、私は私の想いを伝えた。

「陽ちゃん、大丈夫だよ。落ち着いて。話せないことがあるのなら無理に話そうとしなくていいんだよ。そりゃ、陽ちゃんがそうなってしまった原因は気にはなるけども、それは私の中では些細なことなの。」

 彼を落ち着かせるために、私は目一杯穏やかな口調で続ける。

「その目だって、全然気持ち悪くないよ。むしろ、見せたくなかっただろうに、無理矢理見せる形にしてしまって、私の方こそごめんね。」

 腕の中の陽ちゃんは顔が私の胸元にあるから表情はわからない。その胸中にあるのは苦しみか、痛みか、あるいは絶望か。多分今は困惑が心を占めているかな?でも、だからこそ、最後にこれだけは伝えておかなければならない。

「陽ちゃん、全部話さなくっていいよ。私はそれでも全然かまわないから。でも、今みたいに陽ちゃんが辛くなって、その気持ちを抱えきれなくなったら、いつでもその感情を私にぶつけて。力になれるかはわからないけど、私にも、陽ちゃんの気持ちを一緒に背負わせて。」

 そう、これは私の切なる願いだ。ちょっとおバカさんでお調子者だけど、 気遣い屋さんで、心配をかけたくないからと全ての痛みを全部一人で抱え込んでしまう、誰よりも優しい、私の大好きな男の子が休むための止まり木にならせてくれと。

「ぅっ………………………………。」

 陽ちゃんは私の腕の中で静かに泣き出した。今まで溜め込んできた痛みを流すかのように。私は、涙を流し続ける彼の頭を抱く腕に、少しだけ力を入れた。

――――――――――――――――――――――――

 それから陽ちゃんは、原因はやっぱり話せなかったみたいだけど、泣きながら抱えてた気持ちを全部話してくれた。辛かったこと。苦しかったこと。できなくなったこと。暗闇に取り残されるような不安感。そして、言いようのない孤独感を。私は静かに相槌をうちながら、ずっと彼の言葉を聞き続けていた。

 抱えていた気持ちを全て吐き出した彼は、泣き疲れてしまったのか、今は私の腕の中で静かに眠っている。起こさないようにそっと彼の頭を優しく撫でた。彼が抱えていた気持ちは、私が思っている以上のものだった。人一倍優しい彼は、心配をかけたくないという一心だけで耐え続けていたのだろう。

 今はまだ直接口に出す勇気はないけれど、私はどんなことがあっても彼を、陽ちゃんを一生支えてあげたいと、そう思った。今夜はきっと、彼にとって長い夜が明けたようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ